家を買うとき、口にすると後悔するかもしれない言葉とは?
配信日: 2018.08.09 更新日: 2019.01.10
この、「これからがんばればいい」は後悔する割合が高い。数々のご相談を経てきてつくづくそう感じるからです。
今回は、これらのよくあるパターンをご紹介していきます。もしも『自分にもあてはまるかも』、そう思ったら、ぜひご自身の住宅購入プランを今一度、じっくり見直してみてください。
Text:福島えみ子(ふくしま えみこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
マネーディアセオリー株式会社 代表取締役
リュクスセオリーFPサロン 代表
大学卒業後、都市銀行に入行。複数の銀行、法律事務所勤務中に、人生の悩みは結局のところお金と密接に関係することを痛感、人生をより幸せで豊かにするお手伝いがしたいとファイナンシャルプランナーに。FP会社にて勤務後、独立。これまで500件以上の個人相談を担当すると共に、セミナー、執筆と幅広く活動。相続・資産運用・住宅相談・リタイヤメントプラン等を得意とし、個人相談にも力を入れる一方で、セミナーや企業研修、執筆を通じてわかりやすくお金の知識を発信することに注力している。
目次
駆け込みが多い住宅購入相談
ところで、住宅購入相談で意外に多いのが、「来週、家の購入の契約をするのですが」など、購入契約や申し込みの直前にご相談に駆け込んでこられるパターンです。なかには、「明後日、契約です、今日ご相談できませんか?」という方までいらっしゃいます。
そういった方のお話をよくよくお伺いすると、「モデルルームや住宅展示場に軽い気持ちで行ったら、どうしても家が欲しくなって」、あるいは「見に行ったら盛り上がってしまって申し込みしてしまいました」とのこと。そして、「契約が近づくにつれ、本当に長い間住宅ローンを払っていけるか、だんだん心配になってきて相談に来ました」とおっしゃるのです。
また、ご夫婦の片方だけが不安で、こっそりご相談にいらっしゃるというのも結構あるケースです。例えば、「夫は家を買うと盛り上がってしまっているのですが、私は払っていけるか不安で。夫は聞く耳持たないので、プロの意見を聞きたい」などです。
住宅購入で多いパターンは?
そうして住宅購入のご相談は、例外はあるものの、主に下記の3つのパターンにわかれます。
■パターン(1) シミュレーション等の結果、購入に支障はなく、無理なく返済していけるとお答えできるパターン。ご不安は杞憂(きゆう)に過ぎず、慎重派の方や借金を抱えるのに不安がある方に多い。
■パターン(2) キャッシュフローからいって、購入はかなり無理があり、購入見合わせをアドバイスせざるを得ないパターン
■パターン(3) 今のままでは購入に不安があるが、家計改善など何らかの工夫をすれば返済していくことも可能なパターン
実は、一番多いのがパターン(3)です。中立のファイナンシャルプランナーにわざわざお金を払ってご相談にお越しいただくのですから、ご自身でうっすらとでも住宅ローンの返済に不安をお持ちであることが多いようです。そして、そのパターン(3)は、さらにいくつかのパターンにわかれます。その中で、これは危険と考えるものについてご紹介します。
これから働けば、家のローンは返せる?
<パターン(3)A>
専業主婦であった妻がこれから働いたり、妻が働き方を変えたりすれば、無理のない購入が実現するケース。
夫が主な家計の働き手であった場合、妻が新たに働き始めると、たとえ扶養の範囲内の働き方であっても家計に余裕が出て、将来のキャッシュフローがかなり改善することがあります。
しかし、このパターンこそ注意が必要です。シミュレーション結果をご覧になり、「じゃあ、私も働きます!」とおっしゃるのですが、その意気込みや気持ちが長続きするか、さらには本当に働き始めることができるかどうか、そしてどんな働き方をするか、ぜひそれをしっかり検討していただきたいのです。
なぜなら、本当はさほど働きたくないのにもかかわらず、マイホームという目の前にある夢に突き動かされて「これからがんばって働けばいいか」と購入に踏み切ると、後々、年齢を重ねて体力が落ちてきたあたりで後悔しはじめることになったり、働き始めて家事の分担がうまくいかずにせっかく素敵な新居に引っ越しても家が散らかり放題、嫌になって仕事を辞めてしまったりするというケースもあるからです。
また、そもそも住宅ローンを組むときに、夫婦どちらかが働けなくなったらということは考えておく必要がありますから、夫婦が働いてはじめて住宅ローンが返せますという住宅購入プランはくれぐれも慎重になっていただきたいところです。
共働きに多いこんなパターン
<パターン(3)B>
今までは気にせずお金を使っていた。けれども収入がそれなりにあるため、それでもお金は足りていたパターン。共働きに多い。
「家計をこれからがんばって見直せば大丈夫だよね」、「家計さえきちんと管理すれば、家を買っても大丈夫なはず」などの言葉を耳にするパターンです。
厳しいようですが、今までがんばれなかった人が急にがんばれるか、あるいは、当面がんばれたとしてもがんばり続けられるかは未知数です。実際、出産や予期せぬ大きな病気などの出来事があると行き詰ってしまいかねない、ぎりぎりの家計も見られます。
パターンAもBも、「これからがんばるから今買いましょう」ではなく、まずは家計を見直して体質改善がすっかり終わってから家を買っても、決して遅くはありません。「借入金利が低い今のうちに」や「消費税アップの前に」、「早く買わないとその分の家賃がもったいない」などなど、「今買わなきゃ」の理由はいくらでも見つかるかもしれませんが、ローンを払い続けられずに家を失えば、結局それ以上に損をすることも忘れないでいただきたいのです。
一見大丈夫に見えても不安なパターンは?
<パターン(3)C>
自分で立てた計画は万全のはずが、実はお金が足りなくなるパターン。
ご相談に、住宅購入にかかる金額をご自身で計算したメモやエクセルファイルをご持参くださる方もいらっしゃいます。
お金に関心があり、きちんと返済計画を検討している方々が多いのですが、それでも、火災保険や将来の修繕費などのメンテナンスにかかるお金、固定資産税等は見落とされている場合も少なくありません。そのため、結果的に甘いローン返済計画の見積りとなっており、このままではローン返済に不安があるパターンです。
住まいは買ったらそれでおしまいではありません。お風呂やキッチンなどの水回りや給湯器なども劣化していきますから定期的に交換していく必要があります。さらに、一戸建てなら外壁や屋根には定期的に手を入れる必要がありますし、マンションなら、それらは共同の共益費・管理費で賄われるものの、築年数経過につれて修繕費・管理費アップの可能性もあります。
住まい自体にかかるお金だけではありません。例えば子どもにかかるお金、老後のお金を甘く見積もっているパターンもあり、確かに毎月の家計から家のローンは返してはいけるかもしれませんが、それでは子どもの教育費や老後のお金が足りなくなってしまう恐れがある、そうした場合も割合よく見られます。
家を買ってから数年後に起こること
「家なんて購入するんじゃなかった」。家計が苦しくなって、あるいは貯蓄が少ないことを不安に思ってご相談にいらっしゃる方の中には、家を買った当時、無理な住宅ローンを組んでしまっていた方も少なくありません。
当時のことを詳しくお聞きすると、「モデルルームを見たら盛り上がっちゃって」、「まわりが家を次々と買って、自分もほしくなって」とのこと。そして、「そのときは、払えると思ったんですが」「ここまで子どもにお金がかかると思っていなくて」などと続くのも、そういった方によくあるパターンです。
家を買う時は、多くの方が、新しい家で始まる楽しい新生活に思いをはせ、「大丈夫、払っていける」もしくは「不安はないわけじゃないけれど、これからがんばって払っていこう」と考えているはずです。
ここまで、家を買うにあたって、よくあるつまずきがちなパターンをご紹介してきたのは、住宅ローンで「こんなはずではなかった」と後悔する方が少しでも減ればという思いからです。住宅は大きな買い物だけに、いったんつまずいてしまうと、家計に大きなダメージを受けてしまい、リカバリーが容易ではないもののひとつです。
家を購入するときは、「これから家計をがんばって管理するから大丈夫」ではなく、不安要素があれば、家の購入を見送る勇気も大切です。そして、まずは家計改善を成功させてから、夢のマイホームを手にしてください!
Text:福島 えみ子(ふくしま えみこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
マネーディアセオリー株式会社 代表取締役
リュクスセオリーFPサロン 代表