更新日: 2019.07.02 その他暮らし
離婚する際のペットの権利 購入した奥さん?世話した旦那さん?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
購入した奥さん? それともお世話をしてきた旦那さん?
ある日、奥さんと旦那さんはテレビのペット特集に影響され、奥さんがペットショップでペットを購入しました。ところが、奥さんはその後の面倒をみることがほとんどなく、ほぼ毎日旦那さんがペットのお世話をしていました。
その後、夫婦の関係は悪化して離婚することになったのですが、離婚の話し合い中に奥さんが「ペットは私が引き取りたい」と言い出したのです。しかし、旦那さんは「世話をし続けたのは僕だ、君はほとんど世話をしてこなかったじゃないか」と反論しました。
さて、ペットはどちらが引き取ることになるのでしょうか。
ペットは法律上「物」です
まず、ペットは子供とは異なり、法律上「物」に分類されます。(民法85条)つまり、家財道具などの財産と同じ部類になるということです。これは、いかにペットを家族同然に扱っていても、変わることはありません。
物である以上、当然、離婚時における財産分与(婚姻中に築いた財産の分配)の対象になります。(民法768条1項・2項)
また、離婚時における財産分与の対象となる財産は、婚姻中に得た財産のみです。婚姻前から有する財産、あるいは婚姻中であっても自己の名で得た財産は、その人特有の財産となり、財産分与の対象となりません。(民法762条)では、これらの知識を前提に、今回の問題について考えてみましょう。
協議で解決できなければ、家庭裁判所へ
今回の事例においては、「まず、ペットの引き取り手について夫婦間の協議(話し合い)で決め、それが無理なのであれば、家庭裁判所へ、協議に変わる処分の請求をする」となります。
なぜなら、今回の事例におけるペットは、「婚姻中に夫婦で得た財産」であるため、共有財産として財産分与の対象になるからです。(民法768条1項)ところが、今回の事例では奥さんも旦那さんも、「自分が引き取る」と一歩も引かない状況であり、必ずしも両者の間の協議によって決着がつくとは限りません。
そのため、結論としては「夫婦間の協議でまずは決めてみて、それでダメなら家庭裁判所へ」となるのです。
家庭裁判所ではどのように判断される?
家庭裁判所では、財産分与について一切の事情を考慮して定めるとしています。(民法768条3項)
そのため、これまでペットの世話をしてきた実績や、ペットと生活できる環境を整えること、その他の財産での調整など、さまざまな事情が含まれてくるため、一概にどうしたらペットの引き取り手になれるとまでは言い切れないのです。
ペットを本気で引き取りたいと考えているのであれば、それなりの準備が必要となります。
ペットの養育費は請求できる? できない?
ペットを引き取ったとき、基本的にはその養育費を請求することはできません。なぜなら、ペットは民法上「物」として扱われ、物の維持や管理にかかる費用はその持ち主(つまり引き取った飼い主)が当然に負担すると考えられるからです。
ただし、離婚時の協議によってペットの養育費を負担するよう契約として定めること自体は可能です。ペットは、財産分与の対象となります。本気で引き取りたいと考えているのであれば、日頃からペットとの交流を大切にしておくべきでしょう。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士