日本郵便が「運送事業許可」取り消しに! 人手不足で「ゆうパック値上げ」の可能性も!? 今後“お中元・お歳暮”はどうなる? 業界の抱える「課題」もあわせ解説
本記事では、運送事業許可の取り消しが日本郵便に与える影響や業界が抱える問題点、そして配送料値上げの可能性などについて解説します。
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日本郵便が運送事業許可取り消し
今年1月、兵庫県内の郵便局にて法令で義務づけられた出発前の点呼をせず運転手の健康状態や飲酒の有無などを確認していなかったことが発覚し、追加調査にて全国的な未実施が明らかになりました。
これを受け、6月5日に国土交通省から運送事業許可取り消しの処分の方針が通知されたのです。日本郵便はこの処分を受け入れ、対象車両に対してのもので、トラックやバンタイプの車両約2500台が5年間使えなくなりました。
「法令で義務づけられた出発前の点呼」は運行管理者という国家資格を有する者が、以下の内容を確認するものです。
●健康状態
●飲酒の有無
●薬の服用状況
●睡眠不足
同社が保有しているトラックは元々約2500台だったので、1トン以上のトラックは今後「残らず」使えなくなります。そのため軽四車両の活用や他の運送業者への委託でサービスを提供していくとのことです。
運送事業許可取り消しの影響は?
日本郵便は使えなくなったトラックの代わりにどこへ振り分けて運送を維持するのか、以下のように発表しています。
●郵政グループ外の運送会社へ委託 57%<日本郵便郵送(株)からの再委託含む>
●自社軽四車両による代替 42%
●日本郵便輸送(株)へ委託 1%
以上のように、行政処分後、半分以上は自社や郵政グループ外へ委託する見込みとのことです。
運送業界に日本郵便の荷物を受け入れる余裕はない?
では、他社は日本郵便の荷物を受け入れできるのかというと、あまり多くは望めないかもしれません。それというのも2024年4月1日から働き方改革関連法が適用され、トラックドライバーの不足が深刻になっているからです。「物流の2024年問題」と呼ばれている規制には以下のようなものがあります。
●ドライバーの時間外労働が規制された
●ドライバーの拘束時間が短縮された
新たな規制により、運送業界全体で、以下の影響が生まれるとされています。
●荷物が運べない
●納品が遅れる
●配送費の値上げ
●運賃の上昇が商品価格に上乗せされる
規制はドライバーを守るものですが、ドライバーの労働時間減少が給与の減少、会社の売り上げ減少につながり、さらなる人手不足を招きかねません。
日本郵便が「他社に委託する」と発表している以上、受け入れ先はある程度確保されているはずです。ただ、運送業界に日本郵便の荷物を受け入れる余裕はない可能性も高いのではないでしょうか。人手不足が深刻化すれば、ゆうパックの配送料も値上げせざるを得ないかも知れません。
「ゆうパック廃止」は誤解
運送事業許可取り消しの報道のあと、一部報道やSNSなどで「郵便物が配送できなくなる」「日本郵便がゆうパックの廃止を検討している」という誤情報が流れました。これは誤解だと同社は否定しています。
「ゆうパックの受け入れを停止する」こともないと思われます。なぜなら、受け入れ後、他社に運送を委託することが決まっているからです。結果的に運ぶのが他社であっても、同社としては「ゆうパック」というサービスを継続するのでしょう。
まとめ
お中元をゆうパックで送ることはできます。しかし荷物は他社によって運ばれるケースが多いと考えられます。
ゆうパックが値上げされるかどうかはまだ発表されていません。ヤマト運輸は2025年10月1日から宅急便の値上げを予定していますが、これが発表されたのは5月1日で、国土交通省の運送事業許可取り消し処分の方針が日本郵便に通知される前のことです。
トラックや人手が足りないことは運送業界全体の問題で、値上げは避けられないかもしれません。値上げタイミングはお中元のときなのかお歳暮のときなのか……消費者は恐れながら待つしかないのでしょう。せめて時間指定通りに受け取るなど再配達を防止して配達員の負担を減らし、消費者も運送業界をサポートしていきたいですね。
出典
日本郵便株式会社 点呼業務不備事案に関する行政処分及び当社の対応について
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
