更新日: 2020.04.06 その他暮らし

いつ?利率は? よく知らないで借りる人多数!? 奨学金の返還について知っておきたいこと

いつ?利率は? よく知らないで借りる人多数!? 奨学金の返還について知っておきたいこと
高校生や保護者を対象とした「進学マネー相談会」では、奨学金についてよく質問を受けます。
 
奨学金という言葉は皆さん知っているのですが、奨学金の内容に関しては漠然としか理解しておらず、不安に感じている人が少なくありません。
 
そこで、今までの14年間で受けた奨学金についての質問の中で、特に質問が多い事項について解説します。
 
奨学金が子どもの借金であることから、利用を迷っている保護者が少なくありません。今回は、奨学金の返還について知っておきたいことを解説します。

新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

返還はいつから? 利率は? 返還方式は?

奨学金の返還は、卒業などの貸与終了後7カ月目から始まります。3月に卒業した場合、その年の10月から返還が始まります。
 
利率算定方式には、貸与終了時に決定した利率が返還終了まで適用される「利率固定方式」と、おおむね5年ごとに利率が見直される「利率見直し方式」があります。
 
有利子の第二種奨学金の利率は貸与終了時に決まりますので、それまでは利率の算定方式を変更することができます。利率が決定するまでに、世の中の景気状況や金利水準をみて、有利と思うほうを選択しましょう。
 
利率に関しては、日本学生支援機構のホームページで毎月公表していますので参考にしましょう。また、返還額のシミュレーションも同ホームページでできますので、返還額も把握しておきましょう。
 
なお、2019年3月の利率は、「利率固定方式」0.27%、「利率見直し方式」0.01%でした。
 
第一種奨学金は「定額返還方式」のほかに、就職後の年収に連動した「所得連動返還方式」も選択ができます。「所得返還方式」は、年収が低いと毎月の返還額が少なく済むといったメリットがありますが、返還期間が長くなるといったデメリットがあります。
 
場合によっては完済が50歳を超えるかもしれません。
 
返還中でも「定額返還方式」から「所得連動返還方式」への変更が可能(逆は不可)ですので、迷ったら「定額返還方式」を選択しておくと良いでしょう。
 
ただし、「所得連動返還方式」は「機関保証」しか選べませんので、「人的保証」の人は、「所得連動返還方式」へ変更する時に、貸与始期にさかのぼった保証料を一括で支払う必要があるので注意しましょう。
 

返還が難しくなってきたら

延滞する前に、早めに日本学生支援機構に相談してください。延滞が長期化すると重いペナルティーが課されます。
 
日本学生支援機構には、病気や失業等で、返還が難しい人向けに「返還期限猶予制度」と「減額返還制度」という2つの救済制度があります。
 
「返還期限猶予制度」は本人の収入が一定以上になるまで、毎月の返還を先延ばしにすることができる制度です。適用期間は通算10年です。
 
なお、第一種奨学金の申し込み時の家計収入が一定以下の場合、特例として10年間という制限はありません。
 
「減額返還制度」は、毎月の返還額を2分の1(3分の1)に減らして返還するものです。返還期間は2倍(3倍)になります。適用期間は通算15年です。
 
いずれの制度も、返還予定総額は増えません(利息も増えません)。
 

返還を延滞するとどうなる?

延滞すると、延滞している割賦金(利息を除く)の額に対して年5%の延滞金が付加されます。
 
新規返還者は返還開始から6カ月経過後、延滞3カ月以上となった場合に、個人信用情報機関に登録され、クレジットカードやローンの利用ができなくなる可能性があります。
 
9カ月を超えると返還未済額等の全額を一括返還請求され、最終的には財産や給与の差し押さえが行われます。
 
社会人になり、給与をもらったら、先取り貯金の習慣を身に付け、10月からの返還に備えると良いでしょう。
 

保証制度は機関保証がおすすめ

保証制度には保証機関の連帯保証を受ける「機関保証」と、連帯保証人(父母)及び保証人(おじ、おばなど)の保証を受ける「人的保証」があります。
 
仮に、本人が自己破産した場合、連帯保証人、保証人に自己破産が連鎖する可能性があります。「機関保証」は保証料が必要ですが、最悪、本人だけの自己破産ですみます。
 
なお、保証料は毎月の奨学金の振り込みから天引きされます。
 

「繰上げ返還」で早めに完済しよう

奨学金の返還期間は選べません。その代り、一部または全部をまとめて返還することも可能です。自宅から職場に通える場合、金銭的に余裕があると思いますので、早いうちに繰り上げ返還をして返還期間を短縮しましょう。
 
繰り上げ返済の手数料はかかりません。
 
女子の場合は結婚や出産を機に退職するケースもあると思いますので、特に、繰り上げ返還をお勧めします。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。


 

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