更新日: 2024.08.22 家具・片付け
片づけの美学175 同居の両親が高齢に|モノの置き場所は変えたほうがいい?
ご同居の両親が高齢になり、「探し物が増えた」「使いたいモノが見つけられない」「モノが多くて、転倒が心配」など、生活するうえでなにかと不便に感じるようになった場合、家の中のモノの置き場所を変えることも一案です。
その人に合った対応をすることで、生活が楽になり、みんなが安全で安心できる環境に整えることができると思います。
執筆者:奥野愉加子(おくの ゆかこ)
美学のある暮らし 代表
整理収納アドバイザー認定講師。(photo:キャラバンサライ)
奈良生まれ。大学では生活環境学部にて建築やインテリアを学び、英国インターンや建築設計会社勤務を経て、2011年より愛知県で結婚生活をスタート。長男出産後、夫の赴任で2年間のドイツ生活を経験。帰国後の現在は建築家デザインの家で暮らす、5歳と2歳の男児の母。子育てがひと段落したら、建築や暮らしに関連するような仕事をしたいと考え、「一般社団法人ハウスキーピング協会」の整理収納アドバイザーの資格を取得。認定講師として資格取得のための講座を定期的に主催している。
<美学のある暮らし>
前提として、「勝手に片づけない」
最初に確認しておきたいのは、あなたの独断で、ご両親のモノを先に捨てたり、置き場所を変えたりしてはいけません。いくらご両親のためだとしても、関係性を悪くするだけの行為です。共有で使っているモノであっても、事前に相談や話し合いはしたほうがよいと思います。
そのためには、モノを減らしたり場所を変えたりする理由を説明することが大切です。ご両親も肉体の衰えを感じ、不便に感じている部分もあるとは思いますが、明確な理由と変えることのメリットを知ることで、より前向きに対応をしてもらえる可能性が高まります。
伝え方としては、
「最近、〇〇を探すことが多くなったよね。他のモノがたくさんありすぎるのが原因だと思う。この際、使っていないモノは処分して、日常使うモノだけを残す片づけをしてみない?」
などのように、片づけることのメリットを伝えられるとよいと思います。
処分するor分けるだけ
高齢になった両親に片づけを進める場合、見極めるのは「処分することができるか」「できないか」です。体力的にできていないだけで、処分することに抵抗がないタイプのご両親であれば、子どもの立場で手伝ってあげることで、片づけはどんどん進んでいきます。
処分してもよいとご両親が思えるモノはどんどん片づけていきましょう。家の中がシンプルになると、気持ちもスッキリしますし、モノにつまずいて転倒するなどのリスクを下げることもでき、掃除もしやすいので清潔に保てます。
難しいのは、「もったいない」「また使うかもしれない」とモノの処分に抵抗があるご両親です。ムリに処分を進めようとすると、ケンカになったり、お互いにとってストレスになったりします。
そんな時は、処分する必要はありません。ただ、「分ける」に徹します。「使っている」と「使っていない」だけに分けます。使っていないモノは、箱や袋に入れて、収納しておきましょう。
見える収納がいいモノ
高齢の方にとって、見える収納に適するのは日々使うモノです。手の届く範囲と、目に見える場所に置いてあるのが手軽で便利です。
まずは、「よく使うモノがなにか」を確認しましょう。よく使うモノの位置は、できるだけ変えないほうがよいと思います。これまでと同じように置いて、ご両親が迷ったり・探したりすることがないように気を配りましょう。
大切なのは、使っているモノのまわりにある、「使っていないモノを取り除くこと」です。
隠す収納がよいモノ
衣類など、数のある持ち物は、収納の中に入れるほうがスッキリします。クローゼットタイプの掛ける収納が手軽でしょう。パンパンに洋服を掛けてしまうと、取り出しづらくなるので、量には注意が必要です。
引き出し収納を使う場合は、スライドレールが付いたタイプのたんすやキャビネットがおすすめです。軽い力で引き出せるので、高齢の方にも使いやすいです。できるだけ長く身のまわりの管理はご両親自身にしてもらいたいですよね。
大きめの字で濃く・はっきりと書いたラベルをつけるのもおすすめです。
同居の家族ができること
「片づけ」で家族がご両親のためにできることはたくさんあります。ただ、ご両親が望んでいるかどうかは、ケース・バイ・ケースになり、難しい問題でもあります。
ご両親の希望に沿って、伴走するような片づけができると、みんなが快適な住環境が手に入るはずです。1年くらいの長い時間を掛けて、少しずつ進めていけるとよいと思います。
執筆者:奥野愉加子
美学のある暮らし 代表