離婚後、元妻がひとり息子の親権を取って実家暮らし。年収400万円の私は養育費を払わないとダメですか?
配信日: 2024.07.15
元妻の父は大企業の役員をしていて、実家にはそこそこお金があります。裕福そうな実家で暮らす元妻に、年収400万円の私は、それでも「責任」として養育費を支払わなければいけませんか?
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
親としての責任
養育費とは、「子どもの監護や教育のために必要な費用」のことをいいます(出典:法務省「養育費」)。
子どもが自分で社会を生きていけるよう、経済的・社会的に自立するまでに必要な費用のことを意味しており、生きていくために必要な衣食住にかかる費用や医療費、社会でひとり立ちできるよう身につけたい教育費などがこれに当たります。
親権者は、もう片方の親より養育費を受け取ることができます。親権者でなくなっても、親であることに変わりはありません。親として養育費の支払い義務を負います。
元奥さまはご実家に戻られ、生活に困っているわけでもないのに、収入が少ない自分が養育費を払うのかと疑問に思っていらっしゃいますが、養育費の支払いは親としての義務です。
養育費は、子の両親の収入による
養育費の金額の目安となるものとして「算定表」があります。東京および大阪の裁判官による研究報告です。養育費は、養育費を受け取る権利者と、養育費の支払い義務者のそれぞれの経済力により負担します。収入により、算定表で養育費の額を求められます(以下、表1、表2)。
義務者の年収が400万円の場合、子が15歳未満では多くても4万~6万円、子が15歳以上になると、多くて6万~8万円。元奥さまの収入により養育費は変動し、元奥さまの年収も400万円あると、子が15歳未満の場合2万~4万円、子が15歳以上の場合も2万~4万円が目安になります。
あくまでも目安であり、絶対的なものではありません。実情に合わせて、話し合って決めます(話し合いができないときは家庭裁判所の家事調停手続きを利用します)。両親の問題であり祖父母は関係ありません(ただし、祖父母と生計を同じにしている場合は、児童扶養手当の支給額に影響します)。
養育費を払わなかったら
元奥さまが裕福な暮らしをしているからと、養育費を払わなかったらどうなるのでしょう。
元奥さまは、強制執行の手続きを取ることができます。地方裁判所に『債権差押命令申立書』を添付書類とともに提出をして、給与や財産を差し押さえて、支払われなかった養育費を取立てます。
もし、「支払うお金がない」と逃げていたらどうなるのでしょう。
元奥さまが『財産開示手続』を地方裁判所に申し立てると、債務者は裁判所から呼び出され、裁判官のまえで財産について確認されます。
また、元奥さまが『第三者からの情報取得手続』を地方裁判所に申し立てると、裁判所から金融機関や登記所、市町村に情報提供が「命令」され、債務者の預貯金残高や不動産の有無、給与についての情報を得られます。これらの情報を元に強制執行の手続きを取ることができるのです。
ただし、強制執行の手続きをとるには、執行力のある債務名義の正本(養育費の取り決めをした公正証書または家庭裁判所の調停や審判で作られた書面)が必要です。子どものために、必ず取り決めておきましょう。
書面がない場合は、家庭裁判所に調停を申立てるところから始めますが、離婚後でも申し立て可能です(法務省のホームページに申立書の書式があります)。
親の行動は、子どもの将来に大きな影響を及ぼします。お子さんのために、父親として精一杯の行動をとっていただきたいですね。
出典
法務省 養育費
法務省 子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A
裁判所 平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
裁判所 養育費・子1人表(子0~14歳)
裁判所 養育費・子1人表(子15歳以上)
子ども家庭庁 Ⅳ 経 済 的 支 援
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者