SNSで「地方で車がないと生活できないのは甘え」という投稿が話題に!→実際、車を手放せないのは「当たり前」? 地方の“交通事情”とは
本記事では、地方の交通事情や車と関連性の深いガソリン代の高騰、ガソリン減税について解説します。
FP2級、AFP
地方の交通事情
地方の交通事情は非常に厳しいものです。バスやJRの本数が極端に少ない地域や、そもそも駅がなくバスしか通っていない地域などが存在します。
例えば、埼玉県松伏町の松伏町役場のバス停は、役場と東武鉄道のせんげん台駅を結ぶ路線1本しか停まらないうえ、本数は片道1日8本となっています。
また、北海道のえりも町は、JRが通っていません。もし車がない場合、バスでの遠出となります。
加えて、えりも町には産婦人科がありません。出産は約40キロメートル離れた浦河町か、130キロメートルほど離れた帯広市でしなければなりません。こちらも浦河町方面のバスは1日9本、帯広方面のバスは1日3本程度で、産婦人科を目指すなら途中で乗り換えが必要です。
こう考えると、車を手放せないのは「ごく当たり前」と言えます。むしろ車がないと、満足に移動できる手段が乏しいと言えるでしょう。
ガソリン代はなぜ高くなっている?
車がないと満足な生活が送れない地方にとって、最近のガソリン代の高騰は死活問題です。ガソリン代が値上がりしている主な理由は、ガソリン補助金の縮小です。
ガソリン補助金は正式名称を「燃料油価格激変緩和補助金」と言います。原油価格の高騰がコロナ禍からの経済回復の負担となり、生活に影響をおよぼすことから、影響を最小限とするため導入されました。
補助金はガソリンの全国平均が基準額を超えた場合に投入されます。これまでの基準価格は168円でした。しかし、2024年11月の閣議決定で、補助金の出口対応が示され、基準価格が185円に引き上げられたのです。12月、1月と補助割合が段階的に減らされ、ガソリン価格が高騰しているのです。
ついに「ガソリン減税」実現へ
ガソリン価格が高いのは、補助金の縮小以外にも要因があります。それが「ガソリンの暫定税率」です。
ガソリンの暫定税率は、本則税率とは別に期間を設けて上乗せされています。1974年に道路整備の財源とするために導入され、1リットルあたり25.1円が加算されています。2010年度の税制大綱で廃止が明言されましたが、当分の間は現行の税水準を維持するとして、差額の25.1円はいまだ廃止されていません。
また、ガソリンには暫定税率に加えて石油税や消費税などさまざまな税率が掛けられています。いずれも国税であり、国の一般財源となっているのです。
しかし、この暫定税率は「廃止」に向けて動き出しています。2024年末には、自民党、公明党、国民民主党の3幹事長間で「ガソリン暫定税率の廃止」に合意しました。正式な廃止時期について明言はないものの、過去数十年にわたって徴収され続けてきた税金は、いよいよ終焉に向けて進み始めたのです。
1月24日からは通常国会が開かれています。ここでの議論内容が深まれば、早くて来年度には暫定税率が廃止される可能性もあるでしょう。
車を手放せないのが“現実”課題解決のためには
「車を使わない」「車を手放す」といった選択肢を持つことは自由です。しかし、地方でその選択ができる人は限られているでしょう。
交通インフラだけの問題ではなく、都市計画のつくりや家庭・労働の環境なども考慮しなければなりません。さまざまな側面が十分に理解されていないうえでの「甘え」という発言は、決してふさわしいものではないでしょう。
加えて、極端なモータリゼーションからの転換は、自動車産業を基幹産業とする日本にとって、計り知れない経済的ダメージをおよぼすことが目に見えています。
ガソリン価格の高騰は、私たちの生活だけでなく、運輸業や交通業にも影響します。期待されているのは税収増ではなく、交通業界の活性化につながる施策なのではないでしょうか。
出典
経済産業省 燃料油価格激変緩和対策事業について
首相官邸 平成22年度税制改正大綱
執筆者:石上ユウキ
FP2級、AFP
