更新日: 2024.06.25 子育て
息子の第一志望は国立大学なのですが、下宿することになるのでその費用が心配です。自宅から私立大学に通わせるのと、下宿して国立大学に行くのと、どちらが安いですか?
生活費の負担を考えると、自宅から第二志望の私立大に進学したほうが金銭面で負担が少ないのではないかと悩んでいます。自宅から私立大学に進学するのと、下宿して国立大学に行くのと、どちらのほうが金銭面で負担が軽いのかFPに相談することにしました。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
国立大学の学費の特徴
全国に86校ある国立大学の魅力は、授業料の安さにあります。国立大学の入学金は28万2000円、授業料は53万5800円(合計81万7800)となっています。施設設備費は不要です。
この金額は標準額で、最大20%まで増額できるルールになっています。近年、東工大、千葉大、一橋大、藝大など一部の大学で値上げをしていますが、多くの大学では標準額を採用しています。
一方、令和5年度、私立大学(全平均)の入学金は24万806円、授業料は95万9205円、施設設備費は16万5271円(合計136万5281円)となっています。私立大学は国立大学と異なり、学部により学費が大きく異なります。
文科系学部の入学金は22万3867円、授業料は82万7135円、施設設備費は14万3838円(合計119万4841円)ですが、理科系学部では入学金は23万4756円、授業料は116万2738円、施設設備費は13万2956円(合計153万451円)と約34万円の差があります。
※計数は端数処理により,合計において一致しない場合があります。
(出典:文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」)
看護学科は合計150万6041円、芸術系は合計164万1446円、医歯系学部は合計482万1704円となっていて、これらの学部と比べると国立大学の学費の安さが目立ちます。
国立大学の学生寮は格安で利用できる
日本学生支援機構「令和4年度学生生活調査」によると、国立大学の生活費(学費を除く)(大学学部・昼間部・年額)をみると、「自宅」は42万5400円、「学寮」は82万4800円、「下宿、アパート、その他」は109万9400円となっています。まずは、生活費の安い学生寮の利用を検討しましょう。
国立大学にはほぼ学生寮があります。寄宿料は月額5000~1万円程度で安いところでは700円という大学もあります。
たとえば、静岡大学あかつき寮(2人部屋・各室に机、椅子、ベッド、エアコンの設置あり)の場合、1ヶ月の寮費は、寄宿料6000円、食費(2食)8500円、光熱水料5300円(別途、自室の電気使用料)、ネット料1700円、経常費他500円、寮食調理人人件費2000円の合計2万4000円となっています。
大学へは徒歩20分・自転車10分のところにありますので、交通費はかかりません。月額5万~6万円もあれば生活できるでしょう。仮に学生寮を利用した場合の生活費を月額6万円とすると、4年間の生活費は288万円になります。4年間の学費242万5200円と合わせると530万5200円です。
一方、慶應義塾大学理工学部の学費は、初年度納付金196万3350円、2年次以降を176万3250円として計算すると、4年間で725万3100円となります。このように自宅から私立大学に進学するよりも、下宿して国立大学に行くほうが金銭的負担が軽くなる場合があります。
低所得世帯はさらに有利
高等教育の修学支援新制度は、住民税非課税世帯と準ずる世帯を対象に給付奨学金と入学金・授業料の減免をセットで行う制度です。
給付額は従来、第I区分から第III区分に分かれており、第I区分(世帯年収約270万円程度)を満額とすると、第II区分(世帯年収約300万円程度)はその2/3、第III区分(世帯年収約380万円程度)はその3分の1が給付されます。
2024年度からは、第IV区分が新設され、支援対象は世帯年収600万円程度の中間所得層まで引き上げられました。ただし、この拡大された部分の対象者は、扶養する子どもが3人以上の多子世帯と私立の理工農系に進学する学生に限られます。
給付額は多子世帯の場合、第I区分の4分の1です。私立の理工農系の進学者は、給付奨学金はなく、文系との授業料の差額に着目した額が減免されます。国立大学の理工農系に進学する場合、第III区分までは、給付と授業料等の減免を受けられます。多子世帯であれば第IV区分の給付も受けることができます。
●国立大学(昼間部)に進学する自宅外通学する学生の給付額と授業料等減免
【給付額(月額)】
第I区分:6万6700円
第II区分:4万4500円
第III区分:2万2300円
第IV区分(多子世帯):1万6700円
【入学金・授業料の減免額】
第I区分:入学金28万2000円、授業料53万5800円
第II区分:入学金18万8000円、授業料35万7200円
第III区分:入学金9万4000円、授業料17万8600円
第IV区分(多子世帯):入学金7万500円、授業料13万4000円
第IV区分(理工農系):支援なし
以上、ご自身の家庭状況だけでなく、子ども本人の志望校など、さまざまな観点から判断することも忘れずにいましょう。
出典
国立大学協会 国立大学の概要(主要データ)基礎資料集「2023年 国立大学法人 基礎資料集」(2024年3月31日)
e-GOV法令検索 平成十六年文部科学省令第十六号 国立大学等の授業料その他の費用に関する省令
文部科学省 私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
日本学生支援機構 令和4年度学生生活調査・高等専門学校生生活調査・専門学校生生活調査
日本学生支援機構 令和4年度 学生生活調査結果
静岡大学 学生寮紹介
慶應大学【学部】学費
日本学生支援機構 大学・短大・専修学校(専門過程)へ進学予定の方 給付奨学金案内
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。