更新日: 2019.06.28 その他暮らし
オープンブック・マネジメントの具体的な運用にあたっての3つのポイント
(1)決算書や財務情報を含めた各種経営情報を全員に公表する
(2)全社員がビジネスリテラシー/数字のリテラシーを学べる機会をつくる
(3)会社の命運を左右する決定的な数字(クリティカルナンバー)を社員自ら探し出し、追いかける体制・仕組みをつくる
(4)あらかじめ決まった方程式に基づいてプロフィットシェアして、全社員が会社の成功に関与していることを実感してもらう
執筆者:小泉大輔(こいずみ だいすけ)
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役
公認会計士・税理士
1970年東京都生まれ。上智大学経済学部卒業後、公認会計士となり、朝日監査法人(現在:あずさ監査法人)で監査実務、及び、M&A,株式上場支援に携わる。
2003年に、独立し、(株)オーナーズブレインを立ち上げ、現在は代表取締役であるとともに、2社の上場会社の役員も兼任する。共著著書に『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)』DVD『できるビジネスマンDVD+財務諸表チェックのキモ』 200年7月(創己塾出版)がある。
http://ownersbrain.com/
オープンブック・マネジメントを行う際の3つのポイント
そして、ポイントは3つです。
まず、経営者は社員に、当社がどのようにして儲けているか、具体的な数字を結び付けてビジネスを説明するとともに、予算と実績の損益計算書、項目ごとに細かく分解した費用の内訳、現金の流れ、貸借対照表を公開し、その意味するところを理解してもらう必要があります。
重要なのは、社員が数字のリテラシーを身に着けなれば、効果がないということです。貸借対照表は、会社が健康か、健康でないかを教えてくれる体温計です。また、損益計算書は、なぜそういう状態になったか、その対応策を教えてくれます。
つまり、貸借対照表で、熱が出て体調が不調であることを知り、損益計算書では熱が出た原因をさぐり、対処法を探す…このように、社員にできるだけ分かりやすく説明することがポイントです。
2つ目のポイントは、会社の命運を左右する決定的な数字(クリティカルナンバー)を決めて、全社一丸で追っかけるということです。
決定的な数字については、粗利益、受注件数などが一般的ですが、例えば、ホテル業では稼働率、小売業ならば在庫回転率、また、プロフェッショナルサービス業では稼働時間など、業種、業態、景気動向、競合他社との状況、自社の財務状況によって異なります。重要なのは、経営陣が決めるのではなく、現場で決めていくということです。
特に、最近では多くの会社がKPI(Key Performance Indicator)と呼ばれる、事業成功の鍵となる指標を設定しています。オープンブック・マネジメントの第一人者であるジョン・ケース氏にインタビューさせていただいたところ、クリティカルナンバーはKPIとは異なると言います。
彼によれば、多くの会社ではあまりにもたくさんのKPIを設定しているために、思考停止に陥ってしまっている。さらに、会社の中の部門間で、コンフリクトが生じてしまっていると言います。
例えば、ある製造業の会社の部署では、修理に必要なパーツを最小限にすることにKPIが設定されたため、別の部署では生産が滞ってしまい、最終的に出荷が大幅に遅れてしまいました。このような、部門間でのコンフリクト事例はよく耳にします。重要なのは、絞り込んだ重要な指標を、経営陣でなく現場と一緒に考えて設定することです。
3つ目のポイントは、儲かった成果を社員で分かち合うプロフィットシェアです。社員が経営者と同じ姿勢で仕事に取り組んでいく鍵は、「情報」と「インセンティブ」にあります。
会社の数字だけでなく、プロフィットシェアの方程式が事前に社員に開示されていれば、会社と社員の中には信頼が生まれます。会社の利益が上がることでプロフィットシェアとして成果の一部を受け取ることができると分かっていれば、自分たちの頑張りで成果が変わることを実感できます。
このように、透明性が高ければ、自分はどのような状況にあるか、何に注意を向ければいいのか、どこに問題があってそれをどう解決をすればいいのか、日々の行動がいかに周囲に影響を与えるかを考えることができます。
実際、オープンブック・マネジメントを導入している企業の社員は、なぜコストを削減しなければならないのか、なぜ業務改善しなければなければならないのか、などをよく理解しています。したがって、自分たちで自発的に課題に取り組んでいます。
このように、自分の会社についてよく知り、自主的に活動することで、仕事の受け止め方が変わります。自分たちの行動で、会社がよくなることを実感できるのです。
最後に
経営の透明性を高めるツール、“オープンブック・マネジメント”。
数字というビジネス言語を学ぶことで、自分の役割を理解し、仕事に意味を見いだし、成果を上げて、仕事を楽しむことができます。このことが、社員のやらされているという意識をビジネスプロフェッショナルの意識へと変えていきます。
みなさんも、ぜひ一度、検討してみませんか。
執筆者:小泉大輔(こいずみ だいすけ)
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役