ちゃんと早く家を出たのに!遅延証明書があっても「遅刻扱い」 これって問題ないの?
配信日: 2018.05.28 更新日: 2019.08.30
そのようなトラブルに巻き込まれてしまうと、充分な時間を見越して出勤したはずなのに業務の開始時刻に遅れてしまった。
そんなことも起こるでしょう。
トラブルによって遅延が発生した場合、その遅延について証明するために鉄道会社は「遅延証明書」を発行することがあります。
実際、遅延証明書を提出したことで遅刻扱いにならず助かった。
といった経験のある方も多いのではないでしょうか。
ところが、会社によっては遅延証明書を提出しても遅刻扱いとなり、遅刻した時間分について給与が発生しないということがあります。
遅延証明書を提出したにもかかわらず、通常の遅刻と同様の対応することに問題はないのでしょうか。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
毎日余裕をもって通勤しているAさん
Aさんは普段、業務開始時刻の30分前にはオフィスについており、一度も遅刻をしたことがありませんでした。
ところが、ある日運悪く列車遅延に巻き込まれてしまい、業務開始時刻の1時間後に出勤となってしまいました。
Aさんは不可抗力による遅刻であることを証明するために、鉄道会社から遅延証明書を発行してもらい、それを会社に提出しました。
しかし、会社は「遅延証明があっても遅刻として扱い特別な対応はしない。就業規則によってそう決まっています。」
と、Aさんの遅延証明書を受け取らず、Aさんは通常の遅刻扱いとなってしまいました。
このままだとAさんは遅刻した1時間分の給与を受け取ることができません。
Aさんにはまったく落ち度がないうえ、これまでの勤務実績においても遅刻とは無縁でした。
にもかかわらず、遅刻扱いとする会社に問題はないのでしょうか。
Aさんを遅刻として取り扱う会社の決定に問題はありません。
結論から述べると、会社の対応に問題はなく、Aさんは通常の遅刻として扱われ、1時間分の給与を受け取ることができません。
なぜなら、労働法における考え方として「ノーワーク・ノーペイの原則」が存在しているからです。
ノーワーク・ノーペイの原則とはすなわち、「労務の提供がない場合には賃金を支払う必要はない」という考え方です。
ノーワーク・ノーペイの原則によるならば、電車遅延といえど、就業のできていない1時間分については給与が発生しないこととなります。
その点について、鉄道会社の発行する遅延証明書が存在していたとしても変わりありません。
以上の理由により、遅延証明書の提出があっても通常どおりの遅刻として扱い、その間の給与が発生しないとする会社の取り扱いは違法とならないのです。
遅延証明書の取り扱いは会社へ確認することが必要です
今回、Aさんは遅延証明書を提出したにもかかわらず、遅刻とされてしまいました。
ところが、会社によっては遅延証明書の提出があれば遅刻扱いとせず、給与の控除も行わないといった取り扱いをしていることもあります。
遅延証明書についてどう扱うかは基本的に会社の自由なのです。
社会人であれば遅刻しないよう時間に余裕をもって行動しておくことが望まれます。
とはいえ、不可抗力な事件に巻き込まれ、時間に間に合わないこともあるでしょう。
公共交通機関の遅延による遅刻に備え、遅延証明書の取り扱いについてあらかじめ会社に確認しておくとよいでしょう。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー