更新日: 2024.10.24 その他暮らし
無印良品では「コオロギせんべい」が売られているそうですが、世界にはどんな「昆虫食」があるのでしょうか? 食材になる虫や、費用について教えてください!
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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注目の昆虫食「コオロギせんべい」
コオロギのパウダー入りせんべいとして無印良品の「コオロギせんべい」は、購入個数制限が設けられた人気商品です。このコオロギは、国際連合食糧農業機関(FAO)も推奨するほど栄養素が高く、タンパク質量も豊富な食材として注目されています。
タンパク質源となる牛や豚など家畜を育てるためには餌や水が大量に必要です。一方、コオロギは育成期間も短く餌や水の量も少ないため、温室効果ガス排出量が圧倒的に少ないことがメリットの1つです。
たとえば、タンパク質1キログラムを生産するのに必要となる水の量について牛とコオロギとを比較してみましょう。この場合、牛が2万2000リットル必要になるのに対し、コオロギは4リットルと5500分の1で済みます。
以上の理由から、環境への負荷が低い食品素材として取り扱う企業が世界的に増えています。
株式会社日本能率協会総合研究所の推計によると、世界の昆虫食市場は2025年には1000億円規模になると予測されています。国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した報告書によれば、特にヨーロッパを中心に昆虫食の関心が高まっているようです。
世界中で食べられている昆虫食
豚や牛などの肉からタンパク質を摂ることが難しい地域のタンパク源として、世界中で20億人が日常的に昆虫を食べています。昆虫の種類は1900以上もあり、南米や東南アジア、アフリカでは定番の食材です。
昆虫学者の調査によると、日本でも55種類のハチやガ、バッタ類などが食べられています。例えば、甘露煮や佃煮でおなじみの「イナゴ」やクロスズメバチの幼虫・サナギである「蜂の子」は、貴重なタンパク源として昔から食されてきました。
昆虫の栄養素
昆虫が食べ物として注目されるようになった大きな理由の1つが栄養価の高さです。タンパク質や脂肪だけでなく、ビタミン類や必須アミノ酸類やミネラルなど、肉類にも劣らない栄養源が豊富に含まれています。
例えば「レッサーミルワームの幼虫丸ごとおよび粉砕状」は、タンパク質やビタミン、ミネラルなどが多い食品として認可を受けており、シリアルやパスタ、パン、スープなどさまざまな食品カテゴリの用途に使うことが可能です。
イエコオロギやトノサマバッタは必須脂肪酸であるリノール酸やビタミンBやC、E、必須アミノ酸に加え、タンパク質も豊富に含まれています。
ミルワーム(ゴミムシダマシ科の幼虫)は、牛乳や肉などと似たアミノ酸組成をもつことから、筋タンパク質合成速度を集計する実験も行われています。
運動後に牛乳由来のタンパク質とミルワーム由来のタンパク質を採取したところ、タンパク質合成速度が牛乳由来とミルワーム由来の両方で増殖しました。この結果により、虫が持つタンパク質の源に違いがないことが証明されました。
生産コストに問題あり
オランダの農協系金融機関ラボバンクが実施した試算によると、2021年5月の段階で昆虫タンパク質(昆虫由来ミール)の生産コストは1トンあたり3500~5500ユーロ(約55~86万円)とされています。
一方、魚粉の場合は1トンあたり1200~2000ユーロ(約19~31万円)です。昆虫食はコストが高いため、市場に流通させるには越えなければならないハードルがあるといえるでしょう。
昆虫食材の生産を効率化するには、大規模工場の稼働などにより生産コストを下げなければなりません。身近な食材として日常的に使うことはまだ困難なため、昆虫の種類を含め、世界各国で検討が進められています。
また、現在注目されているのが、畜産業における飼料原料のタンパク源としての活用です。ヨーロッパ動物協会によると、昆虫養殖関連企業125社のうち、飼料会社53社による2022年10月時点での投資金額は12億ユーロ(1882億円)と、多額の投資が行われています。
食糧問題に備えて昆虫食に期待
世界の人口増加により、将来タンパク質の供給が足りなくなることが予想されています。栄養も豊富で環境にかかる負荷も軽減できる昆虫食ですが、コスト面の問題をクリアする必要があります。今後の発展に期待しましょう。
出典
農林水産省 令和4年度昆虫の輸出に係る規制調査委託事業
独立行政法人農畜産業振興機構 EUにおける昆虫の飼料利用の実態と展望
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー