友人が「シングルマザー」になったのですが、節約はするものの想像より変化は小さいと言います。ひとり親への「国の支援」はかなり手厚いのでしょうか?
配信日: 2025.05.09


執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。
国が推進する4つの支援策
こども家庭庁の資料によると、2021年時点で母子世帯は119.5万世帯、父子世帯は14.9万世帯です。2011年は母子世帯123.8万世帯、父子世帯22.3万世帯で、直近の10年で微減傾向にあるとされていますが、身近にはシングルマザーも多く、減少しているようには感じられません。
昨今の物価高もあり、共働き家庭でも生活が苦しくなっています。子育てと生計の維持をひとりで担うことは困難です。国はひとり親家庭の自立に向けて「子育て・生活支援策」「就業支援策」「養育費の確保策」「経済的支援策」の4つの支援策を推進しています。
<子育て・生活支援策>
ひとり親家庭等生活向上事業として、各種相談窓口や情報交換の場が設けられています。主に住民票のある市区町村が窓口になります。何事もひとりで悩みを抱え込まないことが大切です。相談することで専門家のアドバイスなどを受けることが可能です。いろいろなセーフティーネットの情報を得ることで、解決の糸口を見つけられるかもしれません。
<就業支援策>
ここ数年シングルマザーの就業率は80%台を推移しています。正社員の割合は上がっているとはいえ。いまだ50%を割り込んでいます。
(図表1)
母子家庭就業支援事業として、相談やセミナー・就業情報の提供を行っています。就業支援バンクに登録や在宅ワークに必要なスキル習得のための情報提供、パソコンなどの貸出、教育訓練給付金の支給などの制度があります。
コロナ以降、在宅ワークの需要も増えました。子育ての隙間時間を使ってオンラインで学び直しをするシングルマザーも増えているようです。より高いスキルを持つことは、収入アップにつながります。自分に投資することは、将来に向けてとても有効です。
<養育費の確保策>
養育費等支援事業として、離婚前後の問題を専門家に相談できる窓口を設けています。養育費の履行確保のために、公正証書の作成や養育費の取り決め等を弁護士に相談する場合、支援を受けられます。住民票のある都道府県や市区町村の担当課が窓口です。
<経済的支援策>
*児童扶養手当の支給
ひとり親に給付金を支給する制度で、給付される金額は親の収入によって異なります。対象者は18歳までの子をもつ「ひとり親家庭」。障害をもつ子の場合は20歳未満まで(18歳になる年度の3月31日まで支給)。支給される金額は図表2のとおりです。
(図表2)
奇数月に2ヶ月分が振り込まれます。窓口は住民票のある自治体の福祉課や子育て支援課で、必要な書類などを提出して申請します。
*母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
ひとり親家庭の父母などに、子どもの進学にかかる費用や、自分自身の資格取得、引っ越し費用などに必要な資金を貸し付ける制度です。経済的自立や生活の安定、育てている子どもの福祉増進を目的とし、資金の種類や貸し付け方法によっては無利子です。
20歳未満の児童を扶養しているひとり親、寡婦、父母のいない児童、ひとり親家庭の児童などが対象者です。
窓口は住民票のある自治体の福祉担当です。資金の使用目的は生活資金以外にも、修学資金・技能習得資金・修業資金・就職支度資金・医療介護資金・就学支度資金など多岐に利用できます。区役所などで借り入れの理由や家計状況などの聞き取り面談があり、審査通過後に借用書を提出します。
まずは役所の窓口で相談
国の支援策について見てきました。まずは役所に相談に行くことが大切です。その後の手続きなどがスムーズに進むだけでなく、各自治体独自のサポート情報を得ることもできます。ネットで検索するだけでは知りえないことも多いです。また悩みを誰かに相談することで、意外と簡単に解決する方法が見つかる場合もあります。
自治体独自の支援の一例として、神戸市の場合「ひとり親世帯家賃補助制度」「ひとり親家庭等医療費助成」「ひとり親家庭のベビーシッター利用料の補助」等があります。
「もっと早くに知っていたら利用できたのに……」とならないためにも、情報収集は大切です。シングルマザーを狙った悪質業者もいます。公的支援の利用を優先的に考えることは大事だと思います。
出典
厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果(令和3年11月1日現在)」
こども家庭庁 ひとり親家庭等関係
こども家庭庁 データ関係資料
神戸市 ひとり親家庭のための応援ハンドブック(2024年3月発行)
こども家庭庁 あなたの支え
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士