支給額は「月100万円」!? 「国会議員」の「調査研究広報滞在費」は何に使われている?
かつて「文書通信交通滞在費」(文通費)と呼ばれていたこの費用は、2022年に名称が変わり、目的が明確化されました。本記事では、調査研究広報滞在費の制度の特徴や変遷、変更点をまとめました。
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目次
調査研究広報滞在費とは何?
調査研究広報滞在費は、国会議員に対して毎月100万円、年間で1200万円の公費が支給される制度です。国政に関する調査研究、広報活動、国民との交流、滞在などの議員活動を行うために支給され、国会法第38条および国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第9条に基づいています。
この制度は2022年4月の法改正により、それまでの「文書通信交通滞在費」(文通費)から名称が変更されました。調査研究広報滞在費の支給対象となるのは、衆・参両院の議長、副議長および全議員です。
支給方法は、原則在職日数に基づく日割り支給となっています。調査研究広報滞在費は非課税であり、使途の範囲は幅広く、国政に関する調査研究、広報活動などが認められています。
制度の歴史と背景
調査研究広報滞在費の制度は、1947年(昭和22年)に「通信費」「滞在雑費」として始まり、その後「通信交通費」「調査研究費」「文書通信交通費」「文書通信交通滞在費」と名称を変えながら支給額も増加してきました。
名称が変わっても使途の公開や領収書添付の義務がなかったことから、実態が不透明だったといえるでしょう。
2021年の衆議院議員選挙で当選した新人・元職の議員が在職1日で満額の100万円を受け取ったことが報じられたことがきっかけとなり、国会内で本格的な議論が始まりました。
その後、2022年の改正で名称の変更と目的の明確化、さらには日割り支給への変更が実現したのです。
最新の制度変更点と公開ルール
2025年4月、衆・参両院で新たな規程が決定され、8月支給分から適用される予定になっています。衆議院の「調査研究広報滞在費の使途の報告及び公開並びに残額の返還に関する規程 概要」によると、主な改正の内容は以下の通りです。
・使途の明確化
・報告書の提出と公開
・全支出の公開対象化
・未使用分の返還義務
使用用途が調査研究や広報など議員活動に必要な経費に限定され、選挙運動費用への使用は禁止となりました。また、1万円を超える支出については、金額、支出先、年月日などを記載した報告書を作成し、領収書の写しを添付して提出する必要があります。
報告書は3年間インターネット上で公開されることになり、年度末時点で残額がある場合、報告書公開後20日以内に返還することも新たに盛り込まれました。
調査研究広報滞在費の課題
調査研究広報滞在費は、議員歳費(給与やボーナス)とは別に支給されるものです。非課税であるうえ、使途公開や領収書添付の義務がなかったため「第2の給与」などと批判された経緯があります。
例えば、イギリスの国会議員の経費は、全ての支出について、独立した機関によって監査が行われ、公表されることになっています。このような事例と比較すると、日本の調査研究広報滞在費については、依然として改善の余地があるといえるかもしれません。
制度が改正された今後は、より厳格な使途管理が求められるでしょう。
調査研究広報滞在費は、国会議員の職務を遂行するために必要な費用として支給されている
調査研究広報滞在費は、国会議員の活動を支えるための重要な公費の1つです。しかし、領収書の添付義務がなかったなどの点において、運用の透明性が長年の課題であったといえます。
2025年8月からは、使途の明確化や全支出の公開、未使用分の返還義務などが本格的に始まります。新たな規程は、長らく課題とされてきた使途の不透明性を解消するうえで進展があったといえるでしょう。
しかし、少額の支出に対する領収書の提出義務は設けられていないため、全ての支出を完全に可視化できるとはいえません。国民にとって分かりやすい形で公開されることが重要であり、実効性が問われることになるでしょう。
出典
衆議院 調査研究広報滞在費の使途の報告及び公開並びに残額の返還に関する規程 概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
