年間、数十兆円が使われている医科診療医療費の12%を費やす病気とは?

配信日: 2018.11.15 更新日: 2019.01.11

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年間、数十兆円が使われている医科診療医療費の12%を費やす病気とは?
1年間に42兆1381億円もの医療費が国民に使われています。この額は国民所得の1割を超えており、どのようにしたら抑制できるか大きな課題となっています。
 
そこで、この国民医療費が何の傷病に多く使われているのかを確認してみました。
 
松浦建二

Text:松浦建二(まつうら けんじ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/

アルツハイマー病や骨折の医療費が急増している

厚生労働省2016年度(平成28年度)国民医療費から、主だった傷病の医療費が国民医療費全体に占める割合を計算してみました。
 
また、傷病ごとにどのくらい医療費が増減しているか確認できるよう、5年前の2011年度との変化率も計算しておきました。
 

 
2016年の医科診療医療費(入院・入院外)30兆1853億円を主だった傷病ごとに分けたところ、がん(悪性新生物)の医療費が3兆7067億円で医科診療医療費の12.3%も占めていることがわかりました。
 
心疾患(高血圧性のものを除く)が1兆9378億円で6.4%、脳血管疾患が1兆7739億円で5.9%なので、がんの医療費が飛びぬけて多いです。他にも糖尿病や高血圧性疾患等が1兆円を超えています。
 
5年前との増減を確認すると、医療費が増えている傷病と減っている傷病があります。
 
増えている傷病はアルツハイマー病(39.7%増)や骨折(28.1%増)等で、がんは16.4%でアルツハイマー病等より低いですが、医療費の増加額でみたら5236億円にもなります。
 
医療費が減っている傷病としては、胃及び十二指腸の疾患や白内障、肝疾患等が挙げられます。
 

がんの通院(入院外)医療費は8年で4100億円増

主な傷病で確認した後は、三大疾病と言われる「がん(悪性新生物)」「心疾患」「脳血管疾患」の医科診療医療費を、入院と入院外(通院)に分けて8年間(心疾患のみ7年間)の推移を確認してみました。
 

資料:厚生労働省平成28年度国民医療費
 
がんの医科診療医療費は、2008年の入院1兆9139億円と入院外9051億円から2016年には入院2兆3915億円と入院外1兆3151億円へ増えています。
 
増加額は入院費の方が多いですが、増加率は入院24.9%入院外45.2%で入院外の方がかなり高くなっています。
 
昨今のがん治療は通院によるものが増えていると言われますが、この統計もみてもその傾向を確認できます。
 

資料:厚生労働省平成28年度国民医療費
 
脳血管疾患の医科診療医療費は、8年間で入院が2422億円(9.7%)増に対し入院外は73億円(6.1%)減となっています。がんと大きく違うのは入院に対して入院外がかなり少ないことです。
 
8年間で2つの差は広がっており、今後も脳血管疾患の医科診療医療費は、入院が増え入院外は減っていきそうです。
 

資料:厚生労働省平成28年度国民医療費
 
心疾患の医科診療医療費は、7年間で入院が3253億円(28.3%)増、入院外は51億円(1.1%)増となっています。入院に関してはがんや脳血管疾患よりも増加率が高く、次年度にも医療費が脳血管疾患を抜きそうな勢いがあります。
 
入院外に関してはほとんど増えておらず、今後の心疾患の医科診療医療費は、今以上に入院が中心となっていきそうです。
 
傷病で入院や通院する可能性や、その場合にどのくらいの医療費がかかりそうなのかは、誰でも気になるところです。厚生労働省の国民医療費を細かくみていくと、医療費の傾向が少しは理解できるはずです。
 
このような統計が必ずしも自分に当てはまるわけではありませんが、安心できる備えをする時に参考にしてみてはいかがでしょうか。
 
Text:松浦 建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
 

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