更新日: 2023.08.16 その他暮らし
電気料金の値上げで知っておきたい「規制料金」と「自由料金」とはなに?
それと並行して、現状では国による激変緩和措置が講じられており、各家庭が負担する電気料金は、ウクライナ侵略前(2022年2月)の水準を下回るか同等の水準であるとされています。
この記事では、少々分かりづらい電気料金の構成要素やそれぞれの目的などについて確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
規制料金と自由料金
2016年4月から電力の小売り自由化が全面的に実施され、各家庭でも電力会社や料金メニューなどを自由に選択できるようになりました。この自由化によって、各家庭が契約する電気料金は、大手電力会社(全国10社)が提供する「規制料金」か、新電力や大手電力会社が提供する「自由料金」のいずれかとなりました。
規制料金の設定は、大手電力会社が最大限の経営効率化を織り込んだ上で、原価と収入が一致するように設定し、有識者による厳正な審査を経た上で、経済産業省による認可を受ける必要があります。また、後述する燃料費調整については、上限金額が設定されており、下限は設定されていません。
その一方、自由料金は、事業者の裁量で自由に設定できます。2016年の電力全面自由化以降に大手電力会社以外の電力会社(新電力)が参入し、2023年7月28日現在で、730事業者が登録事業者となっています。また、大手電力会社も自由料金のメニューを提供しています。
2023年6月の値上げは、認可による「規制料金」の値上げとなります。自由料金に関しては、各電力会社に対応が委ねられています。
電気料金の構成要素
電気料金は、おおむね(1)基本料金、(2)電力量料金、(3)燃料費調整額、(4)再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の4つから成り立っています。
このうち、(1)基本料金は契約アンペア数に応じた定額料金として、(2)電力量料金は単価×使用量(kwh)によって算出される料金です。その他の変動要素である(3)燃料費調整額は、原油、LNG、石炭など、そのほとんどを輸入に頼る燃料価格の変動を電気料金に反映させるための調整額となります。
具体的には、燃料価格の3ヶ月平均と、現在の料金設定の前提となる燃料料金(基準燃料価格)との差分を燃料費調整額のもとにして、プラス・マイナスして調整します。ウクライナ侵攻などの影響により燃料価格が高騰し、燃料費調整額の単価が値上がりしました。2023年2月からは、後述する国による激変緩和措置が講じられています。
また、この燃料費調整額について、規制料金には上限(基準燃料価格の1.5倍)がありますが、自由料金には上限がないため、高騰が継続的に続くと、各家庭の電気料金にも大きく影響を及ぼすこととなります。
(4)再エネ賦課金とは、再生可能エネルギーの普及を図るため、電力の利用量に応じて電気の利用者が負担する料金です。単価は2012年から2022年までは一貫して前年比較で増加傾向にありましたが、2023年に初めて前年比が約-2円と下落しています。
2023年6月からの電気料金改定
2023年6月から大手電力会社7社が下記図表のとおり、規制料金の改定を実施しています。図表は8月1日現在の内容となっています。
図表1 改定後の料金(標準的な家庭の場合)について2023年8月1日更新
出典:経済産業省資源エネルギー庁 【お知らせ】現在の電気料金水準に関して
※2:標準的な家庭:30Aのご契約 月間400kWhを使用する家庭
※3:1月に申請を行った東京電力エナジーパートナー、北海道電力を除く5社が規制料金の値上げ申請を行った11月時点の料金。レベニューキャップ制度の導入に伴う託送料金の改定影響を含まない数値。
※4:電力・ガス取引監視等委員会の厳しい審査による査定の結果、各社の値上げ幅は申請時から圧縮。レベニューキャップ制度の導入に伴う託送料金の改定影響を加味した数値。
※5:沖縄県において、独自の負担軽減策「沖縄電気料金高騰緊急対策事業」を実施(7月請求分~10月請求分)。 低圧は3.0円/kWh(10月請求分は1.5円/kWh)の負担軽減。
図表の改正前後の差額の内訳のうち、「申請値上げ幅」については、有識者による「査定による圧縮」を経て、値上げ幅が圧縮されています。また、「再エネ発電賦課金」と「燃料費調整額」については、前述のとおり、料金を引き下げる要素となっています。
最後の「負担軽減策」は、国による激変緩和措置を指し、一般的な家庭(低圧契約)においては、8月使用分までは7円/kWh(9月使用分は3.5円/kWh)の負担軽減が図られています(図表の事例は、30アンペアで月間使用量400kWhを想定)。
まとめ
2023年6月から大手電力会社7社で値上げが実施されましたが、国の激変緩和措置などの影響もあり、各家庭の急激な負担増とはなっていません。
ただし、激変緩和措置は現状において2023年9月分までの措置となっており、その後、延長されるか否かは現時点では不明です。また、燃料価格や再エネ賦課金の単価が下降傾向にあることも、今後の電気料金に影響を及ぼします。
まずは、各家庭で契約している電気料金が「規制料金」(おおむね、昔からの契約のまま)と、「自由料金」(燃料費調整額に上限がないことに注意)のどちらにあたるのかなど、自身の契約内容を把握しておくことから始めましょう。
出典
経済産業省資源エネルギー庁 【お知らせ】現在の電気料金水準に関して
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー