更新日: 2023.12.14 その他暮らし
来年から「年賀状」をやめて、新年の挨拶はメールでしようと思っています。目上の方には「非常識」ですか? 保管も大変なので、角の立たないようにしたいです…
本記事では、年賀状をめぐる状況の変化、年賀状にかかるコスト、年賀状をやめるときの留意点などについて説明します。
執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)
特定社会保険労務士・FP1級技能士
年賀状をやめる理由とは?
ひと昔前まで、年賀状を出すことは年末年始の恒例行事でしたが、近年は年賀状を出す人が減少しているようです。その状況を見ていきましょう。
年賀状の発行枚数は5年前から60%減
日本郵政グループの発表によると、2024年用年賀はがきの発行枚数は14億4000万枚で、前年(16億4000万枚)と比べると約88%です。さらに2024年と、5年前の2019年(24億21万枚)と比べると、60%を切っている状況です。このデータを見ても年賀はがきの需要自体が減っており、年賀状を出す行事が衰退していることがわかります。
年賀状からSNSへ
最近では「年賀状じまい」という言葉も聞かれるようになりました。年賀状じまいとは「来年から年賀状はやめます」と宣言する、最後の年賀状のことを指します。
年賀状をやめる理由としては、「メールやSNSで充分」「年賀状を作る時間がない」「節約のため」などがあるようです。また高齢者層では「終活の一つ」などの意見も見られます。
企業も虚礼廃止の風潮
企業間でも年賀状のやり取りを行うことがありますが、「虚礼廃止」の一つとして年賀状をやめる企業も増えています。虚礼廃止とは「形式だけで中身の伴わない儀礼をなくす」ことで、具体的には中元、歳暮そして年賀状などの慣習が挙げられることが多いです。
企業が年賀状を廃止する理由には「経費削減」「ペーパーレス化」「環境への配慮」などが挙げられています。またコロナ禍でリモートワークが一般化し、年賀状を会社に送る必要がなくなったことも原因の一つのようです。
日本郵政もデジタル年賀状サービスを開始
2023年12月1日、日本郵政グループは、2024年の新年の挨拶へ向けて「スマートねんが」のサービスを開始すると発表しました。年賀はがきの発行元である日本郵政がLINEを使った年賀状サービスを開始することからも、時代の変化が感じられます。
年賀状をやめるといくらくらい節約できるの?
年賀状をやめる理由の一つに挙げられている「節約」ですが、年賀状を出すには、どのくらいコストがかかるのでしょうか?
年賀状のコスト
年賀状には、はがき代と場合によっては印刷代がかかります。はがきは1枚63円ですので、仮に100枚出すとしたら、はがき代だけで6300円になります。印刷を外注する料金は、デザインや印刷色数などにもよりますが、2000円未満から8000円以上まで業者によって開きがあるようです。
さらに、年賀状作成には時間もかかります。デザインを決めて印刷業者に依頼するまでに3時間かかったとしたら、仮に時給を東京都の最低賃金1113円としても3339円となります。また、デザインから自分で考える場合や、宛名を自身で記入したり印刷したりする場合は、さらに多くの時間が必要でしょう。
保管や個人情報の処理にもコストがかかる
そして年賀状は送っただけでは終わりません。受け取った人は年賀状を保管し、最終的には廃棄する必要があります。
年賀状はかさばるため、毎年増え続けると特に都市部の手狭な住宅では保管場所に苦慮することもあるでしょう。
また年賀状の廃棄には、個人情報の問題も出てきます。年賀状には、氏名・住所・電話番号・メールアドレスなど、第三者の手に渡ってほしくない個人情報が詰め込まれているからです。
企業間の年賀状であれば、会社名や役職などが載っている場合もあります。そのため、会社によっては年賀状の廃棄の際には、個人情報部分を切り取ったり、シュレッダーにかけたりすることも多いようです。
保管場所代や個人情報の消去代も費用換算できるものであるため、やはり紙の年賀状廃止は節約につながるといえそうです。
年賀状をやめるときの注意点
年賀状が節約につながるとはいえ、突然やめてしまうのは、相手から失礼だと受け取られる可能性もあり、考えものです。年賀状をやめる場合の注意点をいくつか挙げます。
●年賀状をやめる相手は「あなただけではなく全員」だと伝えること
●「年賀状だけの付き合い」の人には特に、メールアドレスなど今後の連絡先や連絡方法を伝えること
●スマホやパソコンを一切使わない(使えない)人には、特別に年賀状を送り続ける選択肢もあり
まとめ
年賀状を止める理由は、個人では「メールやSNSで済むため」「年賀状を作る時間がない」、企業では「ペーパーレス化」「環境への配慮」などがあるようです。そして、個人と企業に共通する理由として「節約のため」が挙げられています。
社会全体のデジタル化で、紙の年賀状が減っていくのは自然な流れともいえます。そのためメールなどで新年の挨拶をしても失礼には当たらないでしょう。紙の年賀状がSNSやメールに形を変えても、心遣いは変わらないようにしたいものです。
出典
日本郵政グループ 2024(令和 6)年用年賀はがきなどの発行および販売
日本郵政グループ 2023(令和 5)年用年賀はがきなどの発行および販売
日本郵政グループ 2019(平成 31)年用年賀葉書等の発行及び販売
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士