キユーピー「育児食」販売終了に衝撃! SNSでは「大手なのに衝撃」「どこで買えば」の声も…少子化の今“子ども向け”産業はもうからない? 令和の出生数「約70万人」の市場規模とは

配信日: 2025.07.16 更新日: 2025.09.26
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キユーピー「育児食」販売終了に衝撃! SNSでは「大手なのに衝撃」「どこで買えば」の声も…少子化の今“子ども向け”産業はもうからない? 令和の出生数「約70万人」の市場規模とは
子育て経験のある人にとって、キユーピーのベビーフードは「離乳食の定番」とも言える存在だったのではないでしょうか。筆者もその便利さから、子どもが小さいときには外出時の食事としてよく食べさせた経験があります。
 
しかし、2025年6月、キユーピーは公式サイトで育児食(離乳食・幼児食)の生産を、2026年8月末をもって終了、順次販売も終了すると発表しました。
 
SNSでは「あの瓶が買えなくなるの」、「これから何を買えばいいの」と、驚きや戸惑いの声が相次いでいます。すでに子どもが離乳食を卒業した筆者にとっても衝撃のニュースでしたが、なぜキユーピーでは育児食の生産・販売を取りやめることになったのでしょうか。
 
本記事では、生産・販売終了の理由や、少子化が企業に与える影響について解説していきます。
渡辺あい

ファイナンシャルプランナー2級

キユーピー育児食、なぜ生産・販売終了に?

キユーピーは1960年にベビーフードを発売し、65年間にわたり、親子に寄り添う商品を展開してきました。しかし、2025年6月の発表によると、販売量の減少、原材料やエネルギー価格の高騰などが重なり、事業として継続が困難になったとのことです。
 
育児食は今後、2026年8月末までにすべての製品の生産を終え、順次販売終了となるとしています。一部の店舗では在庫切れや品薄の報告も出ており、SNSでは「見つけたら買いだめしなきゃ」という声も聞かれています。
 

新生児の減少がビジネスにも直撃

厚生労働省のデータによると、日本の出生数は2023年に72万7288人となり、2024年は68万6061人と、年々減少傾向にあります。昭和には年間150~200万人の赤ちゃんが生まれていた日本ですが、第2次ベビーブームを境に緩やかにその数が減少しています。
 
そのため、かつては需要が多かった子ども向け商品も、現代では購入する家庭の「母数」が激減していることになるのです。
 

もしも「シェアNo.1」でももうからない? 市場規模のシミュレーション

仮に出生数が半減しても、企業としてトップシェアであるならば、一定の売上は確保できるのでは、と考える人もいるかもしれません。子どもの数が多かった時代と、現代では売上への影響がどれほど違うのか、仮にキユーピーの離乳食「にこにこボックス 約350円(税込)」を毎日1箱ずつ購入した場合の簡単なシミュレーションをしてみましょう。
 
1973年の第2次ベビーブームでは、年間の出生数は209万1983人でした。この子どもの半数にベビーフードを購入したと仮定します。
 
約100万人×350円×365日=1277億5000万円
 
現在の出生数を約70万人とし、同様に半数が購入者として計算してみます。
 
約35万人×350円×365日=447億1250万円
 
子どもの数が減っているので、昔と比べて現在の売上が低迷しているのは当然ではありますが、ピーク時と比べて約3分の1の売上となっており、この差は企業にとってはかなりの痛手であると考えられるでしょう。
 
さらに、商品単価を大きく上げることが難しい「ベビーフード」では、材料費や人件費、物流費の上昇が直撃しやすく、利益率は年々悪化していると考えられます。つまり、「購入人数」が減っているのに「コスト」は上がっているという、「ダブルパンチ」が企業にとって重くのしかかっているのです。
 

今後「子ども向け商品」は減る一方?

日本の人口は、今後も減少が続くことが考えられます。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2070年には日本の総人口は約8700万人にまで減少し、そのうち15歳未満の子どもは1割を切ると予測されています。
 
子どもの人数が減ると、相対的に需要も減少傾向となるため、子どもを対象にした商品やサービスの市場も縮小していくようになるでしょう。そのため、今回のキユーピーの育児食撤退のように、大手企業であっても子どもに関する事業の縮小や撤退をする事例が増える可能性があります。
 
一方、中小企業や地域密着型のメーカーによる「独自の需要の掘り起こし」や「企業の直販型」など、今までとは少し異なる形での事業継続も期待されており、必ずしも子ども関連の事業が衰退していくというわけではありません。
 

「育児の定番」が姿を消す日。買い支えるのも選択肢の1つ

キユーピーの育児食がなくなるというニュースは、単に1つの選択肢が消えるという話ではなく、少子化の影響が見える象徴的な出来事ともいえるでしょう。
 
「子どもがお世話になった商品がなくなるのは寂しい」「今後どんどん育児グッズが買いづらくなるのでは」と考える人もいるかもしれません。しかし、企業にとっては、利益がないと経営をしていくことは非常に困難です。
 
消費者としては、ただ販売停止を嘆くのではなく、お気に入りの商品を少しでも継続的に購入し、企業を応援し続けることも大切なのかもしれません。
 

出典

キユーピー株式会社 育児食の生産・販売終了のお知らせ
厚生労働省 令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況
国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要
 
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級

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