一人暮らしをしていますが、今の収入で生活はギリギリ。独身税は全員一律で払わなければいけないでしょうか。減額や免除になるケースもありますか?
子どもを持たない独身者などが直接的な恩恵を受けない、子育てなどの支援のために金銭負担が強いられることに対してやゆし、不満を表した象徴的な言葉のようです。
本記事では、独身税の根拠とされる、政府の子育て支援に関する取り組みなどを確認していきます。
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
子ども・子育て支援金制度の創設
政府は少子化対策の抜本的に強化するため、令和8年4月から「子ども・子育て支援金制度」を創設し、令和10年度までに段階的に導入を進めていく予定です。この制度は、すべての世代や経済主体が子育て世帯を支えるための新しい分かち合い・連携の仕組みとしています。
これらの支援に充てる費用(支援納付金対象費用)は、公的医療保険加入者の保険料負担に応じて案分され、それぞれが負担する義務を負うことになります。
つまり、公的医療保険加入者は、これまでの健康保険料や介護保険料と併せて、全加入者を対象として子ども・子育て支援金が徴収されることになります。
支援金制度の主な使途
では、支援金制度により徴収された支援納付金対象費用は、どのように使われるのでしょうか。支援金で集められたお金は、主に以下のような子育て支援に使われる予定です。
(1)児童手当の拡充
(2)出産・子育て応援給付金の制度化(妊婦支援給付金)
(3)こども誰でも通園制度(乳児等支援給付)
(4)共働き・共育てを推進するための経済支援
※出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金、第1号被保険者の育児期間中保険料免除
こども家庭庁の資料によると、支援金制度の創設により子ども一人当たり(18歳(高校生年代)までの合計)の給付改善額は、現行の児童手当額約206万円に加えて、拡充分約146万円と試算され、合計で約352万円となっています。
実際の負担額はいくらぐらい?
実際の支援金負担額は、それぞれの収入や加入する公的医療保険の種類によって異なるため、一律に示すことは困難ですが、こども家庭庁から図表1のような一人当たりの試算が示されています。
図表1によると、令和8年度の全制度平均で3000円の負担増となる試算です。これは、被用者保険、国民健康保険の金額は、被扶養者(扶養している配偶者や子ども)の人数を含めた平均額となっています。
例えば、協会けんぽに加入する会社員の被保険者が実際に負担する一人当たりの金額は、令和8年度で400円、令和9年度550円、令和10年度700円と増額されます。さらに、保険料は労使折半となるため、会社側の負担も増額します。
こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」より筆者作成
まとめ
「独身税」というキーワードだけが広まることによって、「シングルマザーの私は給付金をもらえないの?」などの誤解も生じているようです。
しかし、支援金制度の趣旨は、むしろシングル世帯のような子育て負担を重く感じる方々を中心に、全世代で支援していく制度です。ただし、子育てをすでに終えた高齢者などの世代も現役・子育て世代を支援するため、一定の金銭的な負担を担うことになります。
また、国民健康保険制度や後期高齢者医療制度においては、医療保険制度と同様、低所得者等に対する保険料軽減措置の実施や、18歳年度末までのこどもに係る支援金の均等割額の10割軽減の措置などが講じられます。
出典
こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度について
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

