近所の「無人餃子店」が閉店続きです。スーパーより「コスパ」が良いと思い利用していたのですが、あまりもうからないのですか? なぜ“大量閉店”しているのでしょうか…?
配信日: 2024.09.10
本記事では、無人ギョーザ店が急増した理由や閉店が増えている背景を解説し、コスパについても検証します。
執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
無人ギョーザ店とは?
無人ギョーザ店とは、2坪ほどの小さな店舗に冷凍庫が設置され、無人で冷凍ギョーザを販売しているお店です。コロナ禍以降、郊外を中心に店舗数が爆発的に増えました。無人ギョーザ店は、自分で冷凍庫の中の商品を選び、料金箱に料金を支払って持ち帰るシンプルな業態です。
コロナ禍で無人ギョーザ店が人気になった理由は次のようなものです。
・無人営業で、24時間いつでも冷凍ギョーザを気軽に購入できる
・コロナ禍でも人との接触を避けながら、家でお店の味を楽しめる
・一律1000円などわかりやすい価格設定で、まとめ買いもしやすい
・帰宅後の調理が簡単にできる
消費者にとって便利な無人ギョーザ店ですが、店舗側にとってもメリットが大きい業態です。その理由は次のようなものです。
・コンパクトな建物、冷凍庫、商品、防犯カメラ、料金箱のみで始められるため、開業費用が少なく済み新規参入しやすい
・無人営業のためランニングコストが少ない。大きなランニングコストは、仕入れにかかる費用以外では電気代と家賃のみで済む
新規参入のしやすさから、中華料理店や冷凍食品メーカーだけでなく、駐車場運営やクリーニング店など異業種からの参入も多くありました。土地や建物を所有していれば、賃料がかからないため、よりランニングコストを抑えられます。また、家賃がかかる場合でも、郊外に店舗が多く、店舗面積も小さいため家賃は安く済みます。
無人ギョーザ店のギョーザのコスパは?
では、実際に無人ギョーザ店のギョーザのコスパについて検証してみます。無人ギョーザ店のギョーザと、スーパーで売られている冷凍ギョーザの価格を比べた結果が図表1です。
図表1
各店の実際の販売価格をもとに計算し筆者作成
価格のみで比べると、実際にはスーパーで冷凍ギョーザを購入したほうが安く済む可能性が高そうです。しかし、無人ギョーザ店のギョーザは中華料理店やギョーザ専門店の味を楽しめるため、単純に価格だけで比較はできないでしょう。
大量閉店の背景
コロナ禍以前から無人ギョーザ店はありました。しかし、2020年度末には全国で131店舗だった無人ギョーザ店の店舗数は、2022年度末では一気に約10倍の1282店舗に増えました。一方で、2024年には無人ギョーザ店の新たな出店は少なくなり、ある無人ギョーザ店では約10%が閉店しています。閉店が増えている理由は、次のことが考えられます。
・無人ギョーザ店が増えすぎて飽和状態になっている
・スーパーでもっと安くギョーザが買える
・窃盗被害が多い
・材料費が高騰している
無人ギョーザ店はランニングコストが低く、通常の飲食店と比べると利益率は高くなりやすいメリットがあります。しかし、無人営業は治安の良い場所ならではの業態ですが、それでも窃盗被害は少なからずあります。冷凍ギョーザの原価率は約20%、包装や電気代などを差し引くと利益率は30%程度といわれています。
毎日50セットのギョーザが売れ続ければ1ヶ月の売上は150万円、利益率30%ならそのうち利益が約50万円です。しかし、周りで店舗が増えすぎて、仮に1日10セットしか売れなければ、1ヶ月の利益は10万円以下になってしまいます。そこに窃盗による損失や、物価高によって原材料費や電気代が上がってしまえば、売上の少ない店舗は撤退せざるをえないでしょう。
まとめ
無人ギョーザ店は、コロナ禍で一気にそれまでの10倍もの店舗数に急増しました。自宅で気軽にお店の味が楽しめることや、24時間営業していることが人気の秘密です。しかし、コロナ禍が一段落し、当時のような巣ごもり需要はほとんどなくなりました。
そのため、最近では無人ギョーザ店の閉店が増えています。一般的に無人で利益率も高い業態ですが、昨今の物価高や窃盗被害の増加で採算が取れずに撤退を余儀なくされている店舗もあるようです。各店、しのぎを削っておいしいギョーザを提供しているので、一度試してみてはいかがでしょうか。
出典
株式会社帝国データバンク 「餃子無人販売店」動向調査
執筆者:古澤綾
FP2級