更新日: 2019.01.10 その他暮らし
友人とのお金の貸し借り、貸す金額よりも高いものを担保にする行為は問題ない?
しかし、人によっては担保をとることで、お互い後腐れがないと考えることもあるかもしれません。お金を貸すときに安心材料となる担保ですが、通常は借りたお金と同程度の金額になるものを用意しますよね。
もし、貸し借りした金額よりも高いものを担保にした場合、それは担保として成立するのでしょうか。また、その行為は問題ないのでしょうか。
Nくんの例をみてみましょう。
Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
弁護士/東京桜橋法律事務所
第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。
座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。
目次
お金にルーズな友人に2万円を貸した。担保に3万円以上するゲーム機を指定
Nくんの友人Sくんは、お金にルーズなタイプです。あればあるだけ使ってしまうので、周りの人からお金を貸してもらうことが少なくありません。
また、Sくんにお金を貸した人の中には「1年前に貸したお金が今も返ってこない」という人もいます。
ある日、NくんがSくんの家に遊びに行くと、Sくんから「2万円貸してほしい」と言われました。2万円くらいならいいか…と考えたNくんですが、Sくんの悪いうわさを思い出してためらいました。
「いつごろ返せるの?」
Nくんが聞くと、Sくんは「来月のボーナスで返す」と答えました。
「じゃあ、担保として、そこのゲーム機預からせて」
NくんはSくんの部屋にあったゲーム機を指さしました。Sくんは驚いて言いました。
「これ、今でも中古で3万円以上で売られてるんだけど。借りるお金より高いじゃん。担保として成立しないよ」
「来月、Sくんが約束通りお金を返せば何の問題もないだろ」
Nくんの言葉に、Sくんはしぶしぶゲーム機を渡しました。
その後、ボーナス日を過ぎても、Sくんは2万円を返しませんでした。Nくんは腹が立ち、「担保として預かったゲーム機を売るからな」と宣言しました。
Sくんは「借りたお金より高いものは担保として成立しない!ゲーム機を返してくれ。窃盗罪になるぞ」とわめいています。
※物語はフィクションです
友人からお金を借りるとき、借りた金額よりも高いものを担保にする行為は問題ないのでしょうか。東京桜橋法律事務所の池田理明弁護士にお伺いしました。
上記のケースのように、借りた金額よりも高いものを担保にする行為は問題ありません。
ただし、担保はお金の貸主が預かることではじめて、担保として成立します。借主の手元に置いたままでは、質権の効力が発生しません。
たとえ書面で担保について取り決めたとしても、あらかじめ担保を預かっておかなければ認められないのです。そのため、貸主が担保を預かっていたということが前提の話になります。
事例の場合ですと、Sくんはゲーム機をNくんに渡していますので、この点は、問題がありませんね。
しかし、2万円を返してもらえなかったNくんが、預かったゲーム機を勝手に売ってしまうことはできません。
Nくんがゲーム機を売るには、そのゲーム機がNくんの所有である必要がありますが、質権設定の段階で「お金を返せなければ、Nくんがゲーム機の所有権を取得する」という約束(これを流質契約といいます。)は、民法上、禁止されているからです(民法349条)。
Nくんがゲーム機をお金に変えて、それを返済に充てたいと考えた場合、民事執行法上の競売手続きをとる必要があり、やや厄介です。
もちろん、返済期限を過ぎた段階でSくんの合意があれば、Nくんの所有にすることまでは禁止されていませんが、その場合にも、2万円(および利息分)を超える部分に相当する金額については、Sくんに返して精算する義務があるという見解も有力に主張されています。
借りた金額よりも高いものを担保にしてもOK。ただし重要なポイントが2つ
借りた金額より高いものを担保にしても、問題ないことが分かりました。
ただし、お金を返してもらえない場合でトラブルに発展した場合には、競売手続きをとらない限りゲーム機をお金に変えられないという点はポイントですね。
また、NくんとSくんとの間で合意ができ、ゲーム機を任意に売却した場合でも、貸したお金以上のお金はSくんの手元に戻す必要があるという点も気をつけたいポイントですね。
友人同士のお金の貸し借りは、信頼関係を破壊する原因にもなります。
競売手続きや精算のことで煩わしい思いをするのなら、はじめから質屋を利用してもらうのが良い場合もありそうですね。
Text:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属 http://tksb.jp/
IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応