お釣りの「500円玉」に違和感→よく見たら「500ウォン」だった！ すぐに取り換えてもらえたけど、なぜこんなに似ているの？“特徴・見分け方”を解説
このような投稿がSNSで話題になることがあります。確かに日本の500円硬貨と韓国の500ウォン硬貨は、大きさやデザインが似ていると感じている人もいるでしょう。実は過去にはこの「類似性」を悪用した不正行為が問題となったこともあります。
本記事では、それぞれの硬貨の特徴や見分け方、そして現在日本で発行されている500円硬貨の偽造防止技術について解説していきます。
ファイナンシャルプランナー2級
目次
こんなに似ている？ 500円と500ウォンの基本スペック比較
日本では、偽造防止の目的もあり時代の変化に応じて硬貨や紙幣のデザインが定期的に見直されてきました。現在でも500円玉と500ウォン硬貨は似ていると話題ですが、かつてはさらに見分けにくいものがありました。その当時のそれぞれの硬貨の特徴は次の通りです。
◆500円玉と500ウォンの違い
資料を基に筆者作成
1982年に発行が開始された500円玉は、同時期に流通が始まった500ウォン硬貨と直径が同じ26.5ミリメートルで、外見もシルバー調とあって、見た目は非常に似ていました。
また重量もほとんど同じであったため、1990年代には500ウォン硬貨を削って重量を合わせ、自販機で500円と誤認させる不正が多発していたのです。当時こうした被害が社会問題となり、年間数億円規模の損害が発生したことから、2000年に500円硬貨は新デザインのものへと移行されました。
偽造防止のために進化した日本の500円硬貨
日本の500円玉は、韓国の500ウォン硬貨を悪用した被害が多発したことを受け、たびたびデザインが変更されてきました。2000年以降は偽造対策に力を入れており、最新の2021年発行の硬貨では「バイカラー3層構造」など複数の高度な偽造防止技術が導入されています。
このバイカラー3層構造は、異なる種類の金属板でサンドイッチ状にした中心部を、さらに異なる金属のリングにはめ合わせるという複雑な構造で、見た目も2色となっており、旧500円玉とはかなりデザインが異なっています。
また、硬貨の縁には「ギザギザ」のデザインも施されていますが、ギザギザを斜めに入れたり間隔に変化をつけたりしており、これは世界初のデザインです。
さらに、微細な穴加工をした「微細点加工」や、見る角度によって異なる文字が浮かび上がる「潜像加工」も取り入れられており、現在の硬貨には偽造防止に対する技術がたくさん使われていることが分かります。
手元でできる500円玉と500ウォン硬貨の見分け方
一見似ている500円玉と500ウォン硬貨ですが、細かいデザインに注目すれば、違いに気づくことができるでしょう。まず最も分かりやすいのは色合いです。現在発行されている500円玉は、外周が金色、中央が銀色のツートンカラーになっています。500ウォンはシルバーの単色なので、見た目ではっきりとした違いが分かります。
また日本の500円玉のギザギザは、斜めに入った「変則ギザ」となっていますが、これに対して500ウォン硬貨のギザギザは等間隔で刻まれています。
硬貨の絵柄も、500円玉は、「桐」「竹」「橘」といった和風の植物モチーフがデザインされていますが、500ウォン硬貨には「タンチョウ」が描かれています。さらに「500」の数字は似ているものの、文字表記はそれぞれ日本語、韓国語となっているので、刻まれている文字からも違いが分かります。
500円硬貨の進化は「500ウォン問題」がきっかけだった
500円玉と500ウォン硬貨はその類似性から、悪用されたという過去があります。しかしこのことから日本の硬貨は世界でもトップクラスの偽造防止技術を誇る仕様へと進化してきました。
現在の硬貨は悪用されていたピーク時に比べてデザインは異なっていますが、硬貨が何枚もあるうちに1枚だけ「ウォン」が混ざっていたら、間違ってしまうかもしれません。
お釣りをもらう際は、お釣りの金額が合っているかとともに、紙幣や硬貨に違和感がないかも確認するようにしましょう。
出典
KOMSCO Coinage
日本銀行 500円貨（白銅）
独立行政法人造幣局 造幣局の概要
衆議院 変造外国硬貨等使用による自販機荒らしに関する質問主意書
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
