わが家の土地にはみ出してきたお隣の木の枝を切り落としてもいいですか?
配信日: 2023.02.05
本記事では、意外と身近にも起こり得るこの問題について、民法改正の内容などを確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
これまでの常識? 根っこはOKだけど、枝はNG!
改正前の民法では、お隣の土地にある竹木が自分の土地に越境してきた場合の取り扱いとして、根っこは自分で切り取ることができるが、枝については切り落とすことはできず、竹木の所有者(通常は隣地の所有者)に切除させなければならないルールでした。
つまり、越境してきた邪魔な枝は自分で切除することはできないが、隣地から伸びてきた根っこは自分で切り取ってもいいということです。そのため、例えば隣地から生えてきた根っこに付いたタケノコなどを採取することも認められています。
筆者自身も民法を学んでいるとき、少々の違和感を覚えながらも「枝は竹木の見栄えや景観にも影響するものなので勝手に切除できない」と半ば強引に納得していたと記憶しています。
ただし現実では、「お隣さんとの関係から木の枝を切ってほしいとは言い出しづらい」「空き家の状態で竹木も長年放置されたままで、そもそも所有者が誰なのかすら分からない」「お隣さんに一度、枝の切除をお願いしたが断られた」「台風で木の枝が折れたり、木が傾いたりして、今にもわが家に倒れてきそう」など、さまざまな問題も発生しているようです。
また、竹木の所有者に枝の切除を要求したが、素直に受け入れてくれない場合には、原則は裁判を起こし、判決を得て強制執行により切除する必要がありました。
改正民法第233条のポイント
上記のとおり、竹木の所有者が枝の切除に応じてくれない場合には、その都度、裁判を起こさなくてはならないという手続きの負担の大きさが課題とされていました。
それを受けて、民法第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)が改正され、自分で枝を切り落とすことができるケースを以下のように定めています。
(1)竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
(2)竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
(3)急迫の事情があるとき。
これまでと同様に、越境された土地の所有者は竹木の所有者に枝を切除させることができるという原則は維持しつつ、土地の所有者自らが枝を切除できるケースとして上記3点が付け加えられました。
(1)については、竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないとき、土地の所有者が枝を切り取ることができるようになります。相当の期間とは、それぞれの事案によって異なりますが、一般的には2週間程度の期間と考えられます。
(2)については、隣が空き家で竹木などが放置されている場合などに、不動産登記や住民票といった公的な記録などを確認したにもかかわらず、所有者が特定できない所有者不明土地などが想定されます。
また(3)については、台風などの自然災害で竹木が今にも倒れてきそうな、危険が迫っている状態などが想定されます。
まとめ
私たちの居住環境は、長い年月の経過とともにさまざまな変化をしていきます。そのひとつに、敷地内にある竹木などの成長が挙げられます。植えた当初は数十センチ程度であった竹木が成長し続け、隣家への越境や日当たり、通風などにも影響を及ぼしてしまうことがあります。
そんなときにトラブルに発展することがないよう、敷地内の管理はもちろんですが、日頃から隣家と良好な関係を築いておくことも重要なのかもしれません。
出典
e-GOV 法令検索 民法
日高市 民法233条改正 越境した枝の処理に関するルール変更
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー