育休から復帰したら、9月から保育料が「1万円」も上がっていてビックリしました。時短勤務で「年収250万円」ほどですが、そんなに高くなるものでしょうか?
配信日: 2024.10.30
本記事では、保育料決定の仕組みについて解説します。また、なぜ育休復帰後1年以上たって急に保育料が1万円も上がるのかも見ていきましょう。
執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
保育料決定の仕組みは?
認可保育園・認定こども園・地域型保育事業などの保育料は、各市区町村に納める個人住民税の「所得割課税額」の世帯合計によって決定します。
住民税の額は主に、所得に関わらず定額負担する「均等割」と、所得に応じて負担する「所得割」を合算した額です。所得割の税額は、給与などの収入から必要経費を差し引いた額の10%と定められています。
保育料は各自治体によって大きく異なります。ここでは例として、愛知県名古屋市の2024年度の保育料を図表1に示します。
図表1
名古屋市 名古屋市子ども青少年局 利用者負担額(保育料)のお知らせ
保育標準時間認定を受けていた場合、2023年度まで図表1の「C階層8」に該当していた人が、収入が上がったことにより「C階層10」になると保育料は2万5800円から3万4900円になります。なお、個人住民税の所得割額は図表2の手順で計算します。
図表2
東京都主税局 個人住民税
人によって該当する所得控除が異なるため一概には言えませんが、所得割額の目安となる年収は次のようになります。なお、控除は人により額が異なるため、今回は給与所得控除、基礎控除、社会保険料控除のみを考慮しています。
・年収300万円:約11万円
・年収500万円:約24万円
・年収700万円:約37万円
例えば、夫の年収が500万円、妻の年収が300万円の場合は、住民税の所得割額の合計は約35万円になります。これを図表1の保育料に当てはめると「C階層13」に該当し、保育標準時間認定の場合の保育料は5万8300円になります。
9月に保育料が変更になる理由
では、なぜ9月という中途半端とも思われる時期に保育料が改訂されるのでしょうか。これは、保育料が個人住民税を基に計算されていることが関係しています。
住民税額は、前年の所得を基に計算されています。例えば、2024年10月現在支払っている住民税は、2023年1月~12月の所得に応じた額です。当年3月までに行う確定申告をもって前年の所得を確定し、6月に住民税決定通知が交付されます。
さらに、6月の住民税額の決定を基にして保育料を算定するため、納める保育料の変更時期が9月になるのです。なお、階層区分の見直しによる保育料の変更は9月に行われますが、年度初めである4月にも保育料が変更となる可能性があります。これはクラス年齢が4月に変更されるためです。
育休後に1万円も保育料が上がった理由
保育料を計算する仕組みが分かったとしても、急に1万円以上も保育料が上がると驚いてしまうでしょう。各市区町村によって保育料は異なりますが、図表1の例でいえば、1つ階層が上がっても5000円程度の差です。
しかし、育休復帰から1年ほどたった頃は急に保育料が上がる可能性があります。例えば、妻が育休を取得した次のような場合です。
・2022年1月1日~2023年3月31日まで産休・育休を妻が取得
・2023年4月1日から妻が育休復帰
・2024年9月からの保育料が1万円以上上昇
育休からの復帰後最初となる2023年9月の保育料変更の際は、2022年1月1日~12月31日の所得を基に計算するため、妻は産休・育休中で所得なしです。夫の所得のみで保育料が算出されるため、仮に夫の年収が500万円だったとすると、図表1のC階層11もしくは12に該当します。
2024年9月からの保育料は、2023年1月1日~2023年12月31日までの所得を基に計算するため、妻が4月に復職してから12月まで勤務した所得による住民税所得割額が加算されます。
保育料は妻の所得によって大きく異なりますが、9ヶ月間で200万円程度の収入を得ていた場合は、図表1のC階層14に該当し、1万円以上保育料が上がることになります。
まとめ
保育料の算定は、前年の所得を基に算出した「個人住民税の所得割課税額」によって行われます。そのため、住民税額が決定する6月から、さらに3ヶ月後の9月より金額が変更となるので、いつの所得に対して計算されているのか、少し分かりづらくなっています。
妻が産休・育休を経たあとは、妻の無収入期間の保育料が適用され、復職1~2年後に夫婦合算の所得に対する保育料が適用となります。夫婦がフルタイム勤務となった場合や、妻の収入が多いほど、急激に保育料階層が上昇し保育料が高くなります。
夫婦共働きとなれば保育料の上昇は避けられませんが、現在は月額制限があるものの3歳児以上の保育料が無料になるなど支援も充実しています。子育ての負担が軽減できる施策が今後も広がる可能性があるため、注視していきたいですね。
出典
総務省 個人住民税
名古屋市 名古屋市子ども青少年局 利用者負担額(保育料)のお知らせ
東京都主税局 個人住民税
全国健康保険協会 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
執筆者:古澤綾
FP2級