交番に「財布の落とし物」を届けたけど、持ち主からのお礼はなし! お礼って「義務」じゃないの? 報労金について解説
配信日: 2025.03.22

お礼の金額は人それぞれですが、なかには特にお礼はないというケースもあるようです。お金が目的で交番に届けたわけではないとしても、「お礼はない」と言われると何となくモヤモヤしてしまうかもしれません。
本記事では、財布の落とし主が拾い主にお礼をする義務があるのか、お礼を受け取れなかった拾い主が起こせる対応としては何かあるのかについて解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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財布の落とし主は拾い主に「報労金」を支払う義務があるが、支払わなくても罰則はない
落とし物の取扱いについては「遺失物法」と呼ばれる法律でルールが定められています。
財布などの落とし物を拾った人は、以下のいずれかの対応をすることが義務付けられています。
・落とし主が分かっている場合には、落とし物を落とし主に返還する義務がある
・落とし主が分からない場合には、警察署に提出する義務がある
また、落とし主は、落とし物の返還を受けた場合、「報労金」を支払わなければならないとされています。
謝礼の金額については「落とし物の金額の5~20%」に相当する金額の支払いが義務付けられています。仮に財布のなかに10万円が入っていて、財布に価値がないと仮定すると、謝礼の金額は5000~2万円程度が目安になる計算です。
ただし、遺失物法では報労金の支払い義務は定められているものの、守らなかったときの罰則規定はありません。よって、仮に落とし主が拾い主に謝礼を渡さなかったとしても、何らかの刑罰や罰金が科されるわけではありません。
つまり、謝礼を渡すのは落とし主の義務ではありますが、その義務が履行されずに、拾い主が何ももらえないという可能性もあります。
報労金がない場合は裁判も可能だが裁判費用や労力がかかる
遺失物法の落とし物の謝礼の決まりには罰則規定がなく、仮に落とし主が謝礼の義務を果たさなくても警察に罰金を科されたり、逮捕されたりすることはありません。警察は落とし物の受理や返還の業務を行いますが、謝礼の有無や金額には介入しません。
拾い主がどうしても謝礼がないことに納得できなければ、裁判所に提訴するという方法もあります。
実際、過去には43万円が入った財布を警察に届け出たのにお礼も連絡もないとして、大阪市西区に住む男性が報労金の支払いを求めて大阪簡易裁判所に提訴し、落とし主が7万円を支払うことで和解が成立した例もあります。
ただ、裁判をするには訴訟費用の支払いや手続きにかかる労力などの問題があり、数万円の和解金を得る手段として妥当とは言い切れません。
「お礼がないなら」と拾得物を届け出ないとさまざまなペナルティがある
財布を拾った際、「どうせお礼がないなら警察に持っていかなくても良いのでは? 」と思ってしまうかもしれませんが、財布を拾ったのに警察に届け出ないと、拾い主側にさまざまなデメリットがあります。
刑法では「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する」とあります。つまり、拾った財布を警察に届け出ないと、最悪の場合は遺失物横領とみなされ、懲役刑になるかもしれません。
また、落とし物を拾った場合、拾った日から7日以内に警察署に届け出ないと拾得者としての権利を得ることができません。
例えば「お礼をもらえないこともあると聞くし、後でいいか」と、拾った財布を警察に届けないまま自宅に置いておくなどすると、お礼を受け取る権利を得られなくなるだけにとどまらず、罰則が科される可能性まであります。
まとめ
落とし物の落とし主は拾い主に拾得物の5~20%程度を「報労金」として支払うことが義務付けられていますが、罰則規定がないので、落とし主が報労金を受け取れない場合もあります。
親切心で届けたにも関わらずお礼がないとなるとモヤモヤする気持ちは理解できますが、お礼に過剰に期待せず、落とし物を拾った際には警察に届けるなど適切な対応をとりましょう。
拾ったものをしばらく家で保管しておくなどの行為は遺失物等横領に該当する可能性があるため、間違っても行わないようにしてください。また落とし主は拾い主の親切心に感謝し、できる限りの対応を取ることが望ましいと言えるでしょう。
出典
e-Gov法令検索 遺失物法
e-Gov法令検索 刑法
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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