更新日: 2023.01.05 その他暮らし
【2023年4月解禁予定】「デジタル給与」はキャッシュレス決済の進展につながるか? デジタル給与が認められるための条件も解説
本記事では、デジタル給与について解説します。
執筆者:北川真大(きたがわ まさひろ)
2級ファイナンシャルプランニング技能士・証券外務員一種
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デジタル給与が認められるための条件
デジタル給与が認められるためには、大きくわけて2つの条件を満たさなければいけません。
労働者の同意があること
大前提として、労働者の同意がなければデジタル給与は認められません。勤め先の企業がデジタル給与を導入したいと考えても、労働者が同意しなければ従来通りの支払い方法が継続します。
厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者であること
デジタル給与がスタートしても、今のQR決済サービスが必ず対応するとは限りません。デジタル給与の受取先として認められるためには、以下8つの要件を満たす必要があります。
1.残高の上限額を100万円以下にしている、または100 万円を超えた場合でも速やかに 100 万円以下にするための措置を講じている。
2.受取先の業者が破綻して残高の受取が困難になった場合、口座残高の全額を速やかに弁済することを保証する仕組みがある。
3.労働者の意に反する不正な取引などによって残高に損失が生じたときに、損失を補償する仕組みがある。
4.最後に残高が変動した日から、原則として最低10 年間は労働者が残高を受け取れる措置を講じている。
5.給与支払い口座への資金移動が1円単位でできる措置を講じている。
6.ATMを利用することなどによって1円単位で給与の受取ができるための措置および少なくとも毎月1回はATMの利用手数料が無料で受取ができるための措置を講じている。
7.給与の支払いに関する業務の状況や財務の状況を厚生労働大臣に報告できる体制がある。
8.給与の支払に関する業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力があり、十分な社会的信用がある。
厚生労働省による資金移動業者の指定要件は厳しい
2022年12月時点の法律では、資金移動業者については資金決済法などによって規制されており、2022年9月末時点では85業者が登録を受けています。資金移動業者は、法令に従い利用者保護やセキュリティの強化などの措置を実施しています。
しかし、デジタル給与の支払い対象業者として指定を受けるためには、給与の確実な支払いや換金性の確保など、より銀行に近いレベルでの対応が求められるでしょう。
同一グループ内にネット銀行がある資金移動業者はある程度迅速に対応できる可能性はありますが、銀行がない資金移動業者には対応が厳しいことも考えられます。
キャッシュレス決済の進展につながるかは不透明
デジタル給与は、銀行振込が半ば前提となっていた給与の支払いが多様化する一つのきっかけになるでしょう。一方で、普段使っているキャッシュレス決済(QR決済サービス)が給与の支払いに対応するかどうかは不透明です。
対応するキャッシュレス決済の業者名が公表される2023年4月1日以降にならなければ何ともいえませんが、要件が厳格な点を考えれば対応業者数はかなり少ないと予想されます。
労働者の同意も必要になるため、デジタル給与が広まるにはかなりの年月を要する可能性が高いでしょう。
出典
厚生労働省 第181回労働政策審議会労働条件分科会(参考資料)資金移動業者の口座への賃金支払について
厚生労働省 第181回労働政策審議会労働条件分科会(資料)労働基準法施行規則の一部を改正する省令案の概要
執筆者:北川真大
2級ファイナンシャルプランニング技能士・証券外務員一種