更新日: 2019.01.10 その他暮らし

就業規則を読んでみよう!②労働時間がなぜ、ライフプラニングで重要なのか。

就業規則を読んでみよう!②労働時間がなぜ、ライフプラニングで重要なのか。
就業規則には「労働時間」や「賃金」「退職」「福利厚生」などの規定が盛り込まれているため、ライフプラニングにおいて必要不可欠です。
 
※詳しくは『就業規則を読んでみよう!(1)ライフプラニングにおける「就業規則と労働契約の関係」』をご覧ください。
 
さて、今回は、就業規則の中でも「絶対的必要記載事項」である第4章「労働時間、休憩および休日」に着目し、ライフプラニングと労働時間がどのようにかかわっているのかを見ていきたいと思います。
 
重定賢治

Text:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

ライフプラニングで外せない就業規則の確認

ライフプラニングは人生を歩むうえでの「金銭的・経済的な計画や対策」のことです。
 
就労や雇用に絡むご相談では、項目として、「出産・育児・職場復帰」や「介護休暇」などをめぐる子育て世帯・退職準備世帯のライフプラン、「収入と税・社会保険料の壁」、公的年金・企業年金などの「福利厚生制度」、「退職金を含めた老後の生活設計」などがあります。
 
就業規則における労働時間や休暇は、これらのご相談に直接かかわってきます。
 
たとえば、「妻が妊娠しています。現在、パートで働いていますが、産休や育休を取った場合、その後の収入がどのようになるか心配です」というご相談があります。
 
家族構成やライフステージが変わることにともない、収入が減るのが心配ということです。通常、FP事務所としてはライフプランを作成し、老後にいたるまでのキャッシュフロー(お金の流れ)をシミュレーションしていきます。
 
この中で、出産や産前・産後休暇、育児休業などの諸制度にもとづく経済的な支援がどうなっているかを紐解きます。
 
このとき、会社が社員・従業員を健康保険制度や雇用保険制度に加入させているかどうかを確認する必要があります。また、他の規定も含め、特に就業規則をチェックしていきます。
 
別の例でいうと、会社で準備されている福利厚生制度のご相談です。最近では確定拠出年金についてのご相談が増えています。
 
公的年金や企業年金も含め、この手のご相談は老後の生活設計の見通しを立てる目的があるため、労働時間と賃金がどのようにかかわっているかを確認する作業がともないます。
 
このとき、就業規則が力を発揮します。
 

労働時間と社会保険制度は密接に関係する

就業規則における労働時間の規定は、社会保険制度と密接なかかわりがあります。
 
週に何時間働くかで、自分が社会保険制度に加入していくかどうかも決まってくるため、労働者としては人生設計を組み立てていくうえで極めて重要な項目といえます。
 
一方、企業としては社員・従業員を雇ううえで、人件費という固定費をどのようにコントロールするかという切実な問題に結び付いています。
 
裏を返すと、企業としては、社会保険料を抑制するために社員・従業員の労働時間を制御しているということになります。このように、使用者と労働者が特にせめぎ合う部分が、就業規則における「労働時間」です。
 

社会保険の具体的な加入条件を確認しよう

最後に、労働時間と社会保険の関係を確認しておきましょう。
 
会社が社員・従業員を雇う際は、各種社会保険制度への届け出を行う必要があります。
 
ここでいう社会保険制度は健康保険、年金保険、労働保険(労災保険・雇用保険)ですが、社会保険制度の届け出を行った企業は、社員・従業員が条件に適合すれば加入させる必要があります(労災は強制保険であるため、この限りではありません)。
 
たとえば、健康保険・年金保険については次のようになっています。

〇法人事業所(株式会社や有限会社など)の場合
△正社員のように常時使用される方は、労働時間にかかわらず、加入。
 
〇常時使用される従業員が5人以上いる個人事業所(一部の業種は除く)の場合
△正社員のように常時使用される方は、労働時間にかかわらず、加入。
 
これが原理原則ですが、パート・アルバイトの場合、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の3/4以上である方は、健康保険・年金保険に加入する必要があります。

さらに、法改正により、従業員数が501人以上の企業にお勤めのパート・アルバイトの場合、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が正社員の3/4未満であっても、「1週間の所定労働時間が20時間以上」、「勤務期間が1年以上見込まれる」、「賃金が8.8万円以上/月」、「学生ではない」のすべての条件に当てはまれば、被保険者として健康保険・社会保険に加入させなければならないことになりました。
 

国の制度、就業規則を確認し、適切なライフプラニングを

 
このように見ていくと、国としては、なるべく多く働いて社会保険料を納めてもらいたいと考えていることがわかります。
 
だからこそ、労働者としては、国の制度を含め、会社でどのように雇われるかが記されている就業規則を読んでおくことが、生活設計を描くうえで重要になってきます。
 
今回は少し寄り道をしましたが、次回は再び、就業規則の内容を具体的に見ていきます。
 
Text:重定 賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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