国民医療費は都道府県によって1.5倍もの差が 最も少ない県と多い県はどこなのか
配信日: 2018.04.12 更新日: 2019.01.11
どこが多くてどこが少ないのか、医療費全体だけでなく診療種類別にも分けて、人口1人あたりの医療費を比べてみました。
Text:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
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目次
高知県の1人あたりの医療費は埼玉県の1.5倍
厚生労働省の平成27年度国民医療費では、人口1人あたりの医療費を都道府県別にも調べています。人口1人あたりの医療費が多い都道府県と、少ない都道府県を表にしてみました。全国平均は333.3千円となっています。
都道府県別で人口1人あたりの医療費が最も少ないのは埼玉県(290.9千円)で、2番目が千葉県(291.1千円)、3番目が神奈川県(297.9千円)と、東京に隣接した3県が並びました。
医療費が最も多いのは高知県(444.0千円)で、埼玉県や神奈川県の1.5倍にもなります。2番目に多いのが長崎県(411.1千円)、3番目が鹿児島県(406.9千円)と九州の県が続いています。
全体的な傾向としては、医療費が少ないのは三大都市圏の県、医療費が多いのは四国・九州地方の県となっています。
また少ない県は全国平均との差が最大で42.4千円ですが、多い県は全国平均との差が最大で110.7千円にもなります。一部の県が平均値を押し上げているようです。
都道府県によって入院と入院外の医科診療医療費が大きく異なる
ここからは、人口1人あたりの医療費を診療種類別に見ていきます。最初に医科診療医療費を、入院と入院外に分けて表にしてみました。
入院の医科診療医療費は医療費全体と同じ様な顔ぶれになっています。入院の医科診療医療費が医療全体の半程度を占めているので、似た順位になったのでしょう。
入院外も全体的には似た傾向にありますが、最も医療費が少ない県には沖縄県が入り、最も多い県には和歌山県が入っています。都道府県ごとの差は、入院の医科診療医療費は神奈川県と高知県で2倍強の差、入院外の医科診療医療費は沖縄県と和歌山県で1.5倍の差となっています。
医科診療費は高齢者の割合が高い都道府県で多くなっていると考えられます。
歯科診療医療費は沖縄が少なく大阪が多い
次に歯科診療医療費の少ない都道府県と多い都道府県を表にしてみました。
歯科診療医療費は、医科診療医療費とは少ない県も多い県も違う顔ぶれになっています。
最も医療費が少ないのは沖縄県で、入院外の医科診療医療費と同じですが、2番目以降に北陸の3県が入っています。医療費が最も多いのは大阪府で、2番目以降とは大きな差をつけています。大阪は虫歯予防や虫歯治療が熱心なのか定かではありませんが、ほかの都道府県と比べると差が目立ちます。
薬局調剤医療費は福井県が少なく秋田県が多い
最後に、薬局調剤医療費が少ない都道府県と、多い都道府県を表にしてみました。
人口1人あたりの薬局調剤医療費では、最も少ないのが福井県で、最も多い秋田県の半分程度となっています。少ない県では医科診療や歯科診療では見なかった奈良県や群馬県が入っています。
多い県でも青森県や佐賀県等、ほかとは違った顔ぶれになっています。
人口1人あたりの医療費を都道府県ごとに比べると、全体でも診療種類別でも都道府県によって大きな差がありました。
医療費をたくさんかけることで命を救えたり、治療後のQOL(生活の質)に良い影響を与えたりしているなら、その意味は大きいですが、実態はどうなのでしょうか?
都道府県ごとにかかる医療費の傾向が違うのは、患者側に理由があるのか、医療機関側に理由があるのか定かではありませんが、医療財政に余裕があるわけではないので、抑制できる医療費はできる限り抑制してもらいたいものです。
Text:松浦 建二(まつうら けんじ)
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士