「親の口座」から「入院費を払い戻そう」としたら銀行に断られました…。交渉を「仲介してもらえる制度」があると聞いたのですが、どうすれば利用できますか?
しかし「入院費が思ったより高額になったので親の口座にあるお金が必要」ということもあるでしょう。
そこで今回は「金融ADR制度」について、利用方法や費用もあわせて紹介します。
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目次
金融機関との交渉を仲介してくれる「金融ADR制度」とは?
ADR(裁判外紛争解決手続)は消費者保護を目的とした国の制度で、銀行・保険・証券などの業態ごとに枠組みが導入されています。
例えば、消費者と金融機関との間でトラブルが起こった場合には、裁判での解決を図ることにもなりかねません。金融ADRは裁判での解決に代わって、双方の話し合いによりトラブル解決を目指す制度です。
消費者と金融機関との仲介を務めるのは弁護士などの専門家からなる紛争解決機関で、消費者からの申し立てに対して中立・公平な立場で和解案を提示します。金融機関には和解案への尊重が求められるため、トラブルのスムーズな解決が期待できるでしょう。
今回の事例では「親の口座から入院費を払い戻そうとしたら銀行に断られた」ということです。一般社団法人全国銀行協会によると、同様の事例で「銀行から病院に請求書を出してもらい、入院費を請求書の支払先に振り込めるようにする」という方法で解決できたようです。
「金融ADR制度」の利用方法
国から「指定紛争解決機関」として指定されている全銀協(全国銀行協会)ADRでは「苦情処理手続き」と「紛争解決手続き」により、消費者と銀行の間で起こったトラブルの解決を図っています。
まずは話し合いで解決を目指す「苦情処理手続き」がおこなわれ、それでは解決しない場合に和解による解決を目指す「紛争解決手続き」がおこなわれます。それぞれの手続きの流れは以下の通りです。
【苦情処理手続き】
●電話または訪問により、相談員にトラブルの内容などを伝える
●相談員が苦情の内容を銀行に伝え、解決を求める
●銀行が直接消費者の対応にあたり、トラブルを解決する
【紛争解決手続き】
●苦情処理手続きで解決しなかった場合は、相談員から「紛争解決手続き」の説明を受ける
●申立書と必要書類をあっせん委員会事務局宛てに郵送する
●審査により、申し立てが受理されるか決まる
●申し立てが受理されると通知書が届くので、銀行の主張に反論するための追加資料などを郵送する
●あっせん委員会からの聴取がおこなわれ、あっせん案が出される
今回の事例のような、親の口座からの払い戻しに関するトラブルのほかにも、金融商品案内のしつこい勧誘や「振り込みができない」などのトラブル、契約した保険商品に関する苦情なども、相談が可能です。
「金融ADR制度」を利用する際に発生する費用
金融ADR機関には、全国銀行協会のほかにも、信託協会や生命保険協会・日本損害保険協会・日本貸金業協会などがあります。金融ADRの利用料については各機関が定めていますが、無料で利用できる場合もあるようです。
ただし、日本貸金業協会の金融ADRのように、申し立てにあたり所定の手数料がかかることもあります。手数料の金額は、請求の価額により表1のようになります。
表1
| 請求の価額 | 契約者の負担額 |
|---|---|
| 100万円以下 | 2000円 |
| 100万円超300万円以下 | 6000円 |
| 300万円超500万円以下 | 8000円 |
| 500万円超800万円以下 | 1万1000円 |
| 800万円超1000万円以下 | 1万3000円 |
| 1000万円超1500万円以下 | 1万7000円 |
| 1500万円超2000万円以下 | 2万1000円 |
※日本貸金業協会「紛争解決手続手数料」を基に筆者作成
ほかの機関を利用する場合は、手数料がどのようになっているか事前に確認しておきましょう。
銀行とトラブルになった場合は「金融ADR制度」を利用するとよい
「親の口座から入院費を払い戻そうとしたら銀行に断られた」というように、銀行との間でトラブルになりそうなときは、双方の話し合いによってトラブルの解決を図る「金融ADR制度」を利用するとよいでしょう。
話し合いで解決しないときは紛争解決手続きにより、和解による解決を目指すことになります。手数料は金融ADR機関によって定められているため、事前に確認しておきましょう。
出典
一般社団法人全国銀行協会 銀行とトラブルになったら? 全銀協ADRで解決!
日本貸金業協会 紛争解決手続手数料
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
