【生活保護】支給額が2013年から段階的に引き下げられていた!? 減額の背景と今後の見通しは?
本記事では、生活保護費減額の内容と背景、将来的な見通しについてまとめました。
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目次
生活保護制度の概要
生活保護制度は、憲法第25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するための制度です。厚生労働省によれば、生活に困窮した人々に対し、国がその困窮の程度に応じて必要な保護を行うことで、最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
保護費の支給額は、受給者世帯の人数構成、年齢、地域、生活実態などにより計算され、厚生労働省が定める基準に基づいて支給されます。
生活保護費の見直し内容
生活保護基準額は、まず2013年8月から3年間と、その後の2018年10月にも引き下げが行われました。
その際、生活保護費の中でも、重点的に見直されたのは最も大きな割合を占める生活扶助基準(食費や光熱費など、日常生活に必要な費用)です。
生活扶助基準は、地域の物価水準を考慮した「級地制度」に基づいて設定されています。一部の地域では級地の見直しが行われ、支給額が減額されました。
また、2015年には積雪寒冷地で暖房費などの費用がかさむ冬季に支給される冬季加算や、住宅扶助の見直しが行われ、一部地域での減額が決定されました。
見直しが行われた背景
生活保護費の見直しが行われた理由として、以下のようなものが考えられます。
●財政健全化への圧力と社会保障費の抑制
●水準逆転現象の解消と公平性の確保
●デフレ経済下における物価動向
少子高齢化の進展に伴い、医療費や年金など社会保障費の増加が続く中で、社会保障給付費全体の見直しが優先課題になったことが主因といえます。生活保護費もその対象となり、持続可能な社会保障制度の構築という名目のもと、見直しが進められました。
また、生活保護費が最低賃金で働く勤労者世帯や、年金受給世帯よりも高い水準にあるという批判が一部で高まったことで、政府は公平性の観点から引き下げが必要と判断した背景もあります。
2013年当時、日本はデフレ経済下にあり、物価が下落傾向にありました。政府は、物価下落を生活保護基準額に反映させることで、実質的な購買力が維持されるため、引き下げても生活に大きな影響はないという見解を示したのです。
引き下げの違法性を指摘した最高裁判所の判決
最高裁判所は2025年6月27日、国による生活保護支給額の減額は「違法」であったとして、処分を取り消す判決を下しました。これは、長きにわたって全国で係争中であった生活保護費減額訴訟において、最高裁が初めて減額の違法性を認めた判決といえます。
本判決では、物価変動率のみを根拠とした減額決定は違法であり、「健康で文化的な最低限度の生活」という憲法で保障された権利の重要性を軽視したものと指摘されました。
この判決により、減額処分は取り消されることになりました。国への損害賠償請求は棄却されたものの、原告側は減額分の遡及(そきゅう)支払いを求めており、今後の国の対応が注視されます。
これまで、数回にわたり引き下げが行われてきた生活保護支給額。社会情勢が変化する中、今後の動向が注目される
生活保護費の支給額は、国の財政健全化やデフレ下の物価動向などを背景に、2013年から数回にわたって引き下げられました。
今後、社会経済情勢が変化する中で生活保護制度がどのように見直されるか、また困窮する人々を支える制度として機能し続けることができるのか、動向が注目されます。
出典
e-Govポータル法令検索 日本国憲法(昭和二十一年憲法) 第三章 国民の権利及び義務 第二十五条
厚生労働省 生活保護制度
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
