更新日: 2019.01.10 暮らし

「転勤? OKです!」入社したAさん 5年後、転勤を命じられたがまさかの拒否! ウソをついた社員を解雇できる?

執筆者 : 柘植輝

「転勤? OKです!」入社したAさん 5年後、転勤を命じられたがまさかの拒否! ウソをついた社員を解雇できる?
本人の適性や組織の活性化など、会社はさまざまな理由から社員へ転勤を命じることがあります。

もし、入社時には転勤を承諾していた社員が実際に転勤を命じられたとき、それを拒否した場合に、会社はその社員を解雇することができるのでしょうか。

 
柘植輝

Text:

Text:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

柘植輝

執筆者:

Text:柘植輝(つげ ひかる)

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転勤を前提に採用されたAさん

Aさんはとある会社の営業職として採用されました。
 
採用時の勤務地は地元である大阪でした。
 
しかし、会社は全国に営業所を持っており、営業職においては転勤が頻繁に行われていました。
 
Aさんは転勤の可能性について事前に説明を受けており、「転勤?問題ありません!どこへでもいきます!」と二つ返事で承諾していました。
 
実際、Aさんは入社前に就業規則において転勤についての定めがあることも理解しており、入社にあたっても、転勤の命には従う旨の誓約書を提出し、会社から労働契約書を受け取っていました。
 
ところが、業務上の必要により大阪から名古屋への転勤を命じられたとき、Aさんはその転勤を拒否しました。
 
拒否の理由は、「現在の居住地から動きたくない」という個人的なものでした。
 
その後会社はAさんが転勤を拒否したことについて、業務命令違反を理由に懲戒解雇を言い渡しました。
 
しかし、納得のいかないAさんは会社に対し「こんな解雇は無効だ」と主張しました。
 
実際これまでのAさんの勤務態度や業務の成績には全く問題がありませんでした。
 
さて、会社の処分は有効とされるのでしょうか。それとも、Aさんの主張どおり解雇は無効となるのでしょうか。
 

転勤拒否は解雇事由となりえる

結論から述べると、会社がAさんに対して行った懲戒解雇という処分は有効であると判断される可能性が高いと考えられます。
 
なぜなら、今回の事例においては就業規則などに転勤を命ずる可能性があるとの記載があり、かつ、実際に社内でも転勤が頻繁にあり、入社時に勤務地域を限定する旨の合意もないからです。
 
また、Aさん自身も転勤について承諾しており、それを前提とした労働契約書も受け取っています。
 
このような事情のもとでは、使用者(会社)は個別の同意なしに、労働者(Aさん)の勤務場所を決定することができるとされています。
 
また、今回のAさんは大阪から名古屋への転勤ということで、転居を伴う転勤となります。
 
しかしながら、本事例における転勤の命には業務上の必要があり、かつ、それに比べてAさんの被る不利益は小さく、その不利益は転勤に伴い通常「甘受すべきである程度」のものだと考えられます。
 
そのため、Aさんの転勤命令拒否を重大な業務命令違反と判断し、懲戒解雇とした会社の対応は解雇権の濫用には該当せず、解雇は有効である可能性が高いと考えられるのです。
 
実際、東亜ペイント事件での最高裁判決(昭和61年7月14日)をはじめとする各種判例などおいても、転勤について上記のような判断がなされています。
 

労働問題には慎重な対応が必要です

転勤の拒否を理由とした解雇が常に認められるというわけではありませんが、個別の事情によっては解雇が有効とされることがあります。
 
しかし、労働問題は個別の具体的な事情により、結論が違ってくるということも珍しくありません。
 
そのため、労働者側は労働契約をしっかり確かめておくことが重要です。
 
また、会社側はあらかじめ就業規則や労働契約などについて、きちんと整えておくことはもちろん、万が一争いが発生してしまった場合には、労使間で誠実に話し合い、必要に応じて各種専門家のアドバイスを受けながら、慎重に対応を進めていくことが大事でしょう。
 
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
 

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