これは決して他人事ではありません。建物が老朽化し建て替えを行う、再開発事業に該当したため解体する、などはよくある話です。しかし、急に立ち退き料を提示されても、普通は提示された金額が妥当かどうか判断できません。
立ち退き料が正しい金額か判断できるよう、本記事では住宅の立ち退き料とは何か、計算方法や計算の具体例まで解説します。
立ち退き料とは
立ち退き料とは、居住者を退去させるにあたって、退去者に発生する損失を補填(ほてん)するための金銭です。
立ち退き料の計算方法については、法的根拠はありません。そのため、退去者に発生するであろう損失を考慮し計算されます。
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立ち退き料の計算
退去者に発生するであろう損失とは何かを図表1にまとめました。
【図表1】
図表1の(1)~(4)を合計した金額が立ち退き料金額の基準となります。
立ち退き料には、賃貸人の事情や賃借人の状況が反映されます。建物が老朽化したため耐震診断を行い、結果強い地震で全壊する恐れがあるとされれば、賃貸人の事情が考慮され、立ち退き料が計算より安くなる可能性があります。
一方、賃借人が高齢で、なおかつ重い病気を患っているならば、立ち退き料が高くなることや、立ち退き自体認められないこともあります。
計算の具体例
立ち退き料がどのくらいの額になるのか具体例を示して計算してみます。
(1)移転の費用:7万円(引っ越し代金)
(2)新居にかかる費用:8万円(仲介手数料)+8万円(敷金)+8万円(礼金)=24万円
(3)家賃の差額分の補填:8万円(新居物件家賃) - 7万円(退去物件家賃) = 1万円(差額)
この差額をおおよそ24ヶ月(2年)補填するため、1万円 × 24ヶ月 = 24万円(補填金額)
(4)精神的苦痛に対する補填:(1)~(3)の合計金額に上乗せする(金額に基準はない)
(1)7万円 + (2)24万円 + (3)24万円 +(4)
つまり、55万円プラス慰謝料が、立ち退き料の基準となるわけです。
まとめ
1955年から1972年の高度経済成長期に多くの建物が建設されていきました。その建築された建物は、1972年から計算して少なくとも50年は経過しています。老朽化した建物が今後一層増えていくと予測される中、立ち退きについての知識を得ておいて損はありません。
立ち退き請求が来た場合は、弁護士などの専門家に相談することが必要ですが、基礎知識があれば、専門家との打ち合わせのときにも役に立つことでしょう。可能性は低いかもしれませんが、”備えあれば憂いなし”です。
執筆者:八木友之
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター