更新日: 2023.01.16 その他暮らし

【鬼滅の刃】「煉獄さんの母」に学ぶ!「経済的強者」こそ国内にとどまるべき理由と「超富裕層課税強化」について解説

執筆者 : 柳沢俊宏

【鬼滅の刃】「煉獄さんの母」に学ぶ!「経済的強者」こそ国内にとどまるべき理由と「超富裕層課税強化」について解説
日本歴代興行収入1位を記録したヒット映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」(2020年、外崎春雄監督)では、登場人物である煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)の生きざまに涙を流された方も少なくないはずです。
 
今回は、そんな「煉獄さん」が亡き母から言い残されたセリフを通じ、令和5年度与党税制改正大綱に盛り込まれた超富裕層課税強化について考察してみます(本記事はいわゆる「ネタバレ」を含みます)。
柳沢俊宏

執筆者:柳沢俊宏(やなぎざわ としひろ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ワイゼットFPオフィス代表

煉獄さんの母のセリフ

回想シーンで、煉獄さんの母は幼い煉獄さんに問います。
 
「なぜ自分が人よりも強く生まれたのか分かりますか」
 
「分かりません」と正直に答える煉獄さんに対し、母は次のように優しく教えます。
 
「弱き人を助けるためです。生まれついて人よりも多くの才に恵まれた者はその力を世のため人のために使わねばなりません。天から賜りし力で人を傷つけること、私腹を肥やすことは許されません。弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように」
 
この教えを守り、弱い立場にある人を助ける煉獄さんの姿に胸を打たれた人も多いのではないでしょうか。
 

超富裕層課税強化とは?

「1億円の壁」とは?

さて、令和5年度与党税制改正大綱において、「1億円の壁」問題を是正するため、超富裕層への課税強化案が盛り込まれました。
 
「1億円の壁」とは、累進課税により逓増するはずの所得税負担率が、金融所得の活用により、所得が増えるほど少なくなることを意味します。その減少が合計所得金額1億円を超えてから発生するため、「1億円の壁」と言われているのです。
 
簡単にいうと、「お金持ちになればなるほど税制優遇を受けられる」というのが税をめぐる制度の現状なのです。
 

課税強化案の内容

次に、「1億円の壁」を是正するために導入される予定の課税強化案はどのようなものか見ていきましょう。
 
今回の課税強化案は、「株式の譲渡のみならず、土地建物の譲渡所得や給与・事業所得、その他の各種所得を合算した所得金額(基準所得金額)から特別控除額(3.3億円)を控除した金額に、22.5%の税率を乗じた金額が納めるべき所得税の金額を超過した場合、その超過した差額を追加的に申告納税する」というものです。令和7年分以降の所得税から適用されます。
 
気になるのは、この改正案の適用対象となる超富裕層の人々がどのような反応を見せるかです。「せっかく頑張って稼いだのにかえって課税を強化されるくらいなら、海外へ移住して節税しよう」という考えが浮かぶかもしれません。
 
ところで、税をめぐる制度に期待される役割の一つに、「富の再分配」が挙げられます。経済的に強い立場の人は、納税を通じて弱い立場にある人を助けていると考えることができます。
 
ここで、煉獄さんの母のセリフを思い出してみましょう。海外に移住すれば、もしかしたら税負担が軽くなるかもしれませんが、あえて「弱き人を助ける」ために国内に踏みとどまるという選択があってもよいのではないでしょうか。そんな超富裕層の人々の姿を、「かっこいい」と思う人も、きっと少なくないでしょう。
 

強き人よ、心を燃やせ!

「経済的に強き人」にはぜひ、弱き人のため、煉獄さんの言葉を借りるなら、「心を燃やして」ほしいところです。もちろん、強き人が心を燃やし、弱き人が助けられるためには、「税金が正しく使われること」が大前提となります。課税強化に対する超富裕層の反応とともに、国が適正に予算を執行するかにも引き続き注目していきましょう。
 

出典

劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編公式サイト
自由民主党 令和5年度与党税制改正大綱
 
執筆者:柳沢俊宏
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ワイゼットFPオフィス代表