お店で「カフェオレ」を氷抜きで頼んだら、コップになみなみと注いでもらえました。うれしいですが、お店的に「損」にならないのでしょうか…?
配信日: 2024.07.25
しかし、冷たいドリンクを飲みすぎることは体に良くないと、氷抜きで注文する人も一定数います。お店によっては、氷抜きでもサービスでコップになみなみと注いでくれることもありますが、赤字になってしまわないのでしょうか。
本記事では、氷入りと氷なしのドリンクの量の違いや原価の違いについてと、お店が損をして赤字にならないのかについて考察します。
執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
氷抜きだとドリンク量や原価はどれくらい変わる?
カフェで頼んだカフェオレが通常どおり氷入りの場合と、氷抜きでなみなみと注がれた場合で、量の違いとそれに伴う原価の差についてみてみましょう。ここでは、主要な大手コーヒーチェーン店のアイスドリンクの平均値として、次のような条件で比べています。
・アイスドリンクの量は240mlのラインまで注ぐのが標準
・240mlのサイズで約300円と仮定
通常カフェオレを氷抜きで注文すれば、氷を抜いた分量で提供されることが多いでしょう。しかし、氷抜きを注文しても、氷ありの場合と同程度か多いくらいに注いでもらえた場合は、量や原価にどれほどの違いがあるのでしょうか。
ドリンク量の差
次の2つのパターンで、筆者が実際にドリンクの量を計測してみました。
(1)約300ml入るグラスに氷をたっぷり入れ、240mlのラインまでドリンクを注ぐ
(2)同じグラスに氷を入れず、持ち運んでもこぼれない程度にたっぷりドリンクを注ぐ
(1)のケースでは、いったん氷とドリンクを注いだあと、氷を取り出してドリンクの量を計測しました。その結果、ドリンクの量は約140mlでした。
(2)のケースでは「なみなみ」が目分量ではあるものの、約280mlのドリンクを注げました。つまり、(1)と(2)では、約2倍ドリンクの量に差があります。
カフェオレにかかる原価の差
氷入りのドリンクは約140ml、氷なしでコップになみなみ注いだドリンクは約280mlと、ドリンクの量は約2倍の差があることがわかりました。そこで、今度はそれぞれのドリンクにかかる原価の差について調べてみます。
カフェオレを作るときは、ブレンドコーヒーとミルクを1:1で注ぐのが一般的です。ブレンドコーヒーに使用するコーヒー豆は1kg約2000円で、1gで約12mlのブレンドコーヒーを抽出できます。
そのため、140mlのカフェオレを作るときに必要なブレンドコーヒーの原価は、70mlで約12円です。同じくミルクは、1Lの牛乳を1本約200円とすると、70mlは約14円です。このことから、氷入りのカフェオレを作るとき原価は次のように計算できます。
約12円(ブレンドコーヒーの原価)+約14円(ミルクの原価)=約26円(カフェオレ140mlの原価)
そして、氷なしでコップになみなみと注いだカフェオレを作るときは、氷入りの場合の2倍の280mlが必要となるため、原価は約52円となります。
お店は損しないのか?
これで、氷入り、氷なしで実際に注がれているカフェオレの量と、それぞれの原価が分かりました。それでは、次に実際にお店が氷なしのカフェオレをコップになみなみ注ぐことで損をしてしまうのか考えてみます。
カフェオレの価格を300円と仮定すると、それぞれの原価率は次のようになります。
氷ありで140mlのカフェオレ…26円÷300円=約8.7%
氷なしで280mlのカフェオレ…52円÷300円=約17.3%
一般的に飲食店の原価率は30%といわれているため、氷なしでたっぷり注いだ場合でも赤字になる可能性は低いといえそうです。しかし、カフェオレ単体の原価以外にも、容器代やおしぼり、ガムシロップなどのサービス品、人件費や光熱費など多くの経費がかかります。
また、コーヒー1杯の原価率は約10%ともいわれているため、たっぷり注いでもらったカフェオレ1杯のみの注文で数時間など長居することで、回転率が下がりお店が赤字になってしまう可能性はあります。
カフェオレをたっぷり注いでくれるのはあくまでお店側のサービスのため、購入者からお店に「たっぷり注いで」と要求することは控えたほうが良いでしょう。そして、長居はほどほどにするほうが、お互い気持ちよく過ごせそうです。
執筆者:古澤綾
FP2級