これまで避難したことがありませんが、最近は“豪雨”が不安です。実際に避難すると費用はどれくらい必要なのでしょうか?
本記事では、災害時の適切な避難行動や費用負担を軽減する方法について考えます。
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA
専門領域:食料安全保障、マイクロファイナンス、超高齢社会
ホームページ https://www.irric.co.jp/research/index.php
RM NAVI https://rm-navi.com/
避難指示が出ても避難しない?
MS&ADインターリスク総研株式会社(東京都千代田区)が2022年10月に実施したアンケート(調査対象者:警戒レベル 4 の避難情報が発令された各被災地域から抽出された1000 名)によれば、自宅がある地域に風水災や地震に伴う避難指示が発令されても避難をしなかった回答者は65.8%にのぼります(図表1)。
政府や自治体は、「避難指示(警戒レベル4)」が発令された場合、対象地域の全住民が危険な場所から速やかに避難するよう呼びかけています。それにもかかわらず、多くの人が避難を選ばない理由には、移動の不便さや避難所の生活への懸念、正常性バイアス(「自分は大丈夫」という思い込み)などが挙げられます。
図表1 避難指示発令時の行動
MS&ADインターリスク総研株式会社(2022)「自然災害時の避難に関する実態と意識について」を基に筆者作成
そもそも「避難」とは
避難と聞くと、多くの人が小中学校や公民館など避難所への移動を思い浮かべるでしょうが、それだけが避難ではありません。以下の行動も、避難に含まれます。
●安全な親戚・知人宅への移動
●安全なホテルや旅館の利用
●2階以上への垂直避難
重要なのは、現在地が危険かどうか、そして避難先が安全かを適切に判断することです。「自らの命は自ら守る」という意識を持ち、早めの行動を心掛けましょう。
避難にかかった費用
前述のアンケートでは、風水災および地震の時に避難をした人の避難期間は、3時間未満から2週間以上までさまざまです。それらの人が避難中に支出した費用は、最少500円、最大30万円で、平均は3万9940円でした。この費用には、以下が含まれます。
●避難所や宿泊施設への交通費
●ホテルや旅館の宿泊費
●衣類や日用品の購入費
●食費や医療品の費用
避難の費用を軽減する
このように、避難を伴うような災害に遭った場合は、想定外の出費が発生します。ご自宅の被害が大きく長期的に帰宅できなくなるような事態は別にして、数日間の避難の費用負担を軽減する方法について、以下の2点を紹介します。
1. 自治体の助成金を活用する
一部の自治体では、災害時にホテルや旅館を利用した場合の宿泊費を助成しています。例えば、愛知県名古屋市では、特定のリスク区域に住む世帯が市内の宿泊施設を利用した際、宿泊費の半額(上限5000円/泊)が支給されます。お住まいの自治体の助成制度について、事前に確認しましょう。
2. 火災保険の特約を確認する
ご自宅の火災保険に「特定非常災害等避難時一時金特約」が付帯されている場合、災害が発生し、避難所等へ避難した場合に、一時金が支払われることがあります。これはご自宅の損害の有無にかかわらず給付されますので、確認しましょう。
まとめ
これまで避難についてお話ししてきましたが、災害時に備えるためには、事前に行動計画を立てておくことが不可欠です。
ただし、自治体が避難情報を発令しても、実際には被害が軽微である「空振り」のケースもあります。もし避難行動を取った結果、多少の費用が発生したとしても、何も起こらなければ「ラッキーだった」と前向きに捉えることができれば理想的です。自らの命を守るために、早めの行動を心掛けましょう。
出典
政府広報オンライン 「警戒レベル4」で危険な場所から全員避難! 5段階の「警戒レベル」を確認しましょう
MS&ADインターリスク総研株式会社 自然災害時の避難に関する実態と意識について
名古屋市 災害時避難のためのホテル・旅館等の利用について【名古屋市宿泊施設避難助成金制度】
執筆者 : 新納康介
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA

