更新日: 2023.02.13 子育て
教育費の援助が受けられる「就学援助制度」をご存じですか?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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就学援助制度とは
小学校・中学校は義務教育なので国公立学校では授業料は無料です。しかし、授業料以外の教育費がけっこうかかります。
文部科学省の「子供の学習費調査」によると、公立小学校の学校教育費は、約6万3000円となっています。内訳は、修学旅行・遠足・見学費6951円、学校納付金等1万2235円、図書・学用品・実習材料費等1万9673円、教科外活動費2041円、通学関係費1万8032円、その他4170円となっています。
一方、公立中学校の学校教育費は、約13万9000円となっています。内訳は、修学旅行・遠足・見学費2万6217円、学校納付金等1万6758円、図書・学用品・実習材料費等2万5413円、教科外活動費2万9308円、通学関係費3万7666円、その他3599円となっています。
このように、経済的に厳しい家庭の場合は、子どもを学校に通わせるだけで、家計に大きな負担がかかることもあるでしょう。就学援助制度は、経済的理由によって就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して、授業料以外のこれら教育費を市区町村が支援する制度です。
就学援助の対象者
生活保護を受けている方(要保護者)と教育委員会が、要保護者に準ずる程度に困窮していると認定した方(準要保護者)が対象です。
準要保護者の認定基準は市区町村ごとに異なります。主な認定基準は、「生活保護法に基づく保護の停止または廃止」「生活保護の基準額に一定の計数を掛けたもの」「児童扶養手当の支給」、「市区町村民税の非課税」「市町村民税の減免」「国民健康保険法の保険料の減免または徴収の猶予」「国民年金保険料の免除」などとなっています。
「生活保護の基準額に一定の係数を掛けたもの」では、生活保護基準の1.2倍を超え、1.3倍以下と回答した市町村の割合が最も多くなっています。
例えば、東京都新宿区の2021年度における世帯全員の所得(収入-必要経費)の基準金額の目安は、母親と小学生1人の世帯なら約292万円以下、父親と母親、小学生1人の世帯の場合、約357万円以下、父親と母親に中学生1人と小学生1人がいる世帯においては約431万円以下となっています。
なお、「所得」とは、給与所得者の場合は、前年中の源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」、 事業所得者の場合は「年間収入額」から必要経費を差し引いた金額をいいます。
要保護者への就学援助項目と支援額
要保護者への就学援助項目は、学用品費、体育実技用具費、新入学児童生徒学用品費等、通学用品費、通学費、修学旅行費、校外活動費、医療費、学校給食費、クラブ活動費、生徒会費、PTA会費、卒業アルバム代等、オンライン学習通信費があります。
・学用品費
小学校1万1630円、 中学校2万2730円
・新入学児童生徒学用品費等
小学校5万1060円、中学校6万円
・通学費
小学校4万20円、中学校8万880円
・修学旅行費
小学校2万2690円、中学校6万910円
なお、就学援助費目と支援額などは市区町村により異なります。新入学児童生徒学用品費等の入学前支給を行う市区町村もあります。
生活保護にも教育扶助があり、同様の教育費の援助がありますので、重なる項目に関しては併給できません。生活保護の教育扶助の対象外である修学旅行に関しては、就学援助制度から全額が支給されます。
就学援助を利用するには
子どもが通学している学校で配布される申請書へ必要事項を記入し、金融機関の通帳のコピーや申請理由などに応じた必要書類を添付のうえ、子どもが通学している学校に提出して申し込むことが一般的です。
申請書の入手方法、申請時期、認定基準や援助費目、支給時期など、各市町村において制度の詳細は異なりますので、お住まいの市区町村のホームページで確認するなどしましょう。
出典
文部科学省 平成30年子供の学習費調査
文部科学省 就学援助実施状況等調査結果
文部科学省 就学援助制度について(就学援助ポータルサイト)
新宿区 ホームページ
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー