更新日: 2019.06.18 その他暮らし
有名レストランの悪口をめいっぱいSNSに投稿、これって何かの罪になってしまうの?
しかし、何でも投稿すればいいと言うものではありません。うっかりすると炎上ですまないこともあります。
執筆者:藤木俊明(ふじき としあき)
副業評論家
明治大学リバティアカデミー講師
ビジネスコンテンツ制作の有限会社ガーデンシティ・プランニングを28年間経営。その実績から明治大学リバティアカデミーでライティングの講師をつとめています。7年前から「ローリスク独立」の執筆活動をはじめ、副業・起業関連の記事を夕刊フジ、東洋経済などに寄稿しています。副業解禁時代を迎え、「収入の多角化」こそほんとうの働き方改革だと考えています。
弁護士/東京桜橋法律事務所
2009年弁護士登録。2016年にニューヨーク州のロースクールへ留学のため登録抹消するも、翌年復帰。
ITベンチャーを中心とした企業法務から、個人の法律問題まで、幅広く手掛ける。一歩先の展開を見通す状況分析を心掛けると同時に、依頼者の立場・心情に対する的確な理解を大切にしている。座右の銘は「生涯成長」。
気に食わないレストランの悪口を投稿して拡散
会社員N子さんは、食べ歩きとSNSが大好き。SNSのフォロワーもたくさんいて、N子さんが投稿するたびに、みんな「おいしそう!」「うらやましいなー」とか反応してくれるのが楽しくて、いつも新しいお店を開拓しています。
会社の近くに有名なシェフが新しいお店を開き、評判だというので行ってみました。しかし、残念ながらあまりN子さんの口にはあいません。
おまけに、けっこうなお勘定になってしまい、N子さんは「有名シェフって聞いたから来たのにがっかりしちゃった。しかも高いんだから。もういかない!」と不機嫌モードで帰り道です。
N子さんは、面白くない気持ちのままツイッターに「ちっともおいしくなかった」と投稿。すると、いつものように、フォロワーが「そうなの」「へー」とか反応してくれます。N子さんはだんだんエスカレートしてきて、お店やシェフに対して相当ひどい悪口を書き込みます。
それがまた多くの反応を集めたのはいいけれど、変に広がっていき、「言い過ぎなんじゃない」「あんたが悪い」などの反論も集まりだして、いわゆる「炎上」を起こしてしまいました。
すると、さらにツイートは拡散され、ついにはそのお店のシェフが知って激怒したのです。この場合、N子さんは何かの罪に問われるのでしょうか?
*物語はフィクションです
レストランの悪口投稿は罪になるの? 東京桜橋法律事務所の内藤悠作弁護士にお伺いしました。
これはツイートされた悪口の中身にもよりますが、その内容によって、刑事事件としてはシェフ個人に対する「名誉毀損(めいよきそん)罪」、または事業者であるお店に対しての「偽計業務妨害罪」に問われる可能性がないとは言えません。
「名誉毀損罪」は刑法230条に規定される犯罪で、人の名誉を毀損する行為です。法定刑は3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金と定められています。
「偽計業務妨害罪」は刑法233条に規定される犯罪で、虚偽の風説を流布し,または偽計を用いて,人の業務を妨害する罪です。法定刑は3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金と定められています。
しかし実際には刑事事件としてより、民事で「シェフの名誉を傷つけられたので慰謝料を請求する」または「いわれない悪口でお店の営業が妨害されたので損害賠償を請求する」という可能性のほうがあるのではないでしょうか。
『シェフが名誉を傷つけられた場合の慰謝料の金額』には、刑事事件のように定めがありませんから、シェフが望む金額を請求されますし、後者の『お店の営業を妨害された場合の損害賠償』というのは、これだけあったお店の利益がその悪口のおかげでこれだけ減ったので賠償してほしい、という内容になります。
後者の場合は、実際のお店の損失額によることになりますが、今回のN子さんのような事案で慰謝料の請求がなされる場合は、50万円~100万円程度の請求になるのがおおむね一般的と考えられます(もちろん内容によって千差万別でありあくまで目安のひとつとしてですが)。
また、たとえN子さんがツイッターを匿名でやっていたとしても、「発信者情報開示」を請求により、身元を特定することも可能です。したがって、匿名だからといって請求されないと安心はできません。
SNSへの誹謗中傷は控えましょう
今回のN子さんの事案はひょっとして訴えられる可能性もあるようです。みなさんも、匿名だからといって、SNSに悪口や誹謗中傷を投稿しないように気をつけましょう。
また逆に、誹謗中傷を受けた場合は、「発信者情報開示」を請求するという手があります。それは弁護士に相談することになるでしょうね。
執筆者:藤木俊明(ふじき としあき)
副業評論家
監修:内藤悠作(ないとう ゆうさく)
弁護士/東京桜橋法律事務所