ハウスクリーニングされているはずが、部屋が汚い!清掃代を請求できる?
配信日: 2018.07.07 更新日: 2019.08.20
「本当にハウスクリーニングしたのかな?」と疑問に感じることもあるでしょう。このような時、不動産屋さんにハウスクリーニング代を請求することは可能なのでしょうか?
Fくんの例をみてみましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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弁護士/東京桜橋法律事務所
第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。
座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。
目次
引っ越し予定のFくん。内見した部屋はなんだか汚れていて…?
20代のFくんは店舗異動を機に、引っ越しすることになりました。
ちょうどいい家が見つかったので、早速、不動屋さんと内見に向かいました。
広さや間取り、エアコンなどの設備も申し分ありません。しかし、Fくんは少し気になることがありました。部屋全体がなんだか汚れている感じがするのです。よくみると、クローゼットの中には髪の毛が落ちていました。
「あの、こちらクリーニング済みですよね?」
Fくんが尋ねると、不動産屋さんは慌てた様子で言いました。
「引き渡しまでにはお部屋はきれいにしますので、大丈夫ですよ」
どうやら、まだクリーニングされていなかったようです。汚れているところは目につきますが、それ以外は問題ありません。Fくんは、その物件へ入居することに決めました。
入居して3カ月。エアコンをつけると異臭が!
入居日。部屋の中に入ると、内見の時よりはきれいになっていましたが、ハウスクリーニングをしたわりには汚れている印象です。お風呂場にいくと、床にカビが残っていました。しかし、Fくんは「多少は仕方ないか」とあきらめました。
Fくんが入居してから3カ月が経ちました。季節は夏になり、引っ越し後、初めてエアコンをつけることにしました。しばらくすると部屋全体がカビの臭いでいっぱいになり、到底、エアコンを使用することができなくなりました。
Fくんがエアコンの中をのぞくと、ほこりと汚れで真っ黒でした。
このままでは病気になってしまうと、Fくんは業者に清掃を頼みました。業者によると、「3カ月以上は放置されている汚れ」だそうです。
Fくんは、不動産屋さんが約束を守らず、入居前にハウスクリーニングをしなかったことに腹を立てました。契約書を見直してみると、Fくんが支払った費用の中には退去時のハウスクリーニング費用が含まれています。
「ハウスクリーニング代を徴収しているにも関わらず、実際にはしていないのか?」と、Fくんは憤りを感じています。
*物語はフィクションです。
入居した部屋がハウスクリーニングされていなかった場合、不動産屋さんからハウスクリーニング代を請求することはできるのでしょうか。東京桜橋法律事務所の池田理明弁護士にお伺いしました。
Fくんのケースでは、ハウスクリーニング代の請求が可能と考えられます。
一般的には、賃貸人は、賃借人に気持ちよく部屋を賃借してもらうために、部屋のクリーニングを済ませて貸出すことが多いと思われます。
この場合、賃貸人は自主的にハウスクリーニング代を負担しています(退去者に負担させていることもあります。)。
ただ、入居の際に敷金の負担が要請されない物件などの場合、退去時にハウスクリーニングをするための費用があらかじめ請求される場合があります。
今回の事例で、Fくんが支払った退去時のハウスクリーニング費用は、おそらく自分が退去する際のクリーニング費用であることが推察されます。
したがって、今回の事例で、Fくんがクリーニング代を請求できると考えられる理由は、Fくんがハウスクリーニング費用を支払っているからではありません。
今回のFくんの場合は、入居前に清掃業者によるハウスクリーニングがなされることが契約の内容となっていたと考えられます。
つまりFくんは、ハウスクリーニング済みの物件を賃借したはずですので、クリーニングが未実施だった場合は、その実施やクリーニング代の負担を請求できると考えられます。
また、賃貸人は、賃貸物件の設備を所有し、賃借人に使用収益させる義務があります。
エアコンが前の賃借人の残置物であり、次の賃借人にもその旨が周知され、賃貸人の責任で使用させるわけではない旨の説明があれば別論ですが、通常は、エアコンも賃貸物件の設備と考えられ、賃貸人には、そのエアコンを使用収益させる義務があります。
ところが、Fくんが借りた部屋のエアコンは、クリーニングがおろそかでとても使用収益できない状態にありました。
このような場合、賃貸人には、エアコンをFくんに使用させる義務を履行するために、クリーニング代を負担しなければならないと考えられます。
なお、このように考えられるのは、今回のFくんのようなケースだけであり、原則としては、エアコンの清掃代を賃貸人に請求することはできませんので気をつけましょう。
賃借人が使用したことで生じた汚れを清掃するのは、賃借人の義務です。
契約書などに「清掃済み」などの記載がある場合などは、ハウスクリーニング代の請求が可能
誰でも、できるだけきれいな状態の家に引っ越したいですよね。トラブルを起こさないためにも、不動産屋さんと契約する際は、入居時のハウスクリーニング代はどちらが負担することになっているかをしっかり確認したいところですね。
また、池田先生にお聞きすると、エアコンなどの重要な設備については、それが故障した場合にどちらが修繕することになっているのかなど、特に、敷金負担がない賃貸物件の場合は、注意して確認することが大切だということでした。
賃貸借契約を締結する際には、「重要事項説明書」を渡されます。少し面倒でも目を通しておいた方が良さそうです。
Text:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属 http://tksb.jp/
IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応