ディーラー営業マンから「新車は5年以内に買い替えたほうがいい」と言われた! 長く乗ったほうが「お金がかからない」と思いますが、本当にお得なのでしょうか? 元ディーラー勤務の筆者が解説
しかし、実際には「短期的な買い替え」にも一定のメリットがあります。逆に、長く所有することで発生する「見えないコスト」も存在します。今回は、ディーラーが勧める5年以内の買い替えサイクルが本当にお得なのかどうか、検証していきます。
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営業マンが勧める「短期間での乗り換え」は本当にお得なのか
営業マンが短期間での買い替えを勧める理由は、主に以下の2点です。
・リセールバリュー(下取り価格)が高く残る(顧客側のメリット)
・顧客の定期的な買い替えで販売実績が安定する(営業マン側のメリット)
車は年数がたつにつれて価値が下がりますが、5年以内であれば下取り価格がある程度高く維持されるため、次の車の頭金にしやすくなります。「営業マンに都合が良いだけなのでは?」と感じる人も多いかもしれません。
営業マンの側で考えてみると、確かに自身の営業成績のために車の買い替えの回転を速くさせたいという事情もあります。ですが、これは全てが営業サイドの利益というわけではありません。車を買うユーザー側にも一定の合理性がある提案であることは理解しておきましょう。
リセールバリューが高いのは5年までと考えられている
中古車市場では、車の価値は年数に応じて大きく下がります。以下で示す例は全ての車にあてはまるということではありませんが、一定の目安として捉えてください。
・3年落ち:新車価格の約50%
・5年落ち:新車価格の約30%
これ以降は査定額が急激に下がるため、売却しても大した金額にならないことが多くなります。年数が経過している車なら「壊れるまで乗りつぶす」という考え方もありますが、10年乗る間に大きな修理や整備費がかかってしまえば、結果的にトータルコストが上がる可能性もあります。
そのため、5年程度で価値が残っているうちに乗り換えるという判断は、ある意味「損をしにくい」選択肢ともいえるのです。
修理費が膨大になる可能性も
車を長く所有する際に無視できないのが、保証切れ後の修理費です。車には一般保証と特別保証の2つの保証があり、それぞれ有効期限が異なります。ここで確認してみましょう。
3年経過で一般保証が切れる
購入から3年、または走行6万キロメートルまでは「一般保証」が適用され、カーナビやパワーウインドウなどの電装系や空調などの自然故障が発生したときは、メーカー保証としてトラブルに対応してもらえます。
しかし、それを過ぎると同様の修理は全額自己負担となります。あくまで目安の金額ですが、パワーウインドウで7万円程度、エアコンになると20万円程度の修理費がかかってきます。
5年経過で特別保証も切れる
エンジンやトランスミッションといった「走る・曲がる・止まる」に必要な主要部品については「特別保証」があり、通常は5年または10万キロメートルが上限です。これを超えたあとに不具合が発生すると、修理費は数十万円単位になるケースも珍しくありません。つまり、「長く乗る=コストがかからない」とはいい切れないのです。
筆者がディーラー勤務をしていたころ、ちょうど5年目の車検が終わった数ヶ月後にトランスミッションの故障で30万円の修理費がかかった事例がありました。その場では問題がなくても、いつ故障するか分からないということは理解しておいたほうが良いでしょう。
まとめ
「5年以内に買い替えたほうが良い」という営業マンのアドバイスは、営業都合だけではなく、ユーザーが損をしにくくなる1つの選択肢としての提案でもあります。もちろん、ライフスタイルや使い方によって正解は人それぞれ異なります。
「あと何年乗るか」「どれくらいの修理リスクを許容できるか」などをよく考えたうえで、買い替えのタイミングを判断することが大切です。
執筆者 : 宇野源一
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