居酒屋に行くと真っ先に出てくる「お通し」。「苦手な食材」が出てきたら、お断りしたい…その場合でも「300円」くらいの「お通し代」って請求されてしまいますか?
本記事では、お通しの基本的な知識から、食べられないものが出てきた時のスマートな対処法、そしてお店側の事情などを解説します。
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お通し代は食べなくても払うの?相場と料金の仕組み
「お通し」は関東由来の呼称で、関西では「突き出し」とも呼ばれています。
お通しの価格はお店によって異なりますが、おおむね300円から500円程度に設定されていることが多いようです。実際に、飲食店情報サイト「飲食店ドットコム」を運営する株式会社シンクロ・フードが2023年8月に行った調査では、お通しの価格帯で最も割合が多かったのが「300円~399円」で、全体の約4割を占めていました。
お通し代には、単なる料理代だけでなく、「席料(チャージ料)」や「サービス料」といった意味合いが含まれている場合もあります。席料とは、空間や接客サービスを含めた“席を使うための対価”とされるもので、そのお店で快適に過ごすための料金とも考えられます。
実際には、料理そのものというよりも、席料やサービス料を含めた“料金システムの一環”として設定されているケースが多いのです。
お通しは断れるの?
では、お通しは断ることはできるのでしょうか。実際のところは、お店によって対応が分かれているようです。
例えば、お通しが「席料」として明確にメニューや店内の案内に記載されている場合、それを断ることは、席の利用自体を断ることと同じ意味になりかねません。この場合、入店した時点で席料の支払いに同意したと解釈される場合もあり、お通しを食べなかったとしても料金の請求を受けることがあります。
一方で、そのような明確な表示がなく、あくまで「サービスの一環」として提供されているお店であれば、断れるケースもあるようです。ただし、最終的にお店の判断に委ねられるでしょう。
食べられない時の角が立たないスマートな伝え方
アレルギーや宗教上の理由、あるいはどうしても苦手な食材で、提供されたお通しが食べられない場合もあるかもしれません。このような時は、正直に、そして丁寧に伝えるのも一つの選択肢です。
最もスムーズなのは、お店に入る前や、席に案内された直後の注文前にスタッフへ確認しておくことです。「お通しは何が出ますか?実はアレルギーがありまして……」といった形で、あらかじめ相談しておくと、お店側も対応しやすくなります。予約の電話の段階で伝えておくのもよいでしょう。
前述の調査では、「お通しカットを可能にしている」と回答した飲食店が約22%存在しました。すでにお通しが運ばれてきたあとでも、「実は〇〇が苦手で……」と伝えれば、何らかの対応をしてもらえるケースもあるようです。
とはいえ、対応の可否はお店の方針や混雑状況などによって変わってきます。状況によって判断が分かれることもあるため、あくまで無理のない範囲で、相談してみるのがよいでしょう。
お店側の本音と事情
お通しは、接客面・経営面だけでなく、店のこだわりや個性を表現する手段としても、さまざまな役割を担っています。
まず、ドリンクや料理が出てくるまでの時間を心地よく過ごしてもらうために用意されていることが多く、メニュー選びの間もリラックスしてもらえるよう工夫されています。こうした気配りが、全体の体験満足度につながることもあるでしょう。
次に、近年の物価上昇や人件費の高騰を受け、お通しを最低限の客単価を確保する手段として活用している店舗も少なくありません。飲食店ドットコムの調査によれば、直近1年で約2割のお店がお通し代を値上げし、約16%が今後の値上げを検討していると回答しています。お通し代は、店舗経営を安定させる一つの手段として位置づけられていることがうかがえます。
さらに、お通しに「お店の顔」としての意味を込めているケースもあります。同調査では64%の店舗が「お通しの質にこだわっている」と回答しており、旬の食材を使ったり、看板メニューを小皿で提供したりするなど、工夫を凝らすお店も多いようです。
なお、この調査は、首都圏にある2店舗以内の小規模経営の飲食店を中心とした回答に基づくもので、すべての飲食店に当てはまるわけではありません。ただし、こうした傾向からも、お通しには単なる前菜以上の意味を込めている店舗が少なくないことが分かります。
「お通し」との上手な付き合い方
お通しは、日本の飲食文化に広く見られる慣習です。席料という形で設定することで、お店側は経営の安定化を図りつつ、料理やサービスの質を維持している面もあります。
とはいえ、苦手な食材が出ることもあるため、事前に確認したり、丁寧に相談したりすることは、双方にとって気持ちのよい時間を過ごすための一つの工夫といえるでしょう。上手にコミュニケーションをとることで、より心地よい外食体験につながるかもしれません。
出典
株式会社シンクロ・フード 飲食店ドットコム「お通しやサービス料の設定」に関するアンケート調査
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
