私立大学の「医歯系学部」と「文系学部」で年間の学費が「6倍近く」違う！？ 医学部の学費はなぜ高いの？

大学進学を考える際、学費は家計にとって大きな負担となります。特に、私大の医学部や歯学部といった学部は、文系学部と比較して学費が高額であることで知られています。
 
本記事では、医歯系学部と文系学部の学費の実態、差額が生じる理由をまとめました。

医歯系学部と文系学部の学費の差

医歯系学部と文系学部の学費の差を、国公立大学の場合と私立大学の場合でそれぞれ解説します。
 

国公立大学の場合

文部科学省によると、国立大学の授業料は年間53万5800円で統一されており、公立大学（昼間部）の場合は2024年度の平均で53万6340円です。医歯系学部でも入学金を合わせて6年間の総額は350万円程度になるでしょう。
 
一方、文系学部は4年間で240万円程度となります。
 
ただし、医歯系学部では実習費や実験器具代などが追加で発生するため、実質的な負担額は上記よりも高くなる可能性があります。
 

私立大学の場合

私立大学になると、医歯系学部と文系学部の学費差は顕著になります。文部科学省「令和5年度　私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額（定員1人当たり）の調査結果について」によると、文系学部の年間授業料の平均は82万7135円、医歯系学部では286万3713円です。
 
入学金と施設設備費を含めた初年度納入金の比較では、文系学部が平均119万4841円、医歯系学部が482万1704円となっています。総額では、文系学部（4年間）の約411万円に対して、医歯系学部（6年間）は約2354万円にも達します。
 
この結果から、私立大学の医歯系学部の学費は、文系学部の約5.7倍になることが分かりました。
 

私立大学の医歯系学部の学費はなぜ高い？

私立大学で、医歯系学部がほかの学部よりも高額な学費を必要とするのは、おもに次の理由が考えられます。
 

・非常に高額な設備投資
・教員の専門性
・教育期間の長さ
・臨床実習や実験の多さ
・大学病院の運営コスト

 
医歯系学部では、最新の医療機器や専門的かつ高価な設備投資が不可欠です。また、臨床実習や実験の回数も多く、実習ごとの維持・運営コストも非常に高くなると考えられます。
 
これらは一般的に高額であり、維持管理にも多額の費用がかかるでしょう。私立大学では、国および自治体からの助成金が少なく、学費から賄う必要があります。
 
また、医学・歯学教育の講師陣は高い専門性を持つ医師や研究者が中心であり、ほかの学部と比べ給与水準も高くなるといえます。加えて、医学部は学生数が制限されており、学生数を増やして収入を増やせないため、一人あたりの学費が高くなることも関係しているでしょう。
 
さらに医歯系学部は、専門的知識と技術を習得するために修業年限が6年間とほかの学部よりも長く、授業料も高額になります。
 
そのほか、多くの医学部・歯学部は大学病院を併設しており、その運営コストの一部が学費に反映されることもあるでしょう。大学病院は教育機関であると同時に医療機関でもあるため、最新設備の導入や維持に膨大な費用がかかると考えられます。
 

医歯系学部の学費は、私立大学では文系学部の6倍近くになる。学費が高い理由は、設備費や教育の専門性の高さなどさまざま

私立大学の場合、医歯系学部の学費は文系学部の6倍近くにも達することが明らかになりました。学費が高くなる背景には、教育のコストの問題だけではなく、医師という職業の社会的な役割の重さも関係しているといえます。
 
医療現場では多くの高度専門知識が必要であり、医師の育成には莫大（ばくだい）な投資が必要です。助成金が少ない私立大学では、それを学費で賄っているとされ、それが高額な学費につながっているのでしょう。
 
高額な学費は、高度な教育設備や少人数教育、実習材料費など、質の高い医療教育を提供するために必要な費用といえるかもしれません。
 

出典

文部科学省　国公私立大学の授業料等の推移
文部科学省　2024年度 学生納付金調査結果（大学昼間部）
文部科学省　令和5年度　私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額（定員1人当たり）の調査結果について
 
執筆者：FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー