昔は16歳未満も「扶養控除」があったって本当? 今は「児童手当」があるから損ではない? 年少扶養控除が「復活」する可能性についても解説
配信日: 2025.01.12
2024年10月の改正のように、児童手当はこれまでにも2010年の子ども手当導入や2012年の児童手当への変更など、たびたび制度の見直しが行われてきました。かつては16歳未満の子どもにも扶養控除が適用されていたこと、この廃止によって税制優遇から現金給付へと制度が大きく変わるきっかけとなったことを知らない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、扶養控除廃止の背景と児童手当の関連性について解説します。
執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
年少扶養控除とは? 16歳未満への適用が廃止された理由
扶養控除とは、所得税や住民税の計算時に、扶養家族がいる場合に所得から一定額を控除できる制度です。現在は16歳未満の子どもは扶養控除の対象外となっています。
以前は、16歳未満の扶養家族に対しても「年少扶養控除」として所得税では38万円、住民税では33万円の控除を受けられ、家計の負担軽減に寄与していました。しかし、2011年分の所得税、2012年度分の住民税から、16歳未満の子どもは扶養控除の対象外となったのです。
これには、2010年の「子ども手当」への制度変更が関係します。旧児童手当は、所得制限があった上で、3歳未満は月額1万円、それ以外の年齢では第1子・第2子には月額5000円が小学校修了まで支給されていました。一方、子ども手当では支給額が一律1万3000円に増額され、さらに所得制限が撤廃された上で支給期間が中学生まで延長されたため、年少扶養控除が廃止される形となったのです。
なお、年少扶養控除の廃止により税負担は増えましたが、子ども手当の増額と支給期間の延長により、多くの家庭では手取りが増える結果となっています。
年少扶養控除廃止により低所得者のほうが相対的に手当は大きくなった
扶養控除が廃止され、代わりに子ども手当が導入されたことで、低所得者のほうが相対的に恩恵を受けやすい仕組みとなりました。
理由は、所得税は年収によって5%~45%と税率が変わる累進課税だからです(住民税は10%で一律)。年少所得控除の仕組みだと、次の通り年収が高い人ほど恩恵を受けられます。
●所得税率5%の人:年間5万2000円(所得税1万9000円、住民税3万3000円)
●所得税率20%の人:年間10万9000円(所得税7万6000円、住民税3万3000円)
●所得税率45%の人:年間20万4000円(所得税17万1000円、住民税3万3000円)
年少扶養控除を廃止し、子ども手当として年収にかかわらず一定金額(中学生まで月1万3000円)を支給する制度に変えることによって、年収にかかわらず平等な支援を受けられることとなったのです。
なお、2012年に子ども手当は児童手当に改められ、支給額の変更と所得制限が再設定されることになります。しかし、その際に年少扶養控除が復活することはありませんでした。
年少扶養控除が復活する可能性はある?
年少扶養控除が復活する可能性は低いでしょう。理由は、年少扶養控除は高所得者ほど大きな恩恵を受ける仕組みであるためです。復活させることによって、高所得世帯に有利な税制になってしまいます。
現在の児童手当は、2024年10月に所得制限が撤廃され高所得世帯にも支給されることとなりましたが、支援金額は所得額に関わらず全世帯一定です。この制度が既に機能していることを考えると、低所得世帯と高所得世帯の格差を広げる年少扶養手当の復活を議論する可能性は低いと考えられます。
家計を支える制度を正しく理解しよう
年少扶養控除の廃止と子ども手当の導入は、「控除から手当へ」という考え方のもと、低所得者への支援を拡充する一方、高所得者の税負担を増やす形で公平性を追求したものだったと言えます。
その後、子ども手当は児童手当に改められましたが、現行制度では広く全世帯に一定の支援が行われています。特に低所得世帯への支援を拡大する議論はあっても、高所得世帯に有利な年少所得控除が再度復活する可能性は低いのです。
税制や手当の仕組みは、時代に応じて変更されます。現在の制度を正しく理解し、自分の家庭にどのような影響があるかを把握することが重要です。これにより、子育てに必要な資金計画を立てる際にも役立つでしょう。
出典
財務省 扶養控除の見直しについて(22年度改正)
厚生労働省 児童手当法の一部を改正する法律の概要
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士