高額療養費制度の「自己負担上限額引き上げ」が見送りになったとのこと。そもそも現行の制度ではいくらくらいの「還付」を受けられるのでしょうか?

配信日: 2025.04.23 更新日: 2025.09.26
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高額療養費制度の「自己負担上限額引き上げ」が見送りになったとのこと。そもそも現行の制度ではいくらくらいの「還付」を受けられるのでしょうか?
高額療養費制度とは、ひと月の医療費の支払いが自己負担上限額を超えた場合、超過した分が支給される制度です。最近のニュースで、高額療養費制度の自己負担上限額引き上げの見送りを目にした方もいるかもしれません。
 
しかし、そもそも現行の制度でいくらくらいの払い戻しを受けられるのか分からない方もいるでしょう。
 
本記事では、仮にひと月の医療費が100万円かかった場合の払戻額の例と、自己負担上限額が引き上げられた場合の引き上げ幅や自己負担額などを解説します。
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「高額療養費制度」の「自己負担上限額引き上げ」は見送りに

政府は、高齢化や高額薬剤の普及などを背景に、制度を持続可能にするため、高額療養費制度の自己負担上限額を引き上げる予定でした。
 
しかし、野党や患者団体だけでなく、与党側からも国民の理解を得られていないという声が上がったことから、2025年8月の引き上げは見送られることとなりました。
 

ひと月に「100万円の医療費」がかかった場合の「払い戻し」はいくら?

自己負担上限額は加入者の年齢や所得水準によって異なります。
 
厚生労働省の資料によると、年収約370万円~約770万円の方の1ヶ月あたりの上限額は年齢にかかわらず「8万100円+(医療費-26万7000円)×1%」です。医療費が100万円(3割負担)の場合、自己負担額は8万7430円、払戻額は21万2570円となります。
 
なお、同一世帯内で同じ医療保険に加入している場合に自己負担額を合算できる世帯合算や、直近12ヶ月以内に3回以上上限額に達した場合に、4回目から上限額が下がる多数回該当もあります。この制度を利用できる場合、自己負担額はさらに軽減されるでしょう。
 

「自己負担上限額引き上げ」になった場合の引き上げ幅

厚生労働省によると、当初、2025年8月からそれぞれの所得区分に合わせて上限額が引き上げられ、2026年8月からは従来の各所得区分(住民税非課税を除く)を3区分に細分化し、それぞれの所得に応じて上限額を引き上げる予定でした。
 
なお、急激な変動を緩和するために、2026年と2027年で徐々に上限額を引き上げる予定となっていました。2025年8月に予定されていた引き上げ幅は表1の通りです。
 
表1

所得区分 引き上げ幅
年収約1160万円~ +15%
年収約770万~1160万円 +12.5%
年収約370万~770万円 +10%
~年収約370万円 +5%
住民税非課税(所得が一定以下を含む) +2.7%

出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」を基に筆者作成
 

「自己負担上限額引き上げ」になった場合はどのくらい自己負担が増える?

厚生労働省の資料によると、年収約370万~約770万円の場合、2025年8月から予定されていたひと月あたりの上限額は「8万8200円+(医療費-29万4000円)×1%」です。
 
仮に、年収約370万~770万円でひと月に100万円(3割負担)の医療費がかかった場合、自己負担額は9万5260円となり、引き上げ前に比べて7830円増える計算です。
 

まとめ

高額療養費制度は2025年8月に自己負担上限額の引き上げが予定されていましたが、2025年3月現在は引き上げを見送る方針となっています。
 
年収が約370万~約770万円でひと月の医療費が100万円(3割負担)の場合、現行の制度であれば自己負担額は8万7430円、払戻額は21万2570円です。
 
一方、上限額が引き上げられた場合、同様の条件でも自己負担額は約8000円増える計算です。高額療養費制度は経済的な不安を抱えずに医療を受けるうえで重要な制度のため、今後も動向を注視する必要があるでしょう。
 

出典

厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)(3ページ~7ページ)
厚生労働省 高額療養費制度の見直しについて(1ページ、3ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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