更新日: 2023.01.31 その他暮らし
令和4年に「賃金引き上げ」を行った企業は85.7%! 引き上げが多かった産業は?
どのような企業で引き上げが行われたのか、最も引き上げが多かったのはどの産業なのか、令和4年における企業の賃金の引き上げ状況について見ていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
企業規模別に見る賃金の引き上げ状況
厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、令和4年は全体の割合で85.7%の企業が、1人当たり平均賃金の引き上げ(令和4年中の引き上げ予定を含む)を実施しています。
企業の規模別に見ていくと、5000人上では全体を大きく上回る96%の企業で賃金の引き上げが実施済み(予定を含む)となっています。
1000人から4999人で91.9%、300人から999人で90.2%と、企業規模が小さくなるにつれて引き上げを行った割合も減っており、100人から299人では83.7%と全体を下回る引き上げ状況になっています。
【図表1】
企業規模 | 引き上げをした企業の割合(引き上げ予定を含む) |
---|---|
5,000人以上 | 96.0% |
1,000~4,999人 | 91.9% |
300~ 999人 | 90.2% |
100~ 299人 | 83.7% |
※厚生労働省 「令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」より筆者作成
産業別の引き上げ状況はどうなっている?
令和4年の賃金の引き上げ状況を産業別に見た場合、最も引き上げが多いのは「学術研究、専門・技術サービス業」の95.7%(予定も含む)です。
続いて「建設業」が95.4%、「医療、福祉」が95.2%となっており、コロナ禍によるマイナスの影響が限定的であったり、業績の回復が進んでいる業種が並んでいます。また、製造業でも94.8%が賃上げとなっており、コロナ禍の打撃から立ち直りつつある業種でも企業全体での割合を上回っています。
【図表2】
産業 | 引き上げをした企業の割合(引き上げ予定を含む) |
---|---|
鉱業,採石業,砂利採取業 | 86.6% |
建設業 | 95.4% |
製造業 | 94.8% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 92.4% |
情報通信業 | 89.3% |
運輸業,郵便業 | 75.6% |
卸売業,小売業 | 83.3% |
金融業,保険業 | 92.9% |
不動産業,物品賃貸業 | 93.3% |
学術研究,専門・技術サービス業 | 95.7% |
宿泊業,飲食サービス業 | 71.1% |
生活関連サービス業,娯楽業 | 67.8% |
教育,学習支援業 | 80.9% |
医療,福祉 | 95.2% |
サービス業(他に分類されないもの) | 79.4% |
※厚生労働省 「令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」より筆者作成
逆に、賃金の引き上げを行った企業の割合(85.7%)を下回っている産業としては、「生活関連サービス業、娯楽業」(67.8%)や「宿泊業、飲食サービス業」(71.1%)などがあり、新型コロナウイルスの影響を大きく受けたまま、そのダメージを回復できていない業界が目立ちます。
いずれにせよ、まだ日本経済から新型コロナウイルスの影響が消えていないことも分かります。
令和3年と令和4年の賃金の引き上げ状況を比較すると?
令和3年と比較して、令和4年の状況はどうなっているのでしょうか。
令和3年は全体で80.7%の企業が賃金の引き上げを実施、あるいはその予定となっていました。企業規模別に見ても、以下のように令和4年の方が引き上げを実施した企業が多くなっています。
【図表3】
企業規模 | 令和4年の賃上げ状況 | 令和3年の賃上げ状況 |
---|---|---|
5,000人以上 | 96.0% | 94.6% |
1,000~4,999人 | 91.9% | 87.8% |
300~ 999人 | 90.2% | 83.6% |
100~ 299人 | 83.7% | 79.0% |
全体平均 | 85.7% | 80.7% |
※厚生労働省 「令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」より筆者作成
また、産業別でも一部の業種を除き、基本的には令和3年よりも令和4年の方が賃金の引き上げ状況は好転しているようです。
【図表4】
産業 | 令和4年の賃上げ状況 | 令和3年の賃上げ状況 |
---|---|---|
鉱業,採石業,砂利採取業 | 86.6% | 88.1% |
建設業 | 95.4% | 87.8% |
製造業 | 94.8% | 90.7% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 92.4% | 90.1% |
情報通信業 | 89.3% | 90.6% |
運輸業,郵便業 | 75.6% | 64.5% |
卸売業,小売業 | 83.3% | 86.1% |
金融業,保険業 | 92.9% | 66.4% |
不動産業,物品賃貸業 | 93.3% | 93.2% |
学術研究,専門・技術サービス業 | 95.7% | 93.7% |
宿泊業,飲食サービス業 | 71.1% | 56.5% |
生活関連サービス業,娯楽業 | 67.8% | 66.2% |
教育,学習支援業 | 80.9% | 81.1% |
医療,福祉 | 95.2% | 86.9% |
サービス業(他に分類されないもの) | 79.4% | 66.3% |
※厚生労働省 「令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」より筆者作成
まとめ
令和4年は、令和3年に比べて多くの企業が賃上げ(予定含む)を実施しています。特に産業別では「学術研究、専門・技術サービス業」が95.7%と、賃上げを行った企業の割合を大きく上回る結果となっています。
今後も社会や経済の情勢の動向によって、賃金の引き上げ状況は変わっていくことと思いますが、就職や転職、キャリアアップを考える際は、勤務先や希望する業種の賃金の状況についても考えてみてください。
出典
厚生労働省 令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況
執筆者:柘植輝
行政書士