生活保護を受給したい「月収14万円」のシングルマザーです。子どもの体調不良で“早退・欠勤”が続き、家計はギリギリ…生活を立て直すために、しばらく制度を利用しても大丈夫でしょうか?
パート勤務の場合、欠勤が収入に直結するため、「このままでは生活が立ちゆかない」と考える人もいるかもしれません。このような場合、生活を立て直すために生活保護を受けることはできるのでしょうか。
また、母子家庭で生活保護を受けた場合、どれくらいの金額が支給されるのでしょうか。
本記事では生活保護の受給要件や支給額の目安、そして「生活を立て直すために一時的に利用する」ことは可能なのかについて解説します。
ファイナンシャルプランナー2級
生活保護の受給要件とは?
生活保護は、憲法25条に規定されている「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するための制度です。
生活保護は最低限の生活を営む上で「足りない生活費を補てん」するものなので、生活保護費の支給は一律ではなく、厚生労働省が定める最低生活費をもとに必要な額が支給されます。つまり、最低生活費と実際の収入を比べ、収入が下回っている場合は、差額が生活保護費として支給されるのです。
ただし、受給にあたっては、世帯に働ける能力のある人がいるか、預貯金や車・不動産などの資産がないか、ほかの制度(児童扶養手当や就労支援など)を優先的に活用しているかなど総合的に判断されます。
働きながらでも生活保護はもらえるの?
生活保護の支給額は、住んでいる地域や世帯人数によって異なります。
ここでは、母子2人(40歳の母親と10歳の子ども)で、東京都23区に住んでいる場合の1ヶ月の生活保護費を試算してみましょう。
生活扶助:14万8299円(児童加算含む)
住宅扶助(上限):5万3700円
教育扶助:小学生3400円
合計:20万5399円
世帯に収入がある場合でも、この「最低生活費」に満たないと判断されれば、その差額分を受け取れる可能性があります。仮に現段階で14万円の月収があれば、月に約6万5000円が支給されるのです。
また、生活保護受給中でも「児童手当」「児童扶養手当」「就学援助」などは受け取れるケースが多く、子育て世帯には一定の支援が確保される仕組みになっています。
生活を立て直すために受給するのは「アリ」?
「生活保護」と聞くと、「最後の手段」というイメージがあるかもしれません。
しかし、制度の本来の趣旨は「自立を支援するための制度」です。家庭の事情や、病気・けがなどで、一時的に働くことができず、収入が減ってしまうことは、どんな家庭にも起こる可能性があるでしょう。
そのため、生活が不安定なときに制度を一時的に利用し、生活が安定してから再び就職して生活を立て直すということは、「生活保護制度」が想定している利用の1つなのです。
また、生活保護の申請時には、ケアワーカーとの面談があるため、生活保護を受けなくても生活を立て直す方法を一緒に考えてくれたり、生活保護の受給中も就労支援をしてくれたりします。
制度に頼ることは「自立をあきらめること」ではない
生活保護を一時的に利用することは、「自立をあきらめる」ことではありません。むしろ、子育てと生活の両立を目指していくうえで、必要な時期に制度を利用し、その後の再スタートに備えることは「自立へのプロセス」の一部ともいえます。
現在の収入や支出、貯金などに不安がある場合は、一人で悩まず、住んでいる自治体の福祉事務所に相談してみましょう。「いま」困っていることに対して支援を受けることは、自分や家族の未来を守ることにつながるはずです。
出典
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 生活扶助基準額について
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
