更新日: 2019.07.05 その他暮らし

最近よく見る!自転車のシェアリングが広がるワケ

執筆者 : 上野慎一

最近よく見る!自転車のシェアリングが広がるワケ
「シェアリング・エコノミー」という言葉を最近よく見聞きします。
 
これは、“典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある”ものです。
 
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

「シェアリング」する対象はたくさん。そして「自転車」だって……

シェアリングする対象は多様ですが、主なところは【空間(場所)、モノ、移動(乗り物)、スキル、おカネ】の5つであり、スマホやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及にも助けられて、市場も大きく拡大しているようです。
 
このうち【移動(乗り物)】に目を向けると、トヨタがソフトバンクと提携して、クルマのシェアリングなどに本格参入する方向にあることや、ニッポンレンタカーの24時間営業体制中止などが、これまで報じられています。
 
クルマのような高価な耐久消費財でも、シェアリングのトレンドが進み、利用時間や管理体制もレンタカー(中長時間・有人)からカーシェアリング(短時間・無人)へと短縮細分化・無人化が進展する時代です。
 
そして、もっと身近な移動手段の自転車でも、その動きは進んでいます。
 
自転車のシュアリングと聞くと、観光地などで数時間単位で利用する「レンタサイクル」がまず思い浮かびますが、もっと日常的な空間で時間や距離もさらに短めに利用する「シェアサイクル」が都市部から普及し始めているのです。※
 

「シェアサイクル」の現状

その特徴などを見てみましょう。
 

<特徴やレンタサイクルとの違い>

・店舗は原則なく、複数の駐輪拠点(サイクルポート)で貸出・返却(乗り捨て可能)を自由に利用できる。
・料金精算や予約・貸出・返却の管理は原則として無人(機械)で、携帯電話(スマホ)・交通系ICカード・クレジットカードなどのツールを活用して行われることが多い。
・会員登録しておけば、通勤・通学・買い物などの「ちょい乗り」が手軽にできる。
 

<メリット>

・手軽に乗り降り(乗り捨て)利用できる。
・タクシー利用などに比べてコストが安い。
・環境面でやさしく、交通渋滞などを気にせず移動できる。
・自分で自転車を保有する場合に比べて、初期投資や維持費用がかからず、駐輪スペースの確保も不要。
 

<デメリット>

・雨天時には利用しにくい。
・多人数が同時に移動することには向かない。
・あらかじめ会員登録しておく手間がある(その都度一時利用できる場合もあり)。
・駐輪拠点まで出向く必要があり、利用する人の通勤通学圏や、生活圏のすぐ近くに、拠点があるとは限らない。
・いつでも必ず自転車が用意されているとは限らない。
 
このようなシェアサイクルですが、今のところの普及概況は次のとおりです。
 
(1)取り扱い業者と、自治体が連携するケースも多
・例えば「ドコモ・バイクシェア」(NTTドコモ系)では、東京都の千代田区・中央区・港区ほか、23区中10区のエリアで実証実験としてサービスを提供しています。そのうちの9区では、広域相互利用が可能(どこでも借りたり返却できる)です。
・また、台東区では「HELLO CYCLING」(ソフトバンク系)で導入実験を開始しています。
・横浜市、仙台市、京都市、大阪市、福岡市ほかの大都市、その他の地方都市や観光地などでも導入の動きが広がっています。
 
(2)さまざまな業種から参入している
・上記の2社のほか、「PiPPA(ピッパ)」(大和ハウス・京阪電鉄ほか系)、「Mobike(モバイク)」(中国系、世界最大手)、「COGICOGI (コギコギ)」(ベンチャー系)、「メルチャリ」(メルカリ系)などがあげられます。
・中央線の武蔵境駅~国立駅沿線に展開する「Suicle(スイクル)」(JR東日本系)など地域特化型もあります。
 
(3)料金イメージ
・取り扱い業者や、エリアによって幅がありますが、例えば上記(1)の港区では次のとおりとなっています(連携するほかの区でも同一料金)。
 

 

まとめ

このシステムがこれからもっと普及していくためには【利用者が増えて駐輪拠点も増えいき、利便性や使い勝手がどんどん向上する】という好サイクルを広げる必要があるでしょう。
 
駅付近や商店街では、駐輪スペース不足などによる違法駐輪の問題が指摘されることも多いようですが、そんなトラブルが減ることも期待できるかもしれません。
 
「いつでも」「どこでも」そして「手軽に気軽に」が確保されれば、保有すること自体に目的や価値観が見出されなくなる“モノ”や“財”は、これからも増えていくでしょう。このような「シェアリング・エコノミー」のトレンドは、今後どんどん進展していくものと思われます。
 
出典
※総務省 平成27年度版「情報通信白書」200ページから引用
 
Text:上野 慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
 

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