更新日: 2019.01.10 その他暮らし
買った商品や建物に欠陥が見つかったら? 民法改正のポイント ~瑕疵(かし)担保責任~
Text:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
買った商品も修理請求が可能に!
現在の民法における売買の場合と請負の場合の欠陥(瑕疵(かし))について、担保責任の取り扱いの違いをご存じでしょうか?例えば、引き渡された商品(売買)に対する欠陥と注文住宅を建築請負した場合(請負)の欠陥とで救済方法が違うということです。
1点目の違いは、売買の場合には、修理(修補)の請求はできませんが、請負の場合には、修理の請求ができるとされています。
2点目は、建物(土地工作物)の建築請負では、たとえ深刻な欠陥があったとしても、注文者は契約解除することができません。これは、現存する建物が損失することに対する影響やダメージの大きさを考慮した措置といわれています。
しかし、契約解除ができない反面、多くの判例においては、建替費用相当額の損害賠償が認められており、契約解除の制限については実質意味を失っている状況でありました。
3点目は、売買と請負の場合で共通ですが、欠陥に対して代金減額請求権が認められていないということです。しかし、現実的には欠陥があった場合には、代金を減額することで解決している事案が多く見られました。
このような状況を踏まえ、民法改正法では1点目の瑕疵の修補請求については、売買および請負の場合の双方で修補請求を可能としました。
2点目の建物等の建築請負に関する契約解除の制限については、注文者による契約解除請求を可能としています。さらに、3点目の代金減額請求については、売買および請負の場合の双方で請求可能としています。
欠陥を知ってから1年以内に「通知」が必要!
現在の民法では、瑕疵担保責任の追及について、売買の場合は、買主が「瑕疵を知ってから1年以内」の権利行使(訴訟を含め、売主に担保責任を求める意志を明確に告げる)が必要とされています。
これは、既に商品の引き渡しが完了していると認識している売主の保護を重視した措置といえます。その反面、買主にとっては知ってから1年以内で訴訟などの権利行使までが必要となるなど、負担が重すぎるとの声が多く聞かれました。
また、請負の場合は、「目的物の引渡し等から1年以内」の権利行使が必要とされていました。さらに、建物等の建築請負については、例外として「引渡しから5年以内(石造、金属造の場合は、引渡しから10年以内)」としています。
この場合の問題点は、引渡しからわずか1年という短期間であるため、瑕疵に気付くことなく期間が経過してしまう恐れがあることや期間内に権利行使が必要となる点など、注文者側の負担が懸念されていました。
このような状況を踏まえ、民法改正法では、売買および請負の場合の双方において「契約の内容に適合しない(これまでは「隠れた瑕疵」といっていた)ことを知ってから1年以内に、その旨の『通知』が必要」としています。
通知というのは、欠陥の種類やおおよその範囲を示すことを想定されています。また、請負の場合の建物の例外的な取り扱い(5年、10年)は廃止となります。
なお、新築住宅については、売主は建物の主要部分(構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分)の欠陥に対し、10年間の瑕疵担保責任を負うことが住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に定められています。また、宅地建物取引業法(宅建業法)では、宅建業者が売主の場合、その目的物の瑕疵担保責任の期間について、最低でも引渡しから2年以上とすることを定めています。
さらに、瑕疵担保による損害賠償請求権は引渡しの日から10年で消滅時効にかかることにも注意が必要です。
以上のように、民法改正法では、これまで売買の場合と請負の場合とで違っていた瑕疵担保責任の取り扱いについて、不合理な部分を無くし、ほとんどの部分で統一化が図られています。
また、現状の判例や解釈論での対応を踏まえ、国民一般に分かりやすい合理的なルールとする改正がなされています。
Text:高橋 庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー,住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士