知人から購入した土地を造成していたら「土地の持ち主」と名乗る人が……! 購入した土地は違う区画だったようです。造成前は林のような状態だったのですが元に戻さないといけないのでしょうか?
本記事では、誤って他人の所有地を造成してしまった場合の原状回復義務や法的な対処などを解説します。
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目次
他人の土地を誤って造成してしまったら?
知人から購入して造成した土地が、実は他人の所有地だった場合、その土地を無断で使用していたことになり、法的なトラブルに発展する可能性があります。
借地を返還する際には基本的に原状回復が必要
一般的に借地を返還する場合、民法第599条では、借地人には借りたときの状態にする「原状回復義務」があると定められています。つまり、さら地で借りた場合は、基本的にさら地にして返すことを指すのです。
無断使用の場合はどうなるのか
一方で、土地の無断使用をしたケースには「原状回復義務」はありません。ただし、民法709条によると土地の無断使用は、不法行為に当たります。
そのため、土地の無断使用が土地の持ち主に何かしらの損害を与えていれば、その損害を賠償する責任を負う必要があるでしょう。
損害賠償とはどのようなことをしなければいけないのか
土地を無断使用された際、土地の所有者にはどのような損害が発生する可能性があるのでしょうか。考えられる例として、次のものが挙げられます。
・土地が無断使用されていたため、土地を貸せなかったことによる利益の逸失
・土地を使用できず、別の土地を借りた場合に発生する金額
・土地の明渡請求や損害賠償請求などにかかった費用 など
このような損害が発生している場合は、土地使用料相当額の請求がなされる場合もあるため、原状回復義務の定めがないとはいえ、土地を使用する際には注意する必要があるでしょう。
土地を無断使用してしまったら訴えられる?
故意ではなくても土地を無断使用してしまった場合は、慰謝料を支払ったり刑事罰に問われたりする可能性はあるのでしょうか。
慰謝料を取られる可能性
土地の区画を勘違いして他人の土地を造成してしまった場合、土地の所有者から「土地を無断使用されて迷惑を受けたため、損害賠償だけでなく、慰謝料も請求したい」と言われるのではないかと心配する方もいるでしょう。
慰謝料は、一般的に違法行為を受けて精神的苦痛を被った場合に支払われる金銭のことをいいます。この場合は、土地の無断使用によって発生した土地使用料相当額の賠償をすれば、所有者が受けた損害は回復したと見なされます。
つまり、土地の無断使用があったとしても、慰謝料の請求につながるとは限らないのです。ただし、何らかの理由で精神的苦痛を受けたと相手が訴え出た場合は、慰謝料の対象になる可能性があります。
刑事罰に該当してしまう可能性
土地を無断で使用する行為は、刑法235条の2によれば「不動産侵奪罪」に該当するおそれがあり、「他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の懲役に処する。」とあります。なお、「不動産侵奪罪」は窃盗罪や詐欺罪などと同様に、他人の財産権を侵害する重大な犯罪(財産犯)に該当します。
ただし、これはあくまで故意犯の場合に該当する刑事罰のため、他人の土地とは知らずに使用してしまった場合は、まず罪に問われる可能性はないでしょう。
誤って他人の土地を使用した場合の対処法
故意でなくても誤って他人の土地を使用してしまった場合は、今以上のトラブルにならないように適切に対処する必要があります。
土地の明け渡し日などを協議する
使用している土地が他人の土地だと判明した場合、できるだけ速やかに明け渡すための話し合いを行いましょう。原状回復が必要かどうかについては、土地の所有者の意向を確認した上で判断することが大切です。
また、土地の所有者に損害が発生している場合は、損害の内容や金額を明確にして、適切な補償を行う必要があります。トラブルを大きくしないためにも、弁護士などの専門家を交えて、冷静に協議を進めましょう。
境界線を明らかにする
土地を無断使用してしまうトラブルは、土地と土地の境界線が複雑であったり、不明瞭であったりすることが原因で起こるケースも少なくありません。
土地を購入や相続で入手した際は、造成前に土地の測量をして、どこまでが自身の所有地なのかを明確にしておくといいでしょう。
なお、土地の無断使用は、造成以外に「物を置く」「無断駐車をする」なども該当するため、注意してください。
土地を造成する際は区画を明確にしてから進めましょう
誤って他人の所有地を造成した場合には、それによって発生した損害の賠償請求をされる可能性があります。
無断使用が故意でなければ慰謝料を支払ったり、刑事罰に処されたりする可能性は低いものの、トラブルに発展しないように、購入時に土地の区画や境界は明確にしておくことをおすすめします。
出典
デジタル庁 e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百九十九条、第七百九条
刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百三十五条の二
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
