更新日: 2019.01.10 その他暮らし

太陽光発電の「2019年問題」とは? そして日常の暮らしにはどんな影響があるの?

太陽光発電の「2019年問題」とは? そして日常の暮らしにはどんな影響があるの?
太陽光発電の「2019年問題」。見聞きしたことがあるかもしれませんが、一体どのようなことなのでしょうか。
 
経済産業省 資源エネルギー庁が今年11月7日から順次新聞掲載を始めた全面広告の文面には、【2009年に開始された買取制度は、太陽光発電で作られた電力のうち、余剰電力が買取対象となる制度です。10年間の買取期間が設定されており、2019年以降順次、買取期間の満了をむかえることになります】とあります。
 
その影響について、考えてみます。
 
上野慎一

Text:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

太陽光発電の住宅は急増しました

総務省 統計局の公表値(出典※1)によれば、「太陽光を利用した発電機器あり」の住宅は、5年ごとの調査で2013年には157万戸となり、調査年の住宅数に占める割合(普及率)は3.0%でした。
 
2008年52万戸(普及率1.0%)、2003年28万戸(普及率0.6%)に比べても急速な普及ぶりがうかがえます。
 
そうした住宅で、この買取制度による売電をしている家庭では、2019年11月以降に順次買取期間が終了します。
 

太陽光発電電力を【供給】する家庭からみた「2019年問題」

地球温暖化対策や再生可能エネルギー源普及のために2009年11月にスタートした住宅用太陽光発電の固定価格買取制度ですが、高水準の買取価格が10年間保証されることが普及の後押しをしました。
 
制度開始時で1kWhあたり48円(出力10kW未満の住宅用)。これは当時の家庭向け電力単価平均値の2倍以上といわれるものでした。
 
この10年保証の買取価格は、主要な原価であるソーラーパネルの値下がりなどを反映し、その後毎年下落。2018年度は26円~28円、2019年度は24円~26円となっています。
 
そして、固定価格買取制度を卒業(終了)する住宅用太陽光発電の数は、次の表の通り公表されています。「2019年問題」は、まずは太陽光発電電力を【供給】する家庭からみた問題と言えそうです。
 

 
※表は、出典のグラフの数値をもとに筆者作成
 

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太陽光発電電力を【消費】する家庭からみた「2019年」、そしてその先は?

それでは、太陽光発電を含む電力を【消費】する家庭からみた場合はどうでしょうか。
 
2009年の制度を拡充し、太陽光が中心の再生可能エネルギー(ほかには、風力・水力・地熱・バイオマス)で発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度が、2012年7月に始まりました。
 
それにより、買取費用の大半を「再生可能エネルギー発電促進賦課金」として利用者(個人・法人とも)が負担することになりました。
 
現在、1kWhあたり2.90円で、ひと月の電気使用量が350kWhの家庭では月額1000円を超える水準となります。電気料金の明細書をみると、基本料金・電力量(1段・2段・3段)・燃料費調整(±)などの項目の一番下にある「再エネ発電賦課金」の金額として確認できます。
 
この賦課金、制度が導入されてから6年強ですが、再生可能エネルギー発電の普及に伴い、単価(従量制)は次のように13倍にも急増しています。
 

 
これには、出力10kW以上の事業用太陽光発電の動向も絡んでいます。住宅用と比べて買取単価は少し低めですが、買取期間は20年と倍です。
 
ちょっと郊外に出るとロードサイド・田畑・山林などの遊休地に太陽光パネルが壮観に立ち並ぶ姿も近年では珍しくありません。賦課金とセットで2012年7月から、事業用も固定価格買取制度がスタートして以来、急増した結果、生まれた光景です。
 
認定年度に固定買取単価が決まる仕組みのため、事業用で認定だけ取っておき、太陽光パネルの値下がりを待ってから着工して、差益を大きくするようなやり方が横行して問題視されています。
 
この問題への是正措置が講じられる方向とはいえ、2017年12月末時点で制度開始後に認定された事業用太陽光発電総容量[約6540万kW]のうち、実際に運転開始した発電量はまだ半分の[約3260万kW]。
 
今後、同じくらいの量が固定買取制度の追加対象となる可能性もあるため、2018年度では再生エネルギー買取費用総額[3.1兆円]・うち賦課金(国民負担)総額[2.4兆円]ですが、2030年度には買取費用総額[4.0兆円]・うち賦課金総額[3.1兆円]と約3割の増加が見込まれています(各数値は、出典※2から引用)。
 
全体の買取量について、住宅用は2019年11月から順次買取期間が終了し、減っていきます。その一方、事業用は買取期間が終了し始める2032年7月まで増加基調のため、合算すると2030年まで増加が続くわけです。
 
つまり「2019年」の次に実は「2030年」の節目があり(買取単価の順次引き下げを考慮しても)賦課金の負担増がまだまだ続く状況が予想されているのです。
 
太陽光発電を含む電力を【消費】する家庭の視点では「2019年問題」もさることながら、次の節目「2030年」までの動向がとても気がかりですね。
 
日ごろの節電を心がけ、新電力やセット割引(ガスなど)の導入などの“合わせ技”も検討しながら、家計への負担増に対処していきたいものです。
 
出典:
(※1)総務省 統計局「省エネルギー設備等の住宅への普及について」
(※2)経済産業省「第7回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員」資料1 再生可能エネルギーの主力電源化に向けた今後の論点~第5次エネルギー基本計画の策定を受けて~
 
Text:上野 慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士

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