2024年度からの東京都における高校授業料実質無償化とは?
配信日: 2024.01.22
東京都内にお住まいの生徒や保護者にとっては、確実に朗報といえるニュースでありますが、この記事ではあらためて、東京都の方針に基づく支援の概要や注意点などについて確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
2023年度の高校の授業料に関する支援制度
高校の授業料に関する支援制度は、大きく分けて国の制度である「高等学校等就学支援金制度」と、地方自治体による独自の制度の2つがあります。
まず、国の高等学校等就学支援金制度は、高校の授業料軽減を図るために2010年度から導入されました。年収の目安として910万円未満の世帯が対象となり、現状で全国の約8割の生徒が利用しています。
支給額は、公立高校では授業料相当額の年11万8800円ですが、私立高校の場合、所得の判定基準に応じて年収590万~910万円の世帯は年11万8800円、年収590万円未満の世帯は平均授業料相当額の年39万6000円が上限となっています(図表1)。
図表1 2023年度の高校授業料に関する支援策
※筆者作成
また、図表1のとおり、東京都では国の支援策に上乗せする形(図表1の青色部分)で、年収910万円未満の世帯を対象に、都内私立高校の平均授業料分まで(47万5000円まで)を助成してきました。
つまり、2023年度においても世帯年収910万円までの世帯には、公立・私立ともに高校授業料の無償化が図られていたことになります。
2024年度以降の東京都の支援に関する方針
東京都は、2024年度(2024年4月)から、全ての高校の授業料助成に関する所得制限を撤廃して、「実質無償化」する方針を示しています。
これまで世帯年収910万円以上の世帯については、国および東京都の支援の対象外となっていましたが、図表2のとおり、所得制限の撤廃によって、一気に47万5000円(図表2の緑色部分)までの支援を受けることができるようになります。単純計算では、高校3年間で約142万5000円の支給を受けられます。
図表2 2024年度の東京都の高校授業料に関する支援方針
※筆者作成
懸念される事項
ここまで東京都内にお住まいの世帯を対象とする高校授業料の支援制度と、2024年度からの支援方針を確認してきました。ただし、支援の対象はあくまでも都内在住が条件であるため、例えば、神奈川県から東京都内の私立高校に通う生徒の場合は、対象になりません。
つまり、同じ高校で同じ教育を受ける生徒であっても、授業料の負担に格差が生じてしまうことがあり、その点を問題視する声も聞かれています。
前述で例とした神奈川県をはじめ、埼玉県、千葉県といった東京都近郊の県においても、国の支援制度に上乗せする独自の補助制度を設けていますが、いずれも所得制限があるうえに、同一県内の高校に通う生徒のみを対象とする場合が多く、授業料の負担に差が生じる原因となり得る状況となっています。
また、支援は授業料を対象としているため、授業料以外にかかる費用についても、ある程度は把握しておくことが重要です。
例えば、入学初年度には入学金がかかりますし、その他にも施設費、制服代、教科書代、PTA会費、修学旅行積立金、部活動の費用なども必要となります。
まとめ
私立高校の就学を支援する制度には、子どもが3人以上の世帯に対する授業料の補助、住民税所得割非課税世帯や生活保護受給世帯に対する教科書代など授業料以外の教育費軽減のための奨学給付金などもあります。
まずは、お住まいの自治体のホームページなどで独自の支援制度の内容を把握しておくとともに、申請方法や不明な点については、自治体や在籍する学校の窓口で確認しておくことをお勧めします。
出典
文部科学省 高等学校等就学支援金制度
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー