更新日: 2023.04.26 子育て

奨学金を就職先が「代理返還」してくれる? 奨学金返還支援と実施企業を紹介

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

奨学金を就職先が「代理返還」してくれる? 奨学金返還支援と実施企業を紹介
独立行政法人日本学生支援機構の「令和2年度学生生活調査結果」によると、何らかの奨学金を受給している学生の割合は「大学(昼間部)」では2020年度は49.6%で前回調査の2年前から2.1ポイント増加しました。
 
また、「短期大学(昼間部)」でも2020年度は56.9%で、前回から1.7ポイントの増加でした。奨学金の返還負担は重いため、企業が代わりに奨学金を返還する制度が創設されました。ここでは、その背景や概要などを紹介します。
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奨学金返還支援制度(代理返還)とは?

前述のとおり、約半数の学生は何らかの奨学金を受けており、日本学生支援機構の第1種奨学金(無利子)および第2種奨学金(有利子)の貸与型奨学金を受けた学生は返還の必要があります。
 
しかし、就職して少ない手取り額から住居費や食費など、もろもろの支払いをした後に奨学金を返還するのは重い負担になります。このため、一部の企業では従業員の離職を防ぎつつ福利厚生の一環として支援するため、奨学金を受けていた人に返還額の一部または全部を給与に上乗せして支給していました。
 
ところがこの場合、企業の負担が増えることに加え、従業員も給与額が増えることから所得税、社会保険料、住民税などが増加することになります。さらに、確実に奨学金の返還にあてられる保証もありません。
 
このような問題点を解消するため、2021年4月から本人に代わり、企業が日本学生支援機構に返還額の一部または全部を直接送金できるよう変更されたのです。これが奨学金返還支援制度(代理返還)の大まかな仕組みになります。
 

代理返還を行うメリットとは?

企業にも奨学金を受けた本人にも代理返還を行うメリットがあります。それぞれみていきましょう。
 

・企業のメリット

奨学金の返還金は給与と認定され、法人税法上は損金として扱うことができます。また、「賃上げ促進税制」の対象にも該当するので、要件を満たす場合は法人税の税額控除を受けることができるのです。また、日本学生支援機構としても企業から確実に奨学金の返還を受けられるメリットがあります。
 
このため、機構はWeb上で代理返還を行う企業を紹介するとともに、大学などにも企業を紹介しています。こうした機構の活動を通して、企業は奨学金代理返還を福利厚生制度の一環としてPRできるほか、優秀な人材を雇用するきっかけにもなるのです。
 

・従業員のメリット

何といっても、いちばん大きな点は奨学金の返還負担が減少することでしょう。また、税法上も給与とは切り離されるため、所得税は非課税扱いになりますし、社会保険料算定の際も標準報酬月額に含まれません。
 

奨学金の代理返還を行っている企業とは?

本記事では、日本学生支援機構のWeb上で紹介されている企業を3社紹介します。
 

・前田道路株式会社

定時採用の総合職で奨学金返還義務のある従業員に対し、日本学生支援機構等の貸与型奨学金返還金の一部を支援しています。最長10年まで申請することができ、120万円が上限です。
 

・日本国土開発株式会社

奨学金を返還しなければならない従業員の経済的負担を軽減しながら、安心して働ける環境づくりをしています。2022年4月以降の新卒社員(総合職、準総合職)を対象に1人月額1万円分、年間最大12万円を入社8年目まで支給します。
 

・大東建託リーシング株式会社

若い従業員を対象に、奨学金返還の負担を軽減しながら自己に投資する機会を増やし、キャリア形成を促進してもらえるような環境を整えています。
 

子どもの学びを十分に実現できる社会を目指して

日本では少子化対策が喫緊の課題であり、政府も異次元の少子化対策をとりまとめました。教育費はどの家庭でも頭の痛い問題であり、奨学金返還負担が軽くなれば、確実に高等教育の普及促進につながるでしょう。
 
そうなれば企業はさらに優秀な人材を確保することができ、また、従業員の重い経済的負担になっている奨学金の代理返還は離職率の低下や企業イメージのアップにも貢献します。資源が乏しい日本ですが、企業の奨学金の代理返還をさらに促進して、国や社会が一体になって子どもの学ぶ意欲をもっと引き出すよう支援してほしいものです。
 

出典

独立行政法人日本学生支援機構 令和2年度 学生生活調査結果

独立行政法人日本学生支援機構 企業の奨学金返還支援(代理返還)制度

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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